食品工場を自動化するメリット|課題や生産性向上の事例、ロボットの選定ポイントを紹介

食品製造業は深刻な労働力不足に直面しており、有効求人倍率は全産業平均の2倍を超える水準となっています。生産性向上と人手不足解消の切り札として注目されているのが、ロボットをはじめとした自動化技術の導入です。

自動化によってコスト削減や作業効率向上、人的ミス削減などが実現でき、実際の導入事例では生産性が2倍から3倍に向上しています。 

本記事では、食品工場の自動化が求められる背景から、導入メリット、工程別の成功事例、課題、信頼できる食品ロボットメーカーの選定基準まで徹底解説します。食品工場の自動化を検討している方はぜひ参考にしてください。




食品工場の自動化が求められる背景

農林水産省は、食品製造業の労働生産性向上に向け、ロボットをはじめとした先端技術の現場導入を推進しています。食品工場でロボットが導入される背景として、労働力不足が大きな要因として挙げられます。

農林水産省が令和7年に発表した「食品製造業をめぐる情勢」によると、食品製造業は他の製造業と比べて、雇用人員不足感が高い状況であるとわかります。令和6年度、飲食料品製造業の有効求人倍率は2.89倍です※1。

また、厚生労働省の「雇用動向調査」によると、飲食料品製造業の平成29年度の欠員率は3.2%に達しており、令和5年には2.4%と若干低下したものの依然高い傾向にあり、労働力不足は深刻です※2。そのため、労働力不足を補い、生産性向上を図るために、食品製造ラインへのロボット導入が推進されています。


食品工場を自動化するメリット

食品工場では様々な機械やロボットが活用されていますが、両者には明確な違いがあります。機械は設計された動きを正確に繰り返すのに対し、ロボットは機能のアップデートが可能で、命令を変えることで異なる動きに対応することができます。

さらに、近年ではAI・ディープラーニングを搭載したロボットが登場し、魚の骨除去や鶏肉の除骨など高度な作業も自動化されています。

このようなロボットをはじめとした自動化技術の導入は、食品工場に以下のような多くのメリットをもたらすでしょう。

  • コスト削減
  • 作業効率の向上
  • 人的ミスの削減
  • 衛生管理の向上
  • 作業員の肉体的負担の軽減
  • データの自動収集と分析

それぞれのメリットを詳しく解説します。


コスト削減

工場へのロボット導入にはコストがかかりますが、長い目で見れば、新人育成や求人にかかる人件費などのコストを削減できる点がメリットです。

最新のロボットは、予防保全機能を備えているものも多く、故障の前に異常を検知できます。そのため、ロボットの故障を原因とする生産ラインの停止を避けやすいでしょう。

ロボットの導入によって省人化を進められるため、人的コストの削減にもつながります。生産効率が向上すると製品の単価を下げることもでき、顧客満足度の向上にも役立つでしょう。

予防保全についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:予防保全の意味や目的とは?事後保全との違いやメリット・デメリット、AI活用事例を紹介


作業効率の向上

ロボットは正確な作業を高速で行える上、24時間稼働も可能なため、安定した生産体制を維持できます。集中力が必要な長時間の作業や、正確性が求められる作業にロボットを導入すれば、作業効率を上げられるでしょう。

作業効率が向上し、単純作業に従事していた人材がコア作業に専念できるようになれば、生産性も上がります。作業の効率化を実現しつつ、売上の向上にもつながる点がメリットです。


人的ミスの削減

人間の作業では、どうしてもミスが発生する可能性がありますが、単純作業を正確に行えるロボットを導入すれば、ミスを削減できます。人間とロボットが協働する作業ラインを構築することで、作業者の精神的負担も軽減できるでしょう。

特に集中力が必要な作業の場合、ミスが発生しやすい部分にロボットを導入すれば、より効率的に作業を行えます。


衛生管理の向上

ロボットは一貫して高い衛生基準を維持でき、食品の汚染リスクを軽減します。特に、人間と比べて細菌やウイルスを持ち込むリスクが低く、清潔な環境を保ちやすくなります。

ロボットも劣化や洗浄を怠るなどの可能性はありますが、食中毒の原因は人的ミスが多いため、ロボットにまかせることで食中毒などのリスクも下げられます。


作業員の肉体的負担の軽減

作業員が行っていた重労働や危険を伴う作業をロボットに移行することで、作業員の肉体的負担を軽減できます。

食品工場では、重労働のイメージから雇用につながらないケースも多く、欠員率がさらに上がることが懸念されています。ロボットに肉体的負担の大きい重労働を任せれば、労働環境の改善にもつながるでしょう。

食品工場の仕事についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品工場の仕事がきついと言われる理由とは?3K問題の実態や改善策を解説


データの自動収集と分析

作業工程のデータを随時収集・分析できるロボットを導入すると、生産プロセスの最適化や品質管理が容易になります。担当スタッフのみに依存する状況を回避でき、安定した経営につながるでしょう。



食品工場の生産性を向上させた自動化の事例

以下では、ロボットの一般的な活用例に加えて、工程別の具体的な事例を紹介します。自社工場に取り組みがあるか、ぜひ参考にしてください。

食品工場のロボットについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

▶関連記事:食品工場でロボットを導入するメリットとは?課題や事例も紹介


調理・盛り付け

【活用されるロボット例】

  • 調理ロボット
  • 盛り付けロボット

調理ロボットは、一定の品質を保ちながら食材の調理を行います。全自動で食材をカットする、揚げ物を作るなどの業務を担当可能です。飲み物を扱う工場の場合、一定量の飲料を容器に入れる充填機が活用されます。

また、調理や加工だけでなく、盛り付けができるロボットも開発されています。用意された食品をピッキングし、トレイなどへの盛り付けが可能です。搭載されたカメラで食品を認識し、繊細な動作で設定された定量の食品を盛り付けます。

都内にある小規模のデザート工場では、自動加熱・撹拌機能付き釜を導入し、生産性がリンゴの加熱処理で約3倍、カスタード製造で2倍に向上しています。作業者の重労働が軽減されただけでなく、品質の安定化と歩留まりの改善も実現したとのことです。

調理ロボットについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。

▶関連記事:調理ロボットのメリット・デメリットは?活用事例やおすすめの選び方を解説


商品の包装や箱詰め

【活用されるロボット例】

  • 包装ロボット
  • 箱詰めロボット
  • ラベル貼り付けロボット

商品の包装や箱詰めなど、ロボットは反復作業を得意とします。カメラやセンサーで商品を認識し、ハンドピースを使ってピッキングし、正確に包装や箱詰めを行います。ロボットの作業は手作業よりも正確なため、人的ミスの削減につながります。

また、手作業だったラベルの貼り付けを自動化すると、貼り付けミスの防止や生産性の向上、省人化が期待できます。

ある饅頭製造工場では、特殊な包装形状に対応した差し込み装置を開発し、包装ラインを自動化しています。導入したことにより最大110カートン/分の包装が可能となり、作業者1人あたり10ケース/分だった生産能力が11人分相当に向上しているようです。

また、ステンレスと樹脂設計の装置を開発したことにより、異物混入リスクも抑制されたとのことです。


搬送・整列

【活用されるロボット例】

  • 搬送ロボット
  • ピッキングロボット

搬送ロボットは、包装・箱詰めされた商品や重い荷物を運ぶ作業を行います。重労働になりやすい搬送をロボットに任せることで、人の負担を軽減できます。

また、ピッキングロボットは付属するセンサーなどで食品や商品を見極め、整列させる、積み上げるなどの作業を行います。ロボットの作業精度の高さが活かされる業務です。

ある液体調味料の製造工場では、充填工程から出荷工程までコンベヤで連続した流れを構築し、家庭用ラインにメカ式パレタイザ、業務用ラインにロボットパレタイザを導入しています。

パレタイズの自動化により、スムーズでスピーディーな生産ラインが実現し、工程間の搬送効率が大幅に向上したとのことです。


検査・荷積み

【活用されるロボット例】

  • 検査ロボット
  • パレタイジングロボット

出荷前の製品を検査し、不良や異物混入などの異常がないかをチェックする作業にも、ロボットが広く導入されています。カメラやAI技術を利用して、人の目では見逃してしまうような小さな異変の発見が可能です。

また、商品を出荷する前の荷積み作業をパレタイジングといいます。従来では段ボール箱のサイズが異なると、どのように積み上げるか検討する必要がありましたが、パレタイジングロボットは異なるサイズのダンボールにも対応しており、箱の選別も可能です。

商品の検査や荷積みの作業も、ロボットの導入で効率的に作業ができる上、重い荷物を扱う作業員の肉体的負担の軽減にもつながります。

味噌汁やスープのフリーズドライ製品を製造するある食品工場では、外観検査装置と軟X線検査装置を導入し、印字検査・シールずれ・噛みこみ検査を自動化しています。検査基準の統一と新人教育時間の削減が実現し、検品作業に必要な人員を2名削減、従業員の負担軽減にも成功したとのことです。



食品工場での自動化における課題

食品工場の人手不足解消のためにロボット導入が推進されていますが、多くの課題が残っているのが現状です。続いて、ロボット導入に関する主な課題を解説します。

  • 衛生管理が難しい
  • 作業効率が人間より劣るケースもある
  • 初期費用が高額

衛生管理が難しい

食品を扱う上で、衛生管理の徹底は最低限の必須事項です。人間であれば、ルールに基づいて衛生面を判断し、消毒や洗浄を行えますが、ロボットによっては汚れが付着した状態でも停止せずに稼働し続けてしまう場合があります。

衛生管理を徹底しなければ、健康被害が生じる可能性も考えられるでしょう。ロボットでも、人と同じように衛生的に食品を扱えることが求められます。その他、ロボットの剥がれた塗装や部品など、異物が混入するリスクも考慮しなければなりません。

衛生管理や異物混入についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品業界の品質管理・衛生管理とは?重要な理由や管理項目、改善方法を紹介

▶関連記事:異物混入対策とは?食品工場・製造現場の事例と原因を解説


作業効率が人間より劣るケースもある

作業の正確性は高いロボットですが、食材の個体差や微妙な味の違いを判断することはできません。繊細な味の違いを判断しなければならない作業には、導入が難しいでしょう。

また、ロボットは柔らかい商品を掴むのが苦手なため、商品を傷つけてしまう可能性もあります。工場内の作業を全てロボットに任せられるわけではありません。業務内容によっては、人が作業を担当した方がかえって効率的な場合もあります。


初期費用が高額な場合がある

長い目で見ればコストの削減につながるロボット導入ですが、やはり初期費用が高額な点は課題です。

初期費用にはロボット本体の購入費だけでなく、設置にかかる費用やシステムを構築するための技術支援金なども含まれます。財政的にロボット導入が困難な食品工場も多く存在します。

また、ロボットを設置するためにはスペースが必要になるため、工場内の整備も必要です。ロボット設置用のスペースを確保するために、さらなるコストがかかるケースもあるでしょう。

しかし、コストを抑える方法もあります。例えば、早くから産業ロボットを導入している自動車業界では、ロボット開発を行うベンチャー企業とのタイアップの成功により、コストを大きく削減し、自社の生産性も向上させています。食品工場においてもニーズに合うロボットメーカーを見つけることで、可能性は広がるでしょう。



食品ロボットメーカーの選定ポイント

農林水産省は2024年に「食品製造現場におけるロボット等導入及び運用時の衛生管理ガイドライン」を策定し、HACCPに沿った衛生管理に対応したロボット導入の指針を示しています※1。

食品ロボットメーカーを選定する際は、食品業界特有の衛生基準への対応力、導入実績、技術力、そしてアフターサポート体制の総合的な評価が重要です。

また、食品工場でロボット導入を成功させるには、十分な試験導入(PoC)、メーカーとの共創体制、段階的なスケールアップも重要になります。

経済産業省が2020年度から推進する「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」では、ユーザー企業とロボットメーカー・SIer企業が協働してロボット実装モデルを構築しています※2。こうした実証事業に参画しているメーカーは技術力と実績の面で信頼性が高いといえるでしょう。



食品工場でロボットの導入を検討するなら「食品工場Week(フードテックWeek)」へ

近年、食品工場の労働力不足を解消すべく、ロボットの導入が促進されています。しかし、導入に向けてはまだ多くの課題があります。

食品工場でロボットの導入を考えているなら、「食品工場Week(フードテックWeek)」へご来場ください。食品工場Week(フードテックWeek)は、食品工場の課題を解決するための最新技術・サービス・情報が一堂に集まる展示会です。

食品工場Week(フードテックWeek)の構成展のひとつである「食品工場の自動化・DX展(フードテックジャパン)」は、食品工場の自動化・DX推進など最新ソリューションが集う展示会です。IoT・AIソリューション、ロボット・FA機器などの製品が出展する他、新技術の展示や大手企業によるセミナーも多数開催されます。

事前に来場登録をすれば無料で入場でき、食品工場で導入できるロボットの比較検討や最新情報の収集にご活用いただけます。

また、関連サービスや製品を扱う企業であれば、出展側でのご参加も可能です。自社製品の認知度向上の場として活用できるだけでなく、食品メーカーの工場関係者と直接つながる機会として活用できます。 

具体的な商談の実現やリード案件獲得につながる可能性も高いため、ぜひ出展もご検討ください。

■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催

■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催



食品工場を自動化することで業務効率の改善につながる

食品業界では、労働力不足の解消や労働生産性向上に向けて、ロボットの導入が進められています。ロボットの導入は人的ミスの削減、作業員の肉体的負担の軽減などが期待できる一方、導入には初期費用がかかり、衛生管理がまだ難しいという課題もあります。

本記事で紹介した生産性向上事例が示すように、適切な準備と信頼できる食品ロボットメーカーの選定することにより、生産性を2倍から3倍に向上させることもできるでしょう。

ロボットを導入するためには、ロボットの特性について理解を深め、比較検討する必要があります。食品業界でロボットの導入を考えているなら、「食品工場の自動化・DX展(フードテックジャパン)」で様々な産業ロボットを比較するのもおすすめです。

ぜひご来場いただき、食品工場の自動化に役立ててください。

■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催

■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を超え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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