配膳ロボットの価格相場は?時給・人件費と比較した費用対効果や主な機能を紹介
配膳ロボットは人手不足解消や業務効率改善に効果があるため、導入を考えている飲食店経営者は多いかもしれません。導入にあたっての懸念点は「配膳ロボットの価格に見合う費用対効果があるかどうか」ではないでしょうか。
本記事では、配膳ロボットの販売価格の相場や費用対効果、メリット・デメリットから導入の流れまで紹介します。人手不足に悩んでおり、配膳ロボットの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
配膳ロボット販売価格の相場は150〜300万円
配膳ロボットにはいろいろなメーカーやタイプがあるので一概にはいえませんが、販売価格の相場は150〜300万円ほどです。また、配膳ロボットは買取タイプとリースタイプがあります。リースタイプでは5年契約で月3〜10万円が相場です。
導入費用を知るためには、資料請求や見積もりの問合せが必要なケースが多いため、気になるサービスがある場合は配膳ロボットを提供しているメーカーへの問合せをおすすめします。
配膳ロボットが注目される背景
配膳ロボットが注目される背景は大きく分けると以下の2つです。
- 飲食業界の深刻な人手不足解決への期待
- 人件費と比べた費用対効果への期待
それぞれ詳しく紹介します。
飲食業界の深刻な人手不足解決への期待
飲食業界は慢性的な人手不足に悩まされている業界です。入職率も高いですが、離職率も高く、未充足求人(人手不足のため補填目的で行っている求人)は産業のなかで最も高いとのデータも公表されています※1。
飲食店(居酒屋)を辞めた人を対象にしたアンケートでは、以下が主な離職理由として挙げられています※2。
- 仕事内容が体力的にきつい
- 仕事量が多い
- 給料が上がらない、上がる見込みがない
- 給料、報酬が低い
- 一時的についた仕事だから
人手不足はサービスの質低下につながり、他の従業員の負担も増えます。労働環境や顧客満足度が低下し、さらに状況が悪化するなど負のスパイラルに陥る可能性もあるでしょう。
配膳ロボットは、飲食業界の人手不足の解決策のひとつとして注目されているツールのひとつです。
人件費と比べた費用対効果への期待
配膳ロボットの導入は、人件費と比べた際の費用対効果も期待されています。配膳ロボットの導入を検討しているなら、損益分岐点や費用対効果を計算しましょう。例えば、損益分岐点は配膳ロボットを利用する期間によって変わります。
人件費を1人1時間あたり1,250円、労働日数を月20日、1日8時間労働と仮定してシミュレーションしてみます。1,250円×8時間×20日で、人件費は月20万円です。
つまり、単純計算で配膳ロボットの経費が月額20万円以下なら、従業員1人分に見合う費用対効果があると判断できます。もちろん配膳だけをするスタッフは基本的にいないため、8時間の営業中、スタッフが常に代わる代わる誰かしらが配膳作業をしていると仮定します。いわゆる繁盛店です。
もし300万円のロボットを購入して5年間稼働した場合、300万円÷60ヶ月の単純計算で、ロボットのひと月あたりのコストは5万円です。1日8時間、20日稼働と考えると、時給計算で312円程度のため、人をひとり雇うよりコストパフォーマンスに優れていると判断できるでしょう。
配膳ロボットには体力の限界や労働時間に関する制約もないため、1日8時間以上の労働も可能です。もちろんロボットの充電、バッテリー交換、修繕メンテナスなどの諸経費はかかりますが、上記のシミュレーションでは、人の時給を上回るほどの費用ではないとわかります。配膳ロボットの稼働時間が長いほど費用対効果は高まります。
配膳ロボットの機能とは
配膳ロボットで利用できる機能は機種によって異なりますが、主な機能は以下のとおりです。
- 自動走行と障害物回避
- テーブルまでの自動配膳
- 食器やグラスの下膳
- AI音声認識による会話
配膳ロボットには自動走行機能が搭載されており、店内の動線に従って移動が可能です。障害物センサーによって、通路やテーブル間の障害物を回避しながら安全に進むため、従業員や顧客に対して安全性が高く、スムーズな動線を保ちます。
指定されたテーブルまで料理や飲み物を運ぶ自動配膳機能を持ち、店員が配膳作業にかかる時間を削減できます。食器やグラスの下膳トレーが備わっている配膳ロボットであれば、顧客が下膳トレーに食器を置くと効率的なテーブルの片付けも可能です。配膳・下膳の業務が効率化できるため、従業員は他のサービスに集中できます。
AI音声認識機能が備わっている配膳ロボットは、顧客との簡単な会話も可能です。店内の案内や注文のサポートからちょっとした日常会話までができるため、顧客体験の向上にも貢献します。
配膳ロボットの導入は業務効率化のサポートと、顧客サービスの質の向上が期待できるツールです。
配膳ロボット導入で期待できる効果・メリット5つ
配膳ロボットの導入により期待できる主な効果やメリットをまとめると以下のとおりです。
- 人手不足の解消
- 配膳・片付け作業の効率化
- 回転率・注文頻度の向上
- 人件費の削減
- 顧客体験・満足度の向上
それぞれ詳しく紹介します。
1. 手不足の解消
前述のとおり、配膳ロボットは飲食業界の人手不足問題を解決する手段として期待されています。
特に、飲食店はピークタイムに従業員の負担が増えます。そこで配膳ロボットを導入すれば、配膳や片付けを自動で行ってくれるため、従業員の負担を軽減してくれます。
また、ロボットは24時間365日稼働可能なため、シフト調整がしやすくなり、従業員が休暇を取りやすくなります。人手不足問題の解決につながり、従業員の満足度の向上にも貢献するため、結果として離職率の低下も期待できるでしょう。
2. 配膳・片付け作業の効率化
配膳ロボットは事前に設定されたルートに沿って自動で配膳・下膳ができるため、ホール業務を効率化できます。注文が集中する時間帯でもロボットが効率よくテーブルを回れば、商品の提供時間も短縮され、顧客のストレスが軽減されるでしょう。食べ終わった食器をトレーに乗せられる配膳ロボットなら、下膳の手間も省けます。
3. 回転率・注文頻度の向上
配膳ロボットの片付けサポートにより、従業員に余裕が生まれ、ピークタイムでもスムーズに注文を受けやすくなります。テーブルの片付け効率が高まれば、顧客の退店後のテーブルセットもスムーズになり、店舗の回転率が上がるでしょう。回転率や注文頻度の向上は売上の増加にもつながります。
4. 人件費の削減
配膳ロボットの導入には初期費用がかかりますが、長期的に利用すれば高い費用対効果が期待できます。ホール業務に必要な従業員数が減るため、人件費削減効果も期待できるでしょう。
また、従業員の新規採用やトレーニングにかかる手間・コストの削減も可能です。少人数でも効率的に店舗を運営できるようになり、経費削減と効率化が両立できます。
5. 顧客体験・満足度の向上
配膳ロボットの導入で配膳スピードが向上し、従業員のサービスの質が向上すると、顧客満足度も高まります。また、多機能な配膳ロボットや表情がユニークな配膳ロボットを導入すれば、顧客にとっての楽しみが増え、話題性も生まれるでしょう。
配膳ロボットの導入によって店舗の魅力が高まり、リピーターが増える可能性もあります。話題性や満足度の向上が、最終的には売上の増加につながります。
配膳ロボット導入の際の注意点・デメリット4つ
配膳ロボット導入にともなう注意点やデメリットは以下のとおりです。
- 導入コストがかかる
- 配膳業務の完全自動化は難しい
- 接客機会が減少する
- 新しいオペレーションの構築が必要
- スペースの確保が必要
それぞれ以下で詳しく紹介します。
1. 導入コストがかかる
配膳ロボットを導入するには初期投資が必要で、買い切りの場合は100万円以上の費用がかかる可能性もあります。小規模な店舗にとってはこの資金的な負担が大きく、投資額に見合う利益を得るまでには時間がかかる点を理解しておかなければなりません。
また、ロボットの故障やトラブルの場合には、専門的なメンテナンスやサポートが必要です。そのため、追加コストや修繕時間がかかります。
条件を満たせば補助金が利用できる場合もあるので、導入を検討している方は、補助金制度に関して調べてみるとよいでしょう。配膳ロボット導入で利用できる可能性がある補助金制度は後述します。
2. 配膳業務の完全自動化は難しい
配膳ロボットが対応できる業務には限界があります。例えば、設定されていない複雑な注文(特定の具材を抜く、量を減らす・増やすなど)に対する柔軟な対応ができない場合、従業員のサポートが必要です。
また、トレーに乗せる作業や下げてきたお皿をトレーから受け取る作業なども、従業員のサポートが必要です。配膳ロボットは人手不足解消に貢献するツールですが、単純に配膳ロボット一機が人間ひとり分全ての役割を担えるわけではないので注意しましょう。
3. 接客機会が減少する
配膳ロボットが配膳・下膳作業を行ってくれるため、従業員は直接顧客と接する機会が減ります。これは、客単価アップや追加オーダーの機会損失にもつながるかもしれません。ロボットに音声機能が付いている場合もありますが、全てをロボットに任せるにはまだハードルが高いのが現状です。
配膳ロボットによる機械的な対応だけでは顧客満足度が低下し、お店のファンやリピーターが減少するリスクも懸念されます。配膳ロボットの導入後も、従業員は意識的に顧客と接する時間を確保することが大切です。
4. 新しいオペレーションの構築が必要
配膳ロボットを導入すると、店舗のオペレーションが変わり、新しい業務フローを構築しなければなりません。例えば、従業員には配膳ロボットの操作方法やトラブル発生時の対応方法を教育し、連携を取れるよう、情報やマニュアルの共有が大切です。
役割の見直しや明確なオペレーションを設定せずに導入すると、混乱が生じて業務が非効率になり、顧客にも迷惑がかかる可能性があります。配膳ロボット導入前に新しいオペレーションをしっかり整備しましょう。
5. スペースの確保
配膳ロボットを導入するには、ロボットが自律的に移動するスペースを確保しなければなりません。ロボットにあわせて店内のレイアウト変更が必要なので、改装に費用がかかる場合もあるでしょう。
配膳ロボット導入費用に困ったら補助金の活用も検討
配膳ロボット導入にはある程度のコストがかかります。資金に不安がある場合や予算をオーバーしてしまう場合には補助金の活用も検討しましょう。
配膳ロボットの導入で受けられる可能性がある補助金の種類や概要例は以下のとおりです。
補助金制度を利用したい場合、最新の情報を確認して申請してください。ただし、申請したからといって必ず補助が受けられるわけではありません。事業計画書の確認や補助金の使い道に関する確認など、所定の審査が行われます。
配膳ロボットを導入するまでの流れ
配膳ロボットを導入するまでの一連の流れは以下のとおりです。
- 導入の目的を決める
- 導入による効果の目標を設定する
- 導入する配膳ロボットを比較・選定する
- 配膳ロボットの設置場所や動線を確保する
- オペレーションを作成・共有する
- 運用開始
配膳ロボットを導入するにあたり、まずは目的や目標の設定が重要です。運用イメージができない場合は、配膳ロボットの無料トライアルなどを利用して試験的に導入し、有効性を検討するといいでしょう。
また、配膳ロボット製品を比較できる展示会への参加も有効な方法のひとつです。展示会に足を運べば配膳ロボットを比較できる他、飲食店関係者が集まる場で有益な情報収集ができます。
配膳ロボットの導入事例
配膳ロボットは、大企業だけでなく小規模な店舗や個人店でも導入されています。
- 大手飲食チェーン店レストランでの導入事例
- 小規模な店舗や個人店での導入事例
導入事例を以下の2パターンに分けて紹介するので参考にしてください。
大手飲食チェーン店レストランでの導入事例
日本全国に店舗を展開する大手飲食チェーン店でも配膳ロボットは導入されています。試験的に導入する企業や本格的に全国数千ある店舗に導入する企業など様々です。
配膳ロボットを導入した店舗では以下の効果が確認されています。
- 配膳・下膳の労力削減、従業員の歩行数の大幅な削減
- ホールスタッフに余裕が生まれることによる、接客時間増加(2倍)
- ピーク時の座席回転率向上
- 片付け完了までの時間の大幅な削減
配膳ロボットの導入により、月40万円程度の経費削減につながったという事例もあります。
小規模な店舗や個人店での導入事例
配膳ロボットは、20席ほどの比較的小規模な店舗での導入事例も報告されています。ある店舗ではアルバイト・パートがなかなか定着せず、人手不足に困っており、配膳ロボットの導入を決めたそうです。
テスト導入できる2社の配膳ロボットを実際に使用し、必要な性能を備えた配膳ロボットを採用しました。想像以上に正確に料理と飲み物を運べる配膳ロボットは、顧客の反応も上々とのことです。
その他、配膳ロボットに加え、モバイルオーダー、キャッシュレス決済、POSシステムなどを導入し、DXを推進している小規模な店舗もあり、平均7人で行っていたホール作業を5人まで抑える成果を出している例もあります。
人手不足に困っている小規模店舗でも導入できるシステム・ツールはあるので、検討してみるとよいでしょう。
▶関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や食品業界の具体例をわかりやすく解説
▶関連記事:食品製造業のDXとは?重要性や業界の課題・企業の導入事例を紹介
配膳ロボットの導入に興味があるなら「スマートレストランEXPO」へ
人手不足の解消や業務効率化などを目的とした配膳ロボットの導入に興味があるなら、ぜひ「スマートレストランEXPO」にご来場ください。スマートレストランEXPOとは、飲食店の自動化・DXに特化した展示会です。人手不足問題・労働環境の改善などの課題を先端テクノロジー(ロボット・IoT・AIなど)で解決する企業が、最新技術や製品を出展します。
配膳ロボットだけではなく、調理ロボットや店内清掃ロボット、セルフレジ、キャッシュレス決済システムなど、飲食店の人手不足解消や業務効率化に有効な製品も多く出展されるのでぜひご来場ください。
スマートレストランEXPOは事前登録すれば無料で入場可能です。出展側としての参加も可能で、飲食店をはじめとする食品業界の関連企業のシステム・店舗開発部門の方々も来場するため、自社製品のアピールや他社との商談の機会にもご活用いただけます。
人手不足解消のために、配膳ロボットをはじめ業務効率化のシステム・ツールの導入を考えている方は、ぜひこの機会にご来場ください。
■スマートレストランEXPO 東京
2025年12月3日(水)~5日(金)
詳細はこちら
配膳ロボットは価格や機能など様々な角度から検討しよう
配膳ロボットの価格相場は150〜300万円程度、リースタイプでは月3〜10万円が相場です。
人件費を1人1時間あたり1,250円、労働日数を月20日、1日8時間労働と仮定してシミュレーションすると、人件費は月20万円です。単純計算で配膳ロボットの経費が月額20万円以下なら従業員1人分に見合う費用対効果があると判断できます(8時間の営業中、スタッフが常に代わる代わる誰かしらが配膳作業をしていると仮定した場合)。
300万円の配膳ロボットを5年間(60ヶ月)稼働させた場合、ひと月あたり5万円です。同じ条件で時給換算すると312円程度のため、稼働時間・稼働期間によって高い費用対効果が期待できます。配膳ロボットは労働時間や体力による制限もありません。ただし、配膳ロボットで人を雇用することとまったく同等の効果が得られるわけではないと念頭に置く必要があるでしょう。
人手不足に悩んでおり、配膳ロボットの導入を検討しているなら、ぜひ「スマートレストランEXPO」にご来場ください。飲食店の自動化・DXに特化した展示会です。人手不足問題・労働環境の改善などの課題を先端テクノロジー(ロボット・IoT・AIなど)で解決する多くの企業が出展し、製品の展示や講演が行われます。
来場側、出展側双方にメリットがあるため、ぜひこの機会にご検討ください。
■スマートレストランEXPO 東京
2025年12月3日(水)~5日(金)
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▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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