調理ロボットのメリット・デメリットは?
活用事例やおすすめの選び方を解説

調理ロボットは、飲食業界での人手不足対策や業務効率化として注目されています。

本記事では、調理ロボットの導入を検討している飲食店の方に向けて、調理ロボットの主な機能やメリット・デメリット、具体的な活用事例などを詳しく解説します。調理ロボットの費用感や活用できる補助金の詳細も解説するので、ぜひ参考にしてください。



調理ロボットとは?

調理ロボットとは、今まで人が行っていた調理の工程を自動化するロボットのことです。調理ロボットにはセンサーや制御アルゴリズムが組み込まれており、食材の炒め作業や揚げ調理、調味料のブレンド、盛り付け作業など様々な料理工程を自動化します。

人間が手作業で行う細かい業務を再現できる点が特徴です。


調理ロボットが開発された背景

調理ロボットの開発が進んだ背景には、飲食業界の人手不足が影響しています。帝国データバンクのデータによると、飲食店(非正社員)の人手不足の割合は72.2%と業界のなかでも高い数値を示しています

サービス業界のなかでも、飲食店の従業員はアルバイトやパートなどの非正規雇用が多く賃金が他業種よりも低い傾向があるため、人手不足が一層深刻化しています。

このような飲食業界の人手不足を回避し、より少ないオペレーションで店舗を運営するために調理ロボットが開発された背景があります。

飲食店の人手不足については以下の記事で詳しく紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店が人手不足になる理由とは?7つの原因ともたらす影響や解決策を解説


調理ロボットの主な機能

調理ロボットによって機能は異なりますが、主に以下のような機能が備わっています。

  • カット機能
  • 加熱機能(茹でる・炒める・揚げる)
  • 混ぜる機能
  • ブレンド機能
  • 盛り付け機能
  • 自動洗浄機能
  • 発酵機能

それぞれの機能について、以下で詳しくみていきましょう。


カット機能

調理ロボットには、食材の大きさや形状にあわせて自動でカットする機能がついており、肉や野菜など様々な食材に対応可能です。

カット機能では、輪切りやくし切り、銀杏切りなど、所定の切り方に応じた調理ができます。


加熱機能(茹でる・炒める・揚げる)

調理ロボットには、茹でる・炒める・揚げるなどの加熱機能も備わっています。

茹でる機能では、そばやうどん、パスタ、ラーメンなどの麺類を時間内に茹で上げ、粗熱やぬめりを除去して提供するまでの一連の工程を行います。

提供する料理の品質を一定に保つため、調理ロボットにはタイマー機能が搭載されています。設定時間内に茹で上げるためにピーク時でも安定した供給が可能です。

高火力IHやフライパンを使用した加熱機能では、食材を攪拌しながら炒めることができます。例えば、炒飯や回鍋肉、焼きそばなどのメニューにも対応可能です。

揚げる機能では、揚げた後に保温機まで運ぶ機能も備わっています。油の温度管理や揚げ時間が安定するため、揚げ物の品質が安定します。また、油はねや火傷のリスクを軽減し、熱いフライヤー周りの作業の負担を減らすことできます。


混ぜる機能

調理ロボットの混ぜる機能は、クリームパスタや炒飯、回鍋肉など様々な料理に活用できます。例えば、茹で上がったパスタにオリジナルソースや具材をフライパンに集め、超高速でフライパンを回転させて混ぜ合わせ、スムーズにパスタ料理が完成します。

AIの画像認識技術によってパスタや具材の形状を把握するため、食材の形状を傷めずに美しい状態で提供します。


ブレンド機能

調味料をブレンドする機能では、乾燥調味料や液体調味料など、調味料の形状にあわせて0.1g単位で自動計量して投入します。

ブレンドする調味料の種類や量をカスタマイズできるため、健康状態や個人の嗜好に合わせた料理の提供が可能です。


盛り付け機能

調理ロボットの盛り付け機能では、食材に合わせた掴み方や計量が可能です。例えば、ポテトサラダのように柔らかく粘着性の高い惣菜も盛り付けられます。

盛り付け機能は形の崩れやすい卯の花や白和えなどの和惣菜から、油を加えた中華惣菜など多様なメニューに対応できます。盛り付けロボットの導入により、弁当工場の作業の効率化が図れます。


自動洗浄機能

自動調理後、自動で洗浄する機能が備わった調理ロボットも開発されています。料理に使用するフライパンや中華鍋は、通常大量の水を使用して洗浄しますが、効率のよい自動洗浄機能では水の使用量を削減できます。

また、自動洗浄中に次の調理の準備に取り掛かれるため、調理時間の効率化が図れます。


発酵機能

発酵機能を備えた調理ロボットは、特定の温度や湿度を保ちながら食材を発酵させることができ、パンの発酵やヨーグルト、チーズ、キムチ、味噌などの発酵食品を作る際に非常に便利です。

主に、温度調節機能や湿度調節機能、時間管理機能などを備えています。


調理ロボットのメリット

調理ロボットの導入による具体的なメリットには、主に次のようなものがあります。

  • 業務の効率化
  • 人手不足の解消
  • 調理品質の均一化
  • 安全性の向上

それぞれについて、詳しくみていきましょう。


業務の効率化

調理ロボットを調理場に導入すると一連の調理工程が自動化されるため、注文から提供までのオペレーションがスムーズになります。

例えば、タイマー制御機能付きの調理ロボットでは正確な時間管理が可能です。また、1人で複数の調理ロボットを操作できるため、業務の効率化が図れます。

具体的には、パスタを注文してから提供するまで3分かかっていた飲食店で、調理ロボットの導入により最速45秒でお客さまへの提供が可能になった事例もあります。

このように、調理ロボットの導入は大幅な時間短縮と業務効率化を実現します。


人手不足の解消

パーソル総合研究所の調査では、2030年にはサービス業界で400万人の人手不足が予測されています。飲食店などのサービス業界では人手不足が大きな課題であり、現在ではこの問題に対応する調理ロボットの導入が進んでいます

調理ロボットの導入で調理の自動化ができれば、少人数で効率的に調理が可能となり、スタッフの業務負担が軽減します。さらに、調理ロボットの操作は簡単で、未経験スタッフでも短時間で調理が可能です。

そのため、従来はスタッフへの研修が必須だった飲食店においても、研修時間の大幅な短縮に貢献します。


調理品質の均一化

調理ロボットは料理の味や品質の均一化が図れるため、メニュー展開が豊富な複数店舗を運営する飲食店に特におすすめです。

さらに、職人技の絶妙な調理が再現できる点もメリットのひとつです。例えば、中華食堂では、高火力のIHを使用した調理ロボットを導入し、職人が行う絶妙な炒め調理を再現しています。

調理ロボットを導入することで、高品質な料理をいつでも同じ味で安定供給できます。


安全性の向上

調理ロボットの導入により、作業環境の安全性が向上します。

例えば揚げる機能を持つ調理ロボットの場合、従業員はフライヤーから離れた場所で作業が可能なため、フライヤーによる油煙の吸い込みや火傷のリスクが軽減します。



調理ロボットのデメリット

調理ロボットには多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットも理解した上で導入しましょう。

  • 特定分野の作業しかできない
  • 購入・レンタル費用がかかる

それぞれについて、詳しくみていきましょう。


特定分野の作業しかできない

調理ロボットは、以下のように特定の分野に特化したシステムを搭載しています。

  • ソフトクリームロボット
  • たこ焼きロボット
  • フライドチキンロボット
  • そばロボット

このような調理ロボットは調理する分野が限られるため、様々な料理を提供する飲食店では特定分野の作業しかできない点がデメリットとなります。


購入・レンタル費用がかかる

調理ロボットの導入には、レンタル費用や購入費用の初期投資が必要です。種類によって導入費用は異なりますが、1ヶ月あたりのコストは10万円以上かかる場合があります。

なかには5年契約など長期契約が必要なケースもあるため、経営状況を把握して投資価格の回収見込みを判断した上での導入が重要です。



調理ロボットのおすすめの選び方

調理ロボットを選ぶ際は、以下のポイントを意識して選ぶと良いでしょう。

  • 安全基準に対応している機器を選ぶ
  • サポート体制が充実しているかで選ぶ

それぞれについて、詳しくみていきましょう。


安全基準に対応している機器を選ぶ

農林水産省では、協働ロボットは労働安全衛生法同法施行令および労働安全衛生規則による規制の対象となっており、安全基準を設けています

「協働ロボット」とは、人と同じスペースを共有しながら一緒に作業できるよう設計されたロボットをさします。

調理ロボットを導入する際は、安全基準を満たした機器を選びましょう。


サポート体制が充実しているかで選ぶ

ロボットによる労働災害は減少傾向にありますが、年間30件前後の事故が発生しています。また、産業用ロボットによる挟まれや巻き込まれなど、重篤な危害も報告されています。

そのため、調理ロボットを選ぶ際は、システムの動作方法や機能を十分理解した上で導入しましょう。

販売元のサポート体制が充実しているかも重要なポイントなため、故障時の対応や導入後のアフターフォローが充実している企業を選びましょう。



調理ロボットの活用事例

調理ロボットは様々な飲食店で導入されています。ここでは、実際の活用事例を2つ紹介します。


ソフトクリームロボットの活用事例

コネクテッドロボティクス株式会社が提供する「ソフトクリームロボット」は、コーンのセットからソフトクリームの巻き作業、お客さまへの提供までを自動化した調理ロボットです。キャッシュレス決済機能も搭載しており、注文から商品の提供まで無人で対応可能です。

ソフトクリームロボットは主に高速道路のサービスエリアやテーマパーク、道の駅などで導入されています。

1時間あたり133個のソフトクリームを提供し、音声によるおしゃべり機能も搭載されています。

見た目も可愛らしく、新しいサービスとしてSNSでも注目されるため、商品のPR効果につながります。また、難しい巻き作業も安定した品質で仕上がるため、完成度の高いソフトクリームを安定的に供給できます。


炒め調理ロボットの活用事例

餃子の王将の一部店舗では、TecMagic株式会社と共同開発した炒め調理ロボット「I-Robo」をテスト導入しています。60種類あるグランドメニューのうち、20種類の炒め料理を調理ロボットが行います。

熟練の職人技を引き継いだ品質の高い料理を提供し、お客さまからも満足度の高い声が寄せられています。餃子の王将では「I-Robo」の導入により、厨房の職人比率を下げることに成功しています。

また、食材の飛び散りや湯煙が減少することできれいな厨房を保ち、働きやすい作業環境を実現しています。日本の伝統の味を忠実に再現するため、餃子の王将では将来的に海外展開を視野に入れています。



調理ロボットに関するQ&A

ここでは、調理ロボットに関する質問にQ&A形式でお答えします。

  • 調理ロボットの購入で補助金はでる?
  • 調理ロボットはどんな飲食店におすすめ?

ぜひ導入する際の検討材料にしてください。


調理ロボットの購入で補助金はでる?

調理ロボットの導入により、中小企業省力化投資補助事業による補助金を活用できます。ただし、対象機器のカテゴリーと対象業種が指定されています※1

補助対象となる製品や業種は複数あり、なかでも調理を行う対象機器と対象業種は以下のとおりです※2

対象機器は、焼く・蒸す・煮る・炊く・炒めるなど、本来フライパンで調理する料理をプログラム機能付きのスチームコンベクションオーブンに切り替えた場合に、補助金が受けられます。

また、補助金は対象となる企業の従業員数によっても異なります。従業員数別の補助上限額は以下のとおりです※1

調理ロボットに限らず、飲食店で利用できる助成金や補助金については以下の記事で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店が活用できる助成金・補助金とは?施策の事例や注意点を解説


調理ロボットはどんな飲食店におすすめ?

調理ロボットは以下のような飲食店におすすめです。

  • 業務の効率化や人手不足を解消したい飲食店
  • メニューが多く回転率の高い飲食店
  • 揚げ調理など火傷のリスクがある飲食店
  • 病院や介護施設の厨房や食堂
  • 宿泊施設のレストラン ホテルやリゾート内のレストラン

人手不足に悩む店舗や、メニューが豊富なチェーン店、安全性を高めたい飲食店では、積極的に導入を検討するといいでしょう。

また、飲食店の人手不足を図るなら、配膳ロボットの導入も検討してみてはいかがでしょうか。以下の記事で詳しく紹介しているため、こちらもぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店の配膳ロボットとは?機能や導入のメリット・デメリットを解説



最新の調理ロボットの導入・情報収集を検討している方は「スマートレストランEXPO」へ

調理ロボットの導入を検討している方には、「スマートレストランEXPO」への来場がおすすめです。会場では、最新の調理ロボットだけではなく、POSレジやキャッシュレス決済、配膳ロボットなどのデジタル製品が出展されます。

飲食店の業務効率化や人手不足の解消を目指す方にとっては、最新製品の導入や情報収集に絶好の展示会です。

また、スマートレストランEXPOは、出展者側にもメリットがあります。自社商品を直接顧客にアピールでき、商談・受注まで効率的に行える機会です。

実際に商品を見たい、デモ機を体験したい方はスマートレストランEXPOに足をお運びください。

■第3回 スマートレストランEXPO
2024年11月20日(水)~22日(金)



調理ロボットを導入してさらなる業務効率化につなげよう

調理ロボットの導入は、飲食店の業務効率化や人手不足解消に役立ちます。様々な機能を搭載しているため、導入する店舗にあわせて選びましょう。

導入費用がかかる点はデメリットですが、補助金を活用できる場合もあるため、導入を検討する際は適用条件を事前に確認しておくことをおすすめします。

本記事で紹介した調理ロボットの特徴や選び方を参考にして、飲食店のさらなる業務効率化につなげましょう。

最新のテクノロジーが搭載された調理ロボットを比較したい方は、ぜひ、スマートレストランEXPOへ足を運んでみてください。

スマートレストランEXPOの詳細は、以下からご確認いただけます。



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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