食品包装とは?方法と資材の種類や特徴、業界の変化と展望を紹介

食品包装は食品の保護や品質維持に欠かせない重要な要素です。食品包装を取り扱う場合、関連する法律を遵守し、消費者の安全にも配慮しなければなりません。法律を理解した上で、食品に適した種類の包装材の使用が大切です。

本記事では、食品包装の基本的な役割や包装方法の種類、素材の種類、関連する法律や業界の変化と今後の展望を紹介します。食品製造や梱包包装に関わる業務に携わっている方はぜひ参考にしてください。



2025.2.25(火)-27(木) インテックス大阪で開催!

食品工場の自動化・DX、衛生対策の最新技術が一堂に



食品包装とは

包装とは「物品の輸送、保管、取引、使用などに当たって、その価値および状態を維持するための適切な材料、容器、それらに物品を収納する作業並びにそれらを施す技術または施した状態」とJIS(日本工業規格)に定義されています。

さらに、包装は個装、内装、外装に大別され、それぞれの概要は以下のとおりです。

包装される対象のひとつが食品です。食品包装は、食品衛生法で「食品または添加物を入れ、または包んでいる物で、食品または添加物を授受する場合そのままで引き渡すものをいう」と定義されています。


食品包装の基本的な4つの役割

食品包装の基本的な4つの機能は以下のとおりです。

  1. 包装された食品の鮮度保持・品質維持
  2. 包装された食品の情報表示
  3. 流通上の利便性向上
  4. 消費者への広告・販売促進効果

それぞれ詳しく紹介します。


1. 包装された食品の鮮度保持・品質維持

包装は、外部の空気や湿気、微生物、光などから食品を保護して酸化や腐敗を防ぐことで、食品の鮮度を保ち、品質を長期間維持する役割があります。食品に影響を与える要因は様々で、以下の例が挙げられます。

上記の外的要因から食品を守り、消費者へ安全に提供するのが包装の役割のひとつです。


2. 包装された食品の情報表示

包装には、名称、原材料、内容量、アレルギー情報、栄養成分、賞味期限、製造者および販売者など、消費者に必要な情報が表示されます。情報表示により、消費者が安全に商品を選び、利用できるようにするためです。表示が義務付けられている内容は様々で、表示基準などに関する規定がなされている法律も複数あります。

食品包装には、法律に則って必要な情報を記載しなければなりません。


3. 流通上の利便性向上

食品包装は、効率的かつ安全に食品を輸送・保管するための重要な役割も果たしています。特に、包装の形状や強度は、物流の効率化や食品の破損防止にもつながります。具体例を挙げると以下のとおりです。


4. 消費者への広告・販売促進効果

食品包装のデザインやロゴは、消費者への視覚的なアピールに重要な役割を果たします。魅力的なデザインは消費者の目を引いて購買意欲を高める効果があり、競合商品との差別化にも貢献します。

また、デザインへのこだわりは、ブランドイメージの確立にもつながります。統一感のあるロゴや色使ったパッケージスタイルは消費者の記憶に残りやすく、リピーター獲得やブランド認知度の向上につながるでしょう。

食品包装は、食の安全を守るだけではなく、商品の売れ行きを左右するマーケティングツールでもあります。



食品包装が備えるべき4つの要件

食品包装には、基本機能に加えて備えるべき必要な要件が4つあります。

  1. 安全・衛生性
  2. 生産適性
  3. 経済性
  4. 社会・環境性

それぞれ以降で詳しく紹介します。


1. 安全・衛生性

食品包装は、外部の汚染物質や微生物から食品をしっかりと保護する設計が求められます。また、包装材料自体も無害であることが重要です。食品と直接接触する部分に使用される素材は、食品に影響を与えず、化学的な反応を起こさない衛生的なものでなければなりません。

さらに、同じ食品であっても包装資材を工夫すると、酸素や光、水分などの影響を抑えられ、賞味期限を延ばすことが可能です。例えば、酸素を遮断するバリア性の高いフィルムの仕様により酸化防止になり、食品の鮮度をより長く保てます。このように、包装材の正しい選択は食品の品質維持と安全性の向上に大きく貢献します。

安全・衛生基準を満たすことは、消費者の健康を守ることにもつながります。


2. 生産適性

食品包装の重要な要件ひとつは、製造現場での効率の良い生産・梱包です。例えば、加工しやすい材料や適切な形状のパッケージは、作業の効率を向上させ、生産スピードを高めます。

また、包装作業にロボットや自動化技術を取り入れれば、安定した品質での生産や効率的な生産も実現できるでしょう。生産適性を重視すると、量産性や供給量の安定性、品質が向上します。


3. 経済性

食品は製造だけではなく包装にもコストがかかるため、メーカーにとって適正なコストで効率よく包装するのは重要な要件のひとつです。

包装の際は、消費者の安全を守るために法律や規格の遵守が大切ですが、消費者は包装自体を目的に商品を購入するわけではありません。包装にかけるコストが過剰な場合、商品の価格が高くなり、消費者の購買意欲を低下させる要因になります。

例えば、商品の代金の5~8%、場合によっては15%ほどが梱包資材コストに充てられるケースも少なくありません。商品の適正売価とコストバランスやマーケットを十分に見極めることが重要です。

また、ブランド価値を高めるためにオリジナルの特注包装資材を製作する場合、資材製造ロットの慎重な考慮が必要です。販売計画の変更や商品販売の中止が発生した場合、大量の資材が残る可能性があります。

そのため、メーカーは安全性に考慮しつつ、経済的な包装方法や生産方法の選択が大切です。近年では包装作業に最新技術(ロボット、AIなど)を導入し、コストを抑えつつ生産性を向上させている事例も増えています。

▶関連記事:食品工場でロボットを導入するメリットとは?課題や事例も紹介


4. 社会・環境性

近年では環境保護の観点から、食品包装にも再生可能な素材や省資源型のデザインの導入が重視されています。社会的責任(CSR)の一環として環境保護に取り組むことが重要となり、使い捨てプラスチックの削減や、リサイクル可能な素材の使用も求められています。

環境に配慮した取り組みとして、食品包装の分野でできることの一例は以下のとおりです。



食品包装方法の種類と特徴

食品包装には複数の種類があり、特徴も異なります。食品包装に使用される方法の種類と特徴の一例を紹介すると以下のとおりです。

食品によって適した包装方法は異なります。法律・規格を遵守した上で、食品の特徴や流通条件を踏まえ、必要な機能を備えた種類の包装方法を選ぶことが大切です。



食品包装資材の種類と特徴

包装方法に加えて使われる資材の種類も様々で、それぞれの特徴は以下のとおりです。

上記のうち、特にフィルムは様々な種類があり、調理方法や食材によって使い分けられています。種類と特徴の一例を紹介すると以下のとおりです。



食品包装を取り扱う際に抑えておくべき法律の一例

食品包装は消費者の健康と安全を守るために重要な役割を果たしており、取り扱いにおいては複数の法律や規制が存在します。一例を挙げると以下のとおりです。

  • 食品衛生法
  • 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律
  • 容器包装リサイクル法
  • 製造物責任法(PL法)

それぞれの法律の内容を簡潔に紹介します。


食品衛生法

食品衛生法は、食品の安全性を確保し、消費者の健康を守ることを目的とした法律です。食品衛生法では、食品の製造、加工、販売に関する基準などが定められています

特に、第三章では「器具及び容器包装」に関する規定が設けられており、食品に直接触れる器具や包装材の衛生基準が詳細に記されているので確認しておきましょう。簡潔に紹介すると以下のとおりです。

  • 器具及び容器包装の衛生基準に関する規定(第十五条)
  • 有害物質の禁止に関する規定(第十六条)
  • 特定器具の販売禁止に関する規定(第十七条)
  • 規格および基準の制定に関する規定(第十八条)

食品の安全性を守るために重要な内容なので、一度目を通しておきましょう。


農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律

農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律は通称「JAS法」とも呼ばれる、農林水産物や食品の品質表示基準を定める法律です

消費者が安心して商品を選択できるように、内容量や原材料、生産地や製造方法の表示に関する事項を明確に規定しています。


容器包装リサイクル法

容器包装リサイクル法は、家庭でごみとして排出される商品の容器や包装のリサイクルを促進することを目的とした法律です

消費者には分別排出、市町村には分別収集が役割として求められています。一方、事業者には事業によって使用・製造・輸入した容器包装のリサイクルの他、容器包装の薄肉化・軽量化や、容器包装廃棄物の排出抑制なども求められています。

リサイクル可能な容器や包装材の使用が事業者に推奨されており、これにより廃棄物の減少と資源の再利用を図っています。容器や包装を製造する事業者だけでなく、容器や包装を利用する事業者もこの法律の適用対象となっている点が大きなポイントです。


製造物責任法(PL法)

製造物責任法(PL法)は、製造物に欠陥があった場合、消費者に与えた損害に関して、製造者が責任を負うことを定めた法律です。消費者を保護し、製造者に対して製品の安全性を確保するよう促す役割を果たしています。

食品包装もPL法の対象になっている製造物のひとつです。容器や包装材が原因で消費者に損害が発生した場合、食品メーカーや包装資材メーカーが責任を問われます。



知っておきたい食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度

食品包装に関して、食品衛生法に基づいて作成されているポジティブリスト制度の確認も大切です。食品衛生法では、食品と直接接触する包装材料や容器に関して、安全性を確保するために使用可能な物質や成分をリスト化しています。ポジティブリスト制度とは、使用を認める物質のリスト(ポジティブリスト)を作成し、使用を認める物質以外は使用を原則禁止する制度です。

ポジティブリスト制度は、平成30年6月の食品衛生法等一部改正により導入され、令和2年6月から施行されました。主に合成樹脂製の器具や容器包装を対象としており、食品接触面に合成樹脂の層が形成されている他の材質に関しても適用されます。ただし、熱可塑性を持たない弾性体であるゴムは含まれません。

経過措置期間が設定されており、令和2年6月1日以前に販売された器具や容器包装に使用されていた合成樹脂に関しては、5年間の特例が適用されます。



フードテックで進化する食品包装の技術と市場の展望

食品包装は消費者の安全を守るために不可欠な要素であり、最近では環境への配慮も強く求められています。しかし、消費者は通常、包装自体を目的に商品を購入するわけではないため、企業側は包装にかかるコストを抑えつつ、品質の維持や向上を図らなければなりません。難しい状況のなか、近年注目を集めているのがフードテックです。フードテックにより食品包装の分野にも変化が起きています。

フードテックとは、「フード」と「テクノロジー」を組み合わせた造語です。テクノロジーの活用で、食品業界の社会問題など多様なニーズの解決が期待されています。フードテックの導入により、プラスチック素材の使用を削減しつつ、従来よりも鮮度保持が可能な包装資材が開発された事例もあります。

また、フードテック市場は今後拡大が見込まれている分野のひとつです。農林水産省の調査によれば、フードテックの市場規模は現在約24兆円とされており、2050年までに約280兆円に成長すると予測されています。コーティング技術や包装・容器技術の分野においても、現在の2.6兆円から3.2兆円までの拡大が見込まれているため、食品包装に関わっている方なら、フードテックに関する情報収集を積極的に行うことも大切です。

なお、フードテックについては以下の記事で詳しく紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

▷関連記事:フードテックとは?食品業界が注目する背景や市場規模・導入事例を紹介



最新の食品包装技術に関する情報収集なら「フードテックジャパン」へ

食品包装の関連製品の比較検討、最新技術の情報収集には、「フードテックジャパン」がおすすめです。フードテックジャパンとは、食品製造に関する最新設備やソリューションが一堂に出展する展示会です。loT・AIソリューション、ロボット・FA機器、製造・検査装置などをはじめとする、フードテックに関連する製品が出展します。

食品包装関連では、包装機、充填機、袋封入機、瓶・缶詰機、ラベラー・シーラー、マーカー・印字機、カートナー・梱包機、結束機などを扱う企業が出展します。新技術の展示だけでなく、企業によるセミナーも併催され、食品業界に関する最新の情報収集にもご活用いただけます。

フードテックジャパンは事前登録すれば無料で入場可能です。また、出展すれば自社製品アピールの場としてのご活用も可能で、他社との商談の機会にもご活用いただけます。

食品包装に関する情報収集や関連する製品の比較をしたい方は、ぜひこの機会にご来場ください。

■フードテックジャパン東京
 2025年12月3日(水)~5日(金)

■フードテックジャパン大阪
 2025年2月25日(火)〜27日(木)



食品包装は消費者の安全を守りつつ効率化が必要な分野

食品包装の主な役割には、食品の品質維持・保持や情報表示、流通の効率化、広告効果などが挙げられます。食品包装に関連する法律は複数あるため、各法律を遵守しつつ、消費者の安全や環境への配慮も必要です。

法令の遵守や環境配慮が必要な反面、多くの消費者は包装を目的に商品を購入するわけではないため、包装に多額のコストはかけられません。食品包装の業務効率化や品質向上を目指すなら、フードテックに関する情報収集がおすすめです。

食品包装に関連する製品や情報収集に興味があるなら、ぜひ「フードテックジャパン」にご来場ください。食品製造に関する最新設備やソリューションが一堂に出展する展示会で、包装機、充填機、袋封入機をはじめとする食品包装関連企業も多く出展します。

来場側、出展側双方にメリットがあるため、ぜひこの機会をご活用ください。

■フードテックジャパン東京
 2025年12月3日(水)~5日(金)

■フードテックジャパン大阪
 2025年2月25日(火)〜27日(木)



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



▼この記事をSNSでシェアする


■関連する記事