DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や食品業界の具体例をわかりやすく解説

近年、デジタルに関する領域で、「DX」の言葉を耳にする機会が多くなりました。専門的な言葉なので、定義や具体例が思い浮かばず、イメージがはっきりしない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、DXの定義や具体例、IT化との違い、DXのメリット・デメリットなど、DXに関する情報を網羅的に解説します。

DXを推進して成功させる大切な第一歩として、適切な情報収集の方法も紹介するので、DXの基本的な情報が知りたい方や、DX推進に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。



DXとは?定義や今後の問題点を解説

DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略語です。英語圏では、「Trans」を「Cross(交差)」と同義の意味と捉えてXと省略するため、一般的には略称として「DT」ではなく「DX」が普及しています。

DXは、経済産業省が公開する「デジタルガバナンス・コード2.0※」にて、以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

※引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0

つまり、DXとは、デジタル化によって社会や人々の生活をより良いものに変革することを意味します。

日本では、経済産業省が2018年に発表した『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」のなかで、「2025年の崖」の問題に触れつつ、DX推進の必要性を述べています。

「2025年の崖」とは、昭和時代に構築された「レガシーシステム」をメンテナンスできる人材が定年退職などでいなくなることへの危機感を示しています。つまり、このままDXが進まなかった場合、デジタル競争の敗者となる状況が生まれ、2025年以降には大きな経済損失につながる、という危機的状況をさす言葉です。

既存システムには「複雑化・老朽化・ブラックボックス化」したものがあり、これらがDX推進の足かせになると問題視されています。こうした問題を解決できなければ、いずれIT人材が引退したり、サポートが終了したりすることによるリスクが生じると懸念されます。

リスクに伴い、2025年以降に起こり得る経済損失は、現在の3倍にあたる最大12兆円規模であるとされています。このようなリスクを避けるために、DXの推進が求められています。

まずは老朽化したシステムを刷新し、次に業務環境の変化に対応した新システム導入、それにより企業構想能力の向上やビジネスモデルの刷新を目指す必要があるでしょう。



DXのわかりやすい例を食品業界で紹介

DXは様々な業界で取り入れられ、DX推進の成果を上げている企業も多くあります。

例えば、建設業界ではタブレットを活用し、建物とBIMデータ(3D情報でモデリングしたデータ)の照合を行い、施工管理のサポートや効率化を図っています。

小売業界のある企業ではスマホを活用し、顧客自らが買い物をしながら購入品のスキャンを行うセルフレジを導入しました。その結果、レジでの待ち時間の削減や、従業員の負担軽減に成功した事例もあります。

DX導入の事例があるのは、生活に身近な食品業界も同様です。食品業界のDXの代表例は、「スマートファクトリー」です。

スマートファクトリーとは、AIやIoT技術(あらゆるモノとインターネットを接続する技術)、ロボットなどデジタル技術の導入により、業務自動化や生産性向上を目指した工場です。人力で行う工程の一部をロボットが担い、作業の効率化や人手不足の解消を目指します。

スマートファクトリーでは、デジタル技術の導入に加えて、データ収集・分析を行うAIも導入し、現場の状況が可視化されるところが特徴です。最適なフローを自動的に分析するなど、継続的に工場の生産性の改善や、様々な不確実性に対する未然防止を可能にする予測能力が期待できます。

また、今では身近な存在となったフードデリバリーも、飲食業界に大きな変革をもたらした事例のひとつです。顧客はスマホひとつで手軽に注文できるメリットがあり、店舗側はより広範囲の顧客へのリーチが可能となりました。

その他、キャッシュレス決済に対応したタブレット型レジの導入もDXの例です。キャッシュレス決済では会計をスムーズに行える上に、人的な計算ミスも防げます。タブレット型レジでは売上データの収集も行えるため、蓄積した収集データを分析することで売上予測も可能です。



DXとIT化の違い

DXと混同される言葉に「IT化」があります。

「DX」は、作業の効率化のためにデジタルツールを導入する「デジタイゼーション」、外部環境やビジネス戦略を含めたプロセス全体をデジタル化する「デジタライゼーション」を経て、ビジネスモデルに革命を起こすことを意味します。

「IT化」はIT技術やデジタル技術を取り入れ、業務プロセスの効率化を図ることを意味する言葉です。

例えば、これまで対面でのみ販売を行っていた企業がオンラインショップでの販売をはじめた場合、デジタル技術の導入によって人々の生活に変革をもたらすため、「DX」と表現できます。

一方、これまで紙ベースで行っていた会計の業務をパソコンの会計ソフトに変えるのは、業務の効率化を目指した行動なので「IT化」です。

つまり、IT化はDXを進めるための「手段」であり、DXはIT化を進めた先にある「目的」です。



DXを進める3つのメリット

DX推進を検討している場合、得られるメリットが気になる方は多いでしょう。DXを推進するメリットとして挙げられるのは、主に以下のとおりです。

  • 生産性の向上が期待できる
  • 環境や時代の変化に対応しやすくなる
  • 新商品・サービスの開発につながる

それぞれ具体的に紹介します。


生産性の向上が期待できる

DX推進によって既存システムをデジタル化すると、人的リソースを別の業務に注ぐことが可能です。こうして業務の効率化が進むと、生産性の向上につながる可能性があります。

DXで得られる業務上の具体的なメリットは、主に以下のとおりです。

  • 人員数を削減できる
  • 人的ミスが減少する
  • 業務工程を短縮できる

DXを進めてからすぐに結果が出るわけではありませんが、データの蓄積や客観的な分析を重ねることで、将来的にライバル企業との競争で優位な位置を確立する期待ができます。

また、無駄な作業が削減できると労働時間の短縮につながり、働き方改革にもつながるかもしれません。長時間労働が改善すると、従業員のワークライフバランスが整い、満足度も高まります。


環境や時代の変化に対応しやすくなる

労働環境や消費者のニーズは日々変化しますが、DXを推進すると、こうした変化へも臨機応変に対応しやすくなります。

近年では、新型コロナウイルスの影響によるリモートワークの導入が代表的です。リモートワークの運用にはデジタルツールが必要不可欠ですが、DXが進んでいれば、予測できない事態が起こった際にも、迅速に対応できます。

加えて、火災・震災・システム障害などの不測の事態にも、レガシーシステム(柔軟性が低い、旧型のシステム)に比べると、被害を最小限に抑えやすくなるでしょう。DXの推進に加えて、データのバックアップ、代替機やリモートワーク活用、BCP発動時の社内体制など、複合的な対応も必要となります。


新商品・サービスの開発につながる

DXによってデータの収集・分析が可能となり顧客情報が蓄積すれば、消費者のニーズや行動データなど、細かな変化を捉えられます。

昨今は、スマホなどのデジタル機器の登場で、消費者のニーズが目まぐるしく多様化する時代です。移り変わる消費者のニーズを速やかに把握できれば、最新情報にあわせた商品やサービスの提供が行えます。

さらに、蓄積したデータを自動的に分析するAIを取り入れると、今まで気づけなかった潜在的なニーズも掴みやすくなるでしょう。

こうしてデータから得た情報を商品に反映させることで、新商品・新サービスの開発にもつながります。例えば、国外の言語に対応したシステムを開発すれば、自社商品のターゲットを世界規模に広げることが可能です。



DXに関する2つのデメリット

DX推進には多くのメリットがありますが、知っておきたいデメリットもあります。DXを進めるにあたってのデメリットは、主に以下の2点です。

  • 導入するにはコストや手間がかかる
  • 長期的な目線をもち企業全体で推進する必要がある

以下でそれぞれ解説します。


導入するにはコストや手間がかかる

DXを進める際は、デジタルツールを拡充し、既存システムからの大きな確変が必要になるケースが多いです。そのため、DXが成功するとコスト削減につながる可能性がある反面、導入する際にコストがかかります。

システムを導入するための初期費用が発生するだけでなく、運用を続けていくには、専門知識を備えた人材の採用・育成も必要です。費用がかかるのは導入初期だけでなく、継続的な費用も必要であることを覚えておかなくてはなりません。

また、従来のアナログからデジタルへ移行する際など、DXを進めるにはある程度の時間を要し、大きな手間がかかる点にも注意が必要です。新システムへの移行完了後には、従業員が新システムに慣れるまでに時間もかかります。


長期的な目線を持ち企業全体で推進する必要がある

DX導入後、すぐに結果が出るわけではないため、DXを進める際には長期的な目線を持ちましょう。「何かをすれば必ず結果が出る」と決まりはなく、企業ごとに戦略は異なります。試行錯誤を繰り返しながら、自社にとっての正解を見つけていかなければなりません。

結果が出ない場合は、社内で意見の食い違いが起こる可能性があるのも懸念点です。社内の業務プロセスに変革が伴うため、業務のIT化だけでなく、企業全体で目的を共有して協力しながらDXを進めることが大切です。

例えば、IT関連部署だけが目的を理解していても、他部署が理解できていなければ、スムーズなDX推進は叶わないでしょう。異なる部署同士が歩調をあわせて、企業全体でDX推進に取り組む意識を持つことが求められます。



DXを成功させるためのポイント

DXの推進を考えている企業では、成功させるためのポイントとして以下の2点を押さえましょう。

  • 業界の課題とDX導入の流れを把握する
  • 業界のDXに関する正しい情報を収集する

それぞれ詳しく紹介します。


業界の課題とDX導入の流れを把握する

自社の業界が抱える課題をDXで解消するには、課題を踏まえた上で、導入の流れに沿って実行していくことが大切です。

例として、食品業界の企業がDXを推進する場合、考えられる課題をいくつか紹介します。

  • 少子高齢化による市場縮小
  • 人口減少による人手不足
  • 求められる安全性の要求の高まり
  • 災害時も求められる持続的な供給

こうした課題をきちんと把握できたら、大まかに以下の流れに沿ってDX導入を進めます。

  1. 現状を把握して整理する
  2. 実現したい目標を設定する
  3. 経営層や他部署の理解を得る
  4. DXを実践し成果を検証する

成果が出ない場合でも、蓄積されたデータを元に検証・分析を繰り返しながら、長期的な目線で進めましょう。


業界のDXに関する正しい情報を収集する

DXはデジタル化によって変革をもたらすことが目的であり、DXを成功させるためには、目標設定が重要な意味を持ちます。目標がないまま推進しては、方向性を見失って失敗してしまうかもしれません。

目標設定の際は、ひとつのプロセスに注目するのではなく、業務全体の流れを把握することが重要です。全体像を把握したうえで部分的な改善(IT化)を進め、徐々に領域を拡大して、最後に全体的なIT化が完成するのが理想でしょう。

ただし、DXの知識が少ない場合、どうやって目標を定めたら良いのか、どのような目標を定めるべきなのか、わからないケースも多いと思います。その場合は、DXに関する正しい情報収集からはじめてみてください。

手軽に取り組める情報収集の方法として、本やインターネットの活用があります。その他、業界の最新トレンドがわかる展示会へ足を運ぶのも選択肢のひとつです。

展示会では、DXを推進する企業から、直接「生きた情報」が得られます。システム・技術をご自身の目で見て比較でき、まだ世間には広まっていない最新情報に触れられる可能性があるのもメリットです。

展示会で知識をつけることで、例えば食品業界の場合、スマートファクトリーやタブレット型レジを導入するきっかけになるかもしれません。また、自社にとって最適な製品・システムを見極める手段も得られる可能性があります。

こうして情報収集を行い、自社に不足しているものが明らかになった後には、必要に応じてDXの知識を持つ人材の確保や、コンサルタントによる支援なども検討すると良いでしょう。



食品業界のDX推進に興味があるなら「フードテックジャパン」へ

DXを進めたいと思っても、コストや手間を考えると、なかなか実践できていない企業があるかもしれません。その場合、まずは実際にDXを推進している企業から情報を得ると、DXのイメージが明確になります。

DXに興味がある食品業界の企業の方は、ぜひ「フードテックジャパン」への来場をご検討ください。フードテックジャパンとは、食品製造に関する最新設備やソリューションが一堂に出展する展示会です。

食品業界の様々な企業が集まり、最新設備や新商品を出展しています。来場すると、工場の自動化を実現するロボットや、AI・IoTによる生産管理システムなどの見学・体験が可能です。

来場する際の参加費は必要なく、来場登録を行えば無料で入場できます。出展社による製品技術セミナーも開催しており、こちらも無料で聴講いただけます。

なお、展示会へは来場するだけでなく、出展側としての参加もできます。様々なジャンルの食品メーカーなど、全国から食品関係者が多数来場するため、幅広い層へと自社製品をアピール可能です。

具体的な商談につながり、販路拡大のきっかけになるかもしれません。過去に参加した方からは以下のように嬉しい声をいただいています。

  • 数十社の案件を獲得できた
  • 1,000名以上と名刺を交換できた
  • 新規のお客さまとも商談できた

来場者側にも出展者側にもメリットがある展示会なので、食品業界に関わっておりDXに興味がある方は、ぜひ参加をご検討ください。

フードテックジャパンの詳細は以下のとおりです。

■フードテックジャパン大阪

■フードテックジャパン東京



企業のDXを進めて新しい時代に備えよう

DXとは、デジタル化により生産性の向上を図るだけでなく、人々の生活をより良いものに変革することを意味します。「2025年の崖」のレポートからもわかるとおり、日本は海外に比べてDXが遅れているため、行政や自治体を含め、危機感を持ってDXの推進が行われています。

しかし、DXは闇雲に推進して成功するものではありません。「何からはじめたら良い?」「イメージがわかない」などの悩みがあるなら、身近に取り組めることからはじめましょう。

DX推進の第一歩として、ご自身で最新情報を調べる他、食品業界の企業が集まる展示会に参加する方法もあります。

フードテックジャパンの詳細は以下のとおりです。

■フードテックジャパン
 「フードテックジャパン大阪」詳細はこちら
 「フードテックジャパン東京」詳細はこちら



▶監修:門脇 一彦(かどわき かずひこ)

岡山商科大学経営学部特任教授、キャリアセンター長、國學院大學経済学部兼任講師
1959年大阪市生まれ。神戸大学経営学研究科博士後期課程、博士(経営学)。大手空調企業で機器開発及び業務改革を実践後、ITコンサルタントを担い現在に至る。2021年より現職。経営戦略、技術管理、IT活用、医療サービスマネジメントなどを研究。




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