代替肉とは?代表的な種類や活用メリット・課題を解説

環境問題と健康への意識の高まりから、近年「代替肉」が注目を集めています。名称は聞いたことがあるものの、そもそもどんなものなのか、種類や活用メリットがわからない方もいるかもしれません。

食糧供給安定化や環境保全などを目的に、代替肉の市場規模が拡大し研究開発が進んでいる今、代替肉について理解することは、食品業界で商品の開発や製造を考えるうえでも重要です。

本記事では、代替肉の定義や種類から活用メリットや課題、具体的な商品例まで分かりやすく紹介します。代替肉が何か気になる方や代替肉を取り入れてみたい食品業界の方は、ぜひご覧ください。



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代替肉(だいたいにく)とは?

代替肉とは、動物性の肉の代わりになる食品のことです。代替肉には以下のような種類があります。

  • 植物性由来のもの(プラントベースフード)
  • 培養肉を使ったもの
  • 上記以外の代替たんぱく質製品(微生物発酵肉・昆虫食など)
  • 藻類由来のもの
  • ハイブリッド製品

それぞれの特徴は後述します。

以下では、代替肉が注目を集める背景や市場規模を解説します。

肉以外も含めた代替食品に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:代替食品とは?注目される理由や導入するメリット・課題、商品例を紹介


代替肉が注目される背景

代替肉が注目される背景は、主に以下の4つです。

  • 食糧供給安定化のため
  • 環境保全のため
  • 動物福祉のため
  • 技術の進歩

畜肉の消費量増加にともない、供給が困難になる懸念があります。これは、畜肉を育てるのに必要な穀物の収穫面積が増えていないのが要因です。畜肉を育てたくても穀物が足りないといった状況を避ける手段のひとつとして、代替肉が注目されています。

また、畜産は二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスを排出します。さらに、畜産の飼料用に農地を作る目的で森林を伐採すると二酸化炭素を吸収できなくなるため、代替肉の活用は環境保全にも有効です。また、畜産の拡大により水の消費が増えるのを防止できます。

その他、動物福祉の観点でも代替肉の価値が評価されています。生産の効率化による飼育環境の悪化に批判が集まっており、代替肉は解決手段のひとつとして期待されています。


代替肉の市場規模

代替肉の市場規模について、アメリカの市場調査会社であるジオンマーケットリサーチは、2018年の市場規模は119億ドルだったが、2025年には212億ドルまで伸びると予測しています

また、アメリカの金融機関であるJPモルガン・チェースは、15年以内に1000億ドルを超えると推定しており、いずれも市場が拡大する予測です。

日本では爆発的なブームこそおきていないものの、インバウンド消費の高まりなどで規模が拡大する可能性はあります。


代替肉の主な種類

代替肉の代表的な種類は以下のとおりです。

  • 植物性代替肉
  • 細胞培養肉
  • 微生物発酵肉
  • 昆虫食

それぞれの特徴やメリットなどを解説します。


植物性代替肉

植物性代替肉は、大豆や小麦から取り出したタンパク質を繊維状にして肉のように加工したものです。主な原料と特徴は以下のとおりです。

タンパク質が豊富でカロリーや脂質が少ないため、環境問題に関心がある方だけでなく健康に配慮した一般消費者も受け入れつつあります。


細胞培養肉

細胞培養肉は、牛などの動物から取り出した少量の細胞を人工培養して作った代替肉です。

動物の細胞から作っているので、動物を殺さずに肉を生産できます。理論上はあらゆる動物の肉を再現可能であり、食肉需要を解決する手段として研究開発が進められています。

ただし、現状は製造コストがかなり高いのが課題です。


微生物発酵肉

微生物発酵肉は、微生物の発酵を利用してタンパク質を分解・製造する技術を利用した代替肉です。微生物に作りたい遺伝子を挿入して発酵させ、代替タンパク質を作った後に加工して製造されます。

現在はアメリカ、イスラエルを中心に開発が進んでおり、今後の研究が期待されています。


昆虫食

昆虫食とは、タンパク源として昆虫を摂取することです。昆虫は高タンパクで栄養価が高く、環境負荷も低いことから、次世代のタンパク源として期待されています。

昆虫食はそのまま食べるだけでなく、粉末に加工した後にパスタやシリアルバーに配合する形でも商品化が進められています。


代替肉のメリット

代替肉のメリットは以下のとおりです。

  • 温室効果ガス削減効果が見込める
  • 健康管理に役立つ
  • 廃棄されていた原料を活用できる可能性がある

代替肉以外も含めたフードテックに関しては、以下の記事で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:フードテックとは?食品業界が注目する背景や市場規模・導入事例を紹介


温室効果ガス削減効果が見込める

代替肉を取り入れると、温室効果ガスの削減に繋がります。

食肉を生産する時は、家畜のゲップや飼料を育てる過程で温室効果ガスが排出されます。例えば、食肉のなかでも肉用牛の生産過程で排出される温室効果ガスの量は、野菜の約4.5倍とする結果もあります。

この結果を踏まえると、代替肉を活用することで牛肉など食肉の生産量・消費量を削減できれば、環境負荷を下げられます。


健康管理に役立つ

大豆が原料の代替肉を摂取した場合、良質な植物性たんぱく質が豊富でコレステロールがゼロ、カロリーは肉類の約半分です。

脂質が気になる、カロリーを抑えたいなど健康上の懸念がある場合は、代替肉を活用することで健康効果が期待できます。

さらには、食物繊維が摂取できるなど、代替肉の原料により必要な栄養素を取り入れやすくなることもメリットです。


廃棄されていた原料を活用できる可能性がある

植物性原料を代替肉に加工することで、規格外品として廃棄されていた食品を活用できます。植物の廃棄を減らし、フードロスを削減できる点もメリットです。

植物以外にも、廃棄されていたビール酵母をアップサイクルして代替タンパク質を開発する企業があります。その他、廃棄肉を活用した培養肉の研究も進められており、サステナブルな食糧供給に繋がるのも魅力です。

アップサイクルについては以下の記事で紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

▷関連記事:アップサイクルとは?意味やリサイクルとの違い、食品業界の製品例を紹介



代替肉の課題・デメリット

代替肉のメリットは多く、活用が期待されていますが、以下の課題・デメリットもあります。

  • 肉本来の風味や食感とは異なる
  • 栄養バランスが変わる
  • 価格が高くなる場合がある
  • 開発・製造時は表示やコンタミネーションに注意する必要がある
  • 代替肉への抵抗感

それぞれ詳しくみていきましょう。


肉本来の風味や食感とは異なる

代替肉は、肉本来の風味や食感とは異なります。肉本来の味に近づけるように調味料や加工法を工夫して作られている代替肉もありますが、まだまだ肉本来の風味や食感を完全に再現するのは難しいようです。

本物の肉のほうが美味しいからと代替肉を食べなくなる方もおり、さらなる開発が求められています。


栄養バランスが変わる場合がある

一部の代替肉製品は、動物性の肉に比べて特定の栄養素(ビタミンB12や鉄分など)が不足している場合があるため、栄養価を考慮する必要があります。

栄養バランスの整った献立を考える場合は、ただ肉から似た味の代替肉に置き換えるのではなく、栄養素まで考えられるといいでしょう。


価格が高くなる場合がある

代替肉の注目は高まっているものの、市場規模はまだ小さく、大量生産が難しいことも課題です。小ロットで生産するために生産コストを削減しづらく、価格が高い傾向にあります。

本物の肉と比べると代替肉のほうが割高になり、手が届かない消費者もいます。


開発・製造時は表示やコンタミネーションに注意する必要がある

代替食品素材を使用する際は、景品表示法上、問題がない表示をしなければなりません。肉や乳製品、卵などを食べないビーガンや、宗教上許された物のみを飲食するハラールへの対応、アレルギー表記への配慮も徹底すべきであり、原材料をわかりやすく表示することが求められます。

製造の過程では、アレルギー物質や遺伝子組み換え大豆などが意図せず混入してしまうコンタミネーションにも気をつける必要があります。


代替肉への抵抗感

多くの代替肉製品は加工工程が多く、添加物や保存料が含まれることがあります。添加物を控える方など、この点に抵抗を感じる方も一定数いるでしょう。

また、代替肉を好んで摂取する必要性を感じない方や、特定の料理や文化に合わないなどの理由で購入を控える方もいます。



代替肉を扱う企業・商品例

様々なメリットや課題もある代替肉ですが、市場拡大に伴い扱う企業も増えています。

以下では代替肉を扱う企業と商品のシリーズ名をまとめました。代替肉を使った商品を取り入れてみたい方は、ぜひご確認ください。

※1出典:大塚食品株式会社「ZEROMEAT(ゼロミート)」
※2製品は大豆加工食品を使用しています。
※3出典:マルコメ株式会社「ダイズラボ」
※4出典:イオントップバリュ株式会社「Vegetive」
※5Vegetive(ベジティブ)シリーズには、商品により動物由来の原料が含まれている場合があります。
※6出典:DAIZ株式会社「ミラクルミート」



代替肉の活用など食に関する課題解決を目指すなら「フードテックジャパン」へ

代替肉の技術は今も研究中であり、進化を続けています。代替肉には様々なメリットや課題があるため、代替肉を使った食品の開発や製造を検討する場合は、まず情報収集をする必要があります。

フードロス削減やアップサイクルなど、環境保護や資源循環の取り組みも注目されているため、最新の食品技術を学ぶには展示会へ参加してはいかがでしょうか。

「フードテックジャパン」は、食品製造に関する最新設備やソリューションが一堂に出展する展示会です。400社の企業が新製品やソリューションを出展しているため、来場することでフードロス対策のアイデアはもちろん、食品業界が抱える課題を解決する手段を知る場として活用いただけます。

なお、来場だけでなく出展者側として参加することにもメリットがあります。課題を抱える企業が集まるなかで自社の製品を大いにアピールできる他、導入を前向きに考えている企業と商談でき、案件の獲得につながります。

来場、出展ともにメリットがあるので、ぜひ参加をご検討ください。

■ 第6回 フードテック ジャパン 東京
2025年12月3日(水)~5日(金)

■第4回フードテックジャパン大阪
2025年2月25日(火)〜27日(木)



代替肉の定義やメリット・デメリットを理解して活用しよう

代替肉とは、動物性の肉の代わりになる食品のことです。大豆やエンドウ豆を使った植物性代替肉など、様々な種類があり、健康管理や環境問題の改善に役立つとされ注目を浴びています。

一方で、価格や味にはまだ課題があり、日々研究と改善が進められています。そのため、代替肉を使った商品の製造・開発を検討する際は、まず最新の技術やトレンドに関する情報収集を行いましょう。

代替肉に限らず、食に関する最新技術や課題を学ぶ場としては、展示会への参加がおすすめです。「フードテックジャパン」では、食品業界に関わる新技術をまとめて知ることができるので、ぜひ足をお運びください。

■ 第6回 フードテック ジャパン 東京
2025年12月3日(水)~5日(金)

■第4回フードテックジャパン大阪
2025年2月25日(火)〜27日(木)



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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