食品工場でロボットを導入するメリットとは?課題や事例も紹介

近年の少子高齢化や労働力不足を背景に、生産性向上のためにロボットを導入する企業が増えています。しかし、様々な種類のロボットがあるため、導入に悩む方も多いのではないでしょうか。

本記事では、食品工場でロボットを導入するメリットや課題、活用されている具体例などを解説します。産業用ロボットについて知りたい方、食品業界でロボット導入を検討している方はぜひ参考にしてください。



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ロボットと機械の違い

現在、食品工場では様々な機械が使われていますが、そもそもロボットと機械の違いは何でしょうか。以下では、前提としてロボットと機械の主な違いを紹介します。ロボットは人の形に似ている場合が多いですが、違いは形だけではありません。

機械は、設計や事前にインストールされた命令に従い、決まった動きを正確に繰り返し行うことができます。

一方、動きを正確に繰り返し行える点はロボットも同じですが、機能のアップデートが可能な点が異なります。

ロボットのメリットのひとつは、完成した後からいろいろな動きの命令が可能なことです。仕事のやり方が変わってもロボットを取りかえる必要がない場合が多く、同じロボットでも、命令を変えると違う動きができます。

さらに、AIの発展で学習機能(ディープラーニング)を持ち、飛躍的な生産性向上が期待できるロボットが登場しました。例えば、魚の骨除去、鶏肉の除骨など、人工知能を持つAIロボットがすでに活躍しています。


食品工場でロボットが導入される背景

農林水産省は、食品製造業の労働生産性向上に向け、現場へのロボットなど先端技術の導入を推進しています。食品工場でロボットが導入される背景として、労働力不足が大きな要因として挙げられます。

農林水産省が令和元年に発表した「食品製造業における 労働力不足克服ビジョン」によると、食品製造業は、他の製造業と比べて雇用人員不足感が高い状況であるとわかります。平成29年度、飲食料品製造業の有効求人倍率は2.78倍です。

また、厚生労働省の「雇用動向調査」によると、飲食料品製造業の平成29年度の欠員率は3.2%に達しており、他の製造業と比べても労働力不足が深刻化しています。このような生産性向上のために、商品製造ラインへのロボット導入が推進されています。


食品工場でロボットを導入するメリット

食品工場でロボットを導入するメリットには以下の4点があります。

  • コスト削減
  • 作業効率の向上
  • 人的ミスの削減
  • 衛生管理の向上
  • 作業員の肉体的負担の軽減
  • データの自動収集と分析

それぞれのメリットを詳しく解説します。


コスト削減

工場へのロボット導入にはコストがかかりますが、長い目で見れば、新人育成や求人にかかる人件費などにかかるコストを削減できる点がメリットです。

最新のロボットは、予防保全機能を備えているものも多く、故障の前に異常を検知できます。そのため、ロボットの故障を原因とする生産ラインの停止を避けやすいでしょう。

ロボット導入によって省人化を進められるため、人的コストの削減にもつながります。生産効率が向上すると製品の単価を下げることもでき、顧客満足度の向上にも役立つでしょう。


作業効率の向上

ロボットは正確な作業を高速で行える上、24時間稼働も可能なので、安定した生産体制を維持できます。集中力が必要な長時間の作業や、正確性が求められる作業にロボットを導入すれば、作業効率を上げられるでしょう。

作業効率が向上し、単純作業に従事していた人材がコア作業に専念できるようになれば、生産性も上がります。効率的な作業が叶うと、売上の向上にもつながる点がメリットです。


人的ミスの削減

人間の作業だと、どうしてもミスが発生する可能性がありますが、単純作業を正確に行えるロボットを導入すれば、ミスを削減できます。人間とロボットが協働する作業ラインを作ると、作業者の精神的負担も軽減できるでしょう。

特に集中力が必要な作業の場合、ミスが発生しやすい部分にロボットを導入すれば、より効率的に作業を行えます。


衛生管理の向上

ロボットは一貫して高い衛生基準を維持でき、食品の汚染リスクを軽減します。特に、人間と比べて細菌やウイルスを持ち込むリスクが低く、清潔な環境を保ちやすくなります。

ロボットも劣化や洗浄を怠るなどの可能性はありますが、食中毒の原因は人的ミスが多いため、ロボットにまかせることで食中毒などのリスクも下げられます。


作業員の肉体的負担の軽減

作業員が行っていた重労働や危険が伴う作業をロボットに移行すると、作業員の肉体的負担を軽減できます。

食品工場では、重労働のイメージから雇用につながらないケースも多く、より欠員率が上がることが懸念されています。ロボットに肉体的に負担の大きい重労働を任せれば、労働環境の改善にもつながるでしょう。


データの自動収集と分析

作業工程のデータを随時収集・分析できるロボットを導入すると、生産プロセスの最適化や品質管理がしやすくなります。担当スタッフだけに依存する状況を回避でき、安定した経営につながるでしょう。



食品工場で導入されるロボットの種類と活用例

以下では、ロボットの具体的な活用例を工程別に紹介します。自社工場に取り入れられるものがないか、ぜひ参考にしてみてください。


調理・盛り付け

【活用されるロボット例】

  • 調理ロボット
  • 盛り付けロボット

調理ロボットは、一定の品質を保って食材の調理を行います。全自動で食材をカットする、揚げ物を作るなどの業務を担当可能です。飲み物を扱う工場の場合、一定量の飲料を容器に入れる充填機も活用されます。

また、調理や加工だけでなく、盛り付けをできるロボットも開発されています。用意された食品をピッキングと、トレイなどへの盛り付けが可能です。搭載されたカメラで食品を認識し、繊細な動作で設定された定量の食品を盛り付けます。


商品の包装や箱詰め

【活用されるロボット例】

  • 包装ロボット
  • 箱詰めロボット
  • ラベル貼り付けロボット

商品の包装や箱詰めなど、ロボットは反復作業を得意とします。カメラやセンサーで商品を認識し、ハンドピースを使ってピッキング、正確に包装や箱詰めを行います。ロボットの作業は手作業よりも正確なため、人的ミスの削減につながります

また、手作業だったラベルの貼り付けを自動化すると、貼り付けミスの防止や生産性の向上、省人化が期待できます。


搬送・整列

【活用されるロボット例】

  • 搬送ロボット
  • ピッキングロボット

包装・箱詰めされた商品や重い荷物を運ぶ作業を行うのは搬送ロボットです。重労働になりやすい搬送をロボットに任せることで、人の負担を減らせます。

また、ピッキングロボットは付属するセンサーなどで食品や商品を見極め、整列させる、積み上げるなどの作業を行います。ロボットの作業精度の高さが活かされる業務です。


検査・荷積み

【活用されるロボット例】

  • 検査ロボット
  • パレタイジングロボット

出荷前の製品を検査し、不良や異物混入などの異常がないかをチェックする作業にも、ロボットが広く導入されています。カメラやAI技術を利用して、人の目では見逃してしまうような小さな異変の発見が可能です。

また、商品を出荷する前の荷積み作業をパレタイジングといいます。従来では段ボール箱のサイズが異なると、どのように積み上げるか検討する必要がありましたが、パレタイジングロボットは異なるサイズのダンボールにも対応しており、箱の選別も可能です。

商品の検査や荷積みの作業も、ロボットの導入で効率的に作業ができる上、重い荷物を扱う作業員の肉体的負担の軽減にもつながります。



食品工場でのロボット導入における課題

食品工場の人手不足解消のためにロボット導入が推進されていますが、まだまだ課題が多いのが現状です。続いて、ロボット導入に関する主な課題を解説します。

  • 衛生管理が難しい
  • 作業効率が人間より劣るケースもある
  • 初期費用が高額

衛生管理が難しい

食品を扱う上で、衛生管理を徹底することは最低限の必須事項です。人間であれば、ルールに基づいて衛生面を判断して消毒や洗浄を行えますが、ロボットは汚れが付着した状態でも止まらず稼働し続けてしまいます。

衛生管理を徹底しなければ、健康被害が生じる可能性も考えられるでしょう。ロボットでも、人と同じように衛生的に食品を扱えることが求められます。その他、ロボットのはがれた塗装や部品など、異物が混入するリスクも考慮しなければなりません。


作業効率が人間より劣るケースもある

作業の正確性は高いですが、ロボットは食材の個体差や微妙な味の違いを判断できません。繊細な味の違いを判断しなければならない作業には、導入が難しいでしょう。

また、ロボットは柔らかい商品を掴むのが苦手なため、商品を傷つけてしまう可能性もあります。工場内の作業を何でもロボットに任せられるわけではありません。業務内容によっては、人が作業を担当した方がかえって効率的な場合も多いです。


初期費用が高額

長い目で見ればコストの削減につながるロボット導入ですが、やはり初期費用が高額な点は課題です。

初期費用にはロボット本体の購入費だけでなく、設置にかかる費用やシステムを構築するための技術支援なども含まれます。財政的にロボット導入が困難な食品工場も多く存在します。

また、ロボットを設置するためにはスペースが必要になるため、工場内の整備も必要です。ロボット設置用のスペースを確保するために、さらなるコストがかかるケースもあるでしょう。

しかし、コストを抑える方法もあります。例えば、早くから産業ロボットを導入している自動車業界では、ロボット開発を行うベンチャー企業とのタイアップ成功により、コストを大きく削減し、自社の生産性も上げています。食品工場においてもニーズに合うロボットメーカーを見つけることで、可能性は広がるでしょう。



食品工場でロボットの導入を検討するなら「フードテックジャパン」へ

近年、食品工場の労働力不足を解消すべく、ロボットの導入が促進されています。しかし、導入に向けてはまだ多くの課題あります。

食品工場でロボットを活用するには、ロボットの特性を理解し、任せたい作業内容に適したロボットを選ぶことが大切です。ロボットの導入を考えているなら、せひ「フードテックジャパン」へご来場ください。

フードテックジャパンとは、食品工場の自動化・DX推進など最新ソリューションが集う展示会です。 IoT・AIソリューション、ロボット・FA機器などの製品が出展する他、新技術の展示や大手企業によるセミナーも多数開催されます。

事前に来場登録をすれば無料で入場でき、食品工場で導入できるロボットの比較検討や最新情報の収集にご活用いただけます。

また、ロボットを扱っている企業様の場合は、出展側としての参加もおすすめです。課題を抱える企業が集まるなかで自社の製品を大いにアピールできる他、導入を前向きに考えている企業と商談でき、案件の獲得につながります。

来場、出展ともにメリットがあるので、ぜひ参加をご検討ください。

■ 第6回 フードテック ジャパン 東京
2025年12月3日(水)~5日(金)

■第4回フードテックジャパン大阪
2025年2月25日(火)〜27日(木)



食品工場へのロボット導入は業務効率化につながる

食品業界では、労働力不足の解消や労働生産性向上に向け、ロボットの導入が進められています。ロボットの導入は人的ミスの削減、作業員の肉体的負担の軽減などが目指せる一方、導入には初期費用がかかり、衛生管理がまだまだ難しいという課題もあります。

ロボットを導入するためには、ロボットの特性について理解を深め、比較検討する必要があります。食品業界でロボットの導入を考えているなら、「フードテックジャパン」で様々な産業ロボットを比較するのもおすすめです。

■ 第6回 フードテック ジャパン 東京
2025年12月3日(水)~5日(金)

■第4回フードテックジャパン大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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