アップサイクルとは?リサイクル・リメイクとの違いや食品業界の事例など詳しく解説
循環型社会を目指す上で「アップサイクル」が注目されていますが、用語の意味やリサイクル・リメイクとの違いがわからない方もいるかもしれません。
アップサイクル製品は様々ですが、食品ロス問題から食品を使った製品も多数開発・製造されており、「アップサイクル食品」と呼ばれる製品も登場しています。また、SDGsの達成に貢献する取り組みとして、企業や地域レベルでの実践事例も増えています。
本記事では、アップサイクルの定義や歴史、SDGsとの関係性まで体系的に解説します。さらに、食品を使ったアップサイクル製品の例や実践的なアイデア創出のコツも紹介するので、アップサイクルに興味がある方はぜひご覧ください。
アップサイクルとは?
アップサイクルは、単なるリサイクルを超えて価値創造を実現する手法として、環境保護と経済活動の両立を可能にします。
以下で、その定義や歴史、現代社会における重要性を詳しく解説します。
アップサイクルの定義・概要
アップサイクルとは、本来廃棄される予定の製品に新たな付加価値をつけて再生することです。着用できなくなった服を他のファッションアイテムに作り変えたり、空き瓶や空き缶を小物入れに作り変えたりするなど、捨てるはずのもの価値をアップグレードし、生まれ変わらせます。
対義語は「ダウンサイクル」で、他にも「リサイクル」や「リメイク」などの類義語が存在します。
アップサイクルの歴史
「アップサイクル(upcycle)」という語は、1994年11月に『SALVO Monthly』誌で建築家ライナー・ピルツがはじめて、「価値を下げずに、より高い価値を与える」と、中古建築資材の再利用の必要性を提唱したことが始まりと言われています。
その後、環境保護や資源循環が重視されるなか、ウィリアム・マクダナー/マイケル・ブラウンガートによる「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)」などのデザイン理論が発展し、アップサイクルの理念が広がりました。
日本で「アップサイクル」の概念が広まったのは2011年の東日本大震災以降で、震災復興や廃材の処理をきっかけとした地域活動を通してです。
過去には「クリエイティブリユース」と呼ばれた創作活動があり、それがSDGsの導入とともに、価値創造や環境保護を包含するアップサイクルへと移行しています。
アップサイクルとSDGs
アップサイクルは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に直接貢献する重要な取り組みです。特に「目標12:つくる責任 つかう責任」では、持続可能な消費生産形態の確保を実現する具体的手法として位置付けられています。
大阪市北区の「UPCYCLE中津荘」では、築65年のアパートをリノベーションし、不要な服や生地を活用したエプロン制作、古本の再利用図書室、量り売り食材店などが集まり、地域レベルでのSDGs実践拠点として機能しています※1。
また、JR東日本では駅のインフラを活用し、廃棄物削減と障害者アーティスト支援を同時に実現するアップサイクルモデルを構築するなど、企業レベルでの取り組みも拡大中です※2。
アップサイクルの重要性
アップサイクルは、現代社会が直面する環境問題と価値観の転換で、極めて重要な役割を果たしています。戦後日本の「新しいものが美しい」という価値観から脱却し、既存資源を活用した持続可能な社会の実現が急務となっているためです。
世界的なごみ問題が深刻化するなか、特に教育現場での環境意識向上は次世代への重要な投資となります。
例えば、大学で廃棄される机や椅子から貴重な国産ブナ材を再発見した事例が示すように、アップサイクルは希少資源の保護にも貢献するでしょう※1。さらに、ダンボール財布といった事例のように「楽しく環境問題に取り組む」アプローチは、持続可能な行動変容を促進します※2。
アップサイクルは単にごみを減らすだけでなく、廃材に新たな付加価値を与えることで、環境保護と創造的な活動を同時に実現できる点が重要です。
アップサイクルと似た用語の違い
アップサイクルの類義語や、同時に用いられることが多い用語は次のとおりです。
それぞれの言葉の意味をもう少し詳しく紹介します。
アップサイクルとリサイクルの違い
リサイクルは、使い終わって廃棄されるものをもう一度資源や原料に戻し、再利用することです。アップサイクルは元の素材をそのまま活かすのに対し、リサイクルは形を変える点が異なります。
例えば、空き缶を溶かして金属に戻し、自動車部品として活用するのはリサイクルです。一方、空き缶に色を塗ってデザイン性のある植木鉢にする場合は、アップサイクルと呼ばれます。
アップサイクルとダウンサイクルの違い
ダウンサイクルは、アップサイクルの対義語にあたり、元の素材を活かしつつ、新たな価値を生み出す点は変わりません。ただし、ダウンサイクルは元の製品より価値が下がる形で再利用されます。
ダウンサイクルの例として、古着を雑巾にしたり、新聞紙やチラシをゴミ箱にしたりすることが挙げられます。
アップサイクルとリメイクの違い
リメイクは、元の製品に手を加えて別のアイテムに変えることです。
先ほど紹介した空き缶をデザイン性のある植木鉢に変える例は、アップサイクルでもあると同時に、リメイクでもあります。そのため、アップサイクルとリメイクは似た意味で用いられることがあります。
ただし、リメイクは元の製品より価値を上げるとは限りません。価値を上げる場合も下げる場合も、リメイクと呼ばれます。
アップサイクルとリユースの違い
リユースは元の製品に手を加えず、そのまま再利用することです。
例えば、不用品を譲ったり、古着をそのまま売買したりすることはリユースにあたります。その他、瓶を回収して洗い、もう一度使うのもリユースの一例です。
アップサイクル食品とは?
アップサイクルは様々な領域で注目され、実践されています。なかでも食品業界で話題になっているのが「アップサイクル食品」です。
アップサイクル食品は、2019年にアメリカで設立されたアップサイクル食品協会と専門家チームなどとの共同作業により、以下のように定義づけられました。
“Upcycled foods use ingredients that otherwise would not have gone to human consumption, are procured and produced using verifiable supply chains, and have a positive impact on the environment.”
アップサイクル食品とは、本来は人間の消費にまわらない材料を使い、検証可能なサプライチェーンで調達・生産された、環境に対して良い影響を与えるもの。
あわせて、アップサイクル食品には以下の条件が課されました。
- 通常捨てられる材料から作られた食品であること
- 価値が加えられた製品であること
- 人間が消費するためのものであること
- 監査可能なサプライチェーンを持つこと
アップサイクル食品の例としては、規格外野菜や食品の不可食部を使ったものなどが挙げられます。
食品業界のアップサイクル事例
ここからは、食品業界におけるアップサイクルの製品例を紹介します。
- 野菜や果物の不可食部を使ったチップス
- 規格外野菜を使った野菜シート
- パン耳を活用したお酒
- ビール粕を使ったグラノーラ
- 食べられなくなったお米で作る紙
- 茶殻を使った畳や人工芝
本来捨てられるはずだった食品は、アップサイクルによって様々な製品に生まれ変わっています。アップサイクルに取り組む企業の例とあわせて紹介するため、ぜひ参考にしてください。
野菜や果物の不可食部を使ったチップス|Upcycle by Oisix
オイシックス・ラ・大地株式会社は、アップサイクル食品専用のブランド「Upcycle by Oisix」を立ち上げ、ブロッコリーの茎や大根の皮などの不可食部を使ったチップスを発売しました。
同ブランドでは、他にも茄子のへたやりんごの芯を使ったチップスなど、様々な製品が発売されており、取り組みを通して、産地や食品製造工場で生じる食品ロス削減に成功しています。
また、これらの結果を受け、オイシックス・ラ・大地株式会社は2023年に第10回「食品産業もったいない大賞」農林水産省大臣官房長賞を受賞しました。
規格外野菜を使った野菜シート|ベジート
野菜シートとは、もともと捨てられていた規格外野菜をペーストにして乾燥させ、シート状にした製品です。色合いが鮮やかで、簡単に食物繊維などの栄養補給ができる製品として注目されています。
株式会社アイルが販売する野菜シート「ベジート」は、60歳以上の女性で毎日普通サイズ1枚、男性で普通サイズ2枚摂ると、1日の食物繊維不足分が補給できるとされています。
規格外野菜をシートに加工することで廃棄削減につながるだけでなく、常温で2年間、備蓄用のものは5年間など、長期間保存できる点も特徴です。2024年3月には、福岡県福岡市で災害時避難者用公的備蓄として導入されました。
パン耳を活用したお酒|Better life with upcycle
「Better life with upcycle」は、運営母体であるパンの製造事業で廃棄されるパン耳などを使ったビールやジンを販売するブランドです。
ダウンサイクルだけでは消費しきれないパン耳の廃棄に着目し、ブルワリーと試行錯誤してパンの耳を再利用した製品を開発しました。「100年続くベーカリーがつくる本物のupcycle beer」「100%“パンのミミ”でできた世界で唯一のサスティナブル・クラフトジン」として様々なプロダクトを生み出し、食品ロス削減に向け取り組んでいます。
ビール粕を使ったグラノーラ|アップサイクルグラノーラ
アサヒユウアス株式会社からは、GRaiL Japan株式会社との共創でビール粕を使ったグラノーラが発売されました。「ビール粕」とは、ビールをろ過する過程で出てくる麦芽粕のことです。
これまでビール粕は、一般的に飼料や肥料として活用されることが多いものでしたが、ビール粕の「食物繊維が豊富で高タンパク、低糖質」という優れた栄養素を持つ点に着目し、グラノーラとしてアップサイクルされています。
食べられなくなったお米で作る紙|kome-kami
株式会社ペーパルは、食用には適さないお米や廃棄される備蓄用アルファ米を活用した紙素材「kome-kami」を開発しました。
お米とFSC認証パルプをただ混ぜるだけではなく、機能性を持たせることでアップサイクルし、化学薬品の代替原料として活用しています。これにより、環境負荷低減とCO2(二酸化炭素)削減を実現しました。
また、お米を使った紙は古紙として回収可能で、再生紙に使われる資源として循環します。
同社では、他にも廃棄されるもみがらを活用した紙素材「momi-kami」や、ビール粕からできたクラフトボールペーパーなど、様々な「フードロスペーパー」が開発されています。
茶殻を使った畳や人工芝|伊藤園
株式会社伊藤園は、廃棄食材を使って、食べ物以外のアップサイクル製品を開発しています。茶殻を使った畳や人工芝は、その一例です。
お茶系飲料を生産する際に出る大量の茶殻には、抗菌性や消臭性などの機能があり、樹脂に混ぜたり繊維板に配合したりして活用されています。
その他、茶殻を使った紙製品(封筒や紙ナプキンなど)やボールペンなども販売しています。
アップサイクルアイデアを考えるコツ
アップサイクルの成功には、廃棄物を新たな価値ある製品に生まれ変わらせる発想力が不可欠です。
以下で、実際の企業事例から学ぶ、効果的なアイデア創出のポイントを紹介します。
廃棄される食材の特徴を活かす
アップサイクルの成功は、廃棄物の特性を見極めることから始まります。自社で発生する食品廃棄物の色彩、香り、形状、成分などの特徴を分析し、新たな活用方法を探ってみましょう。
例えば、ハウス食品グループでは、健康ドリンク製造過程の搾りかすに残る色素成分に着目し、その鮮やかな色彩を紙の原料として活用するアイデアを発案しました。
このように、一見価値がないように思える廃棄物でも、その固有の特徴を深く理解することで、全く異なる業界での活用可能性が生まれます。
異業種パートナーとの連携で可能性を広げる
アップサイクルの実現には、自社の技術だけでは限界があるため、異業種企業との連携が重要な鍵となります。他業界が持つ専門技術や知識を組み合わせることで、従来では考えられなかった発想が生まれる可能性があるでしょう。
飲食チェーン「プロント」を展開している株式会社プロントコーポレーションでは、オイシックス・ラ・大地株式会社との共同開発により、コーヒーを抽出した後の豆かすを使ったあられ菓子を開発しました。
自社にはない技術や知識を持つ企業との出会いを増やすことで、アップサイクルの可能性は大幅に広がります。
食品業界でアップサイクルに取り組むメリット
前述したように、食品業界では現在、様々なアップサイクル製品が開発・販売されています。食品業界でアップサイクルに取り組む主なメリットは、以下のとおりです。
- 仕入れコストを削減できる
- リサイクルにより再利用コスト・使用エネルギーを削減できる
- 企業のイメージアップにつながる
アップサイクルで本来捨てられるはずの食品を使えば、新しく原材料を仕入れる必要がなくなるため、仕入れコスト削減につながります。
また、リサイクルで資源に戻す(分解・溶解する)場合と比べると、素材をそのまま使うことで使用エネルギー量が少ないことも特徴です。その結果、環境負荷の低減に加えて加工コストも削減できます。
食品廃棄物の削減により、一般廃棄物として焼却処理される量を減らすことで、CO2排出量の削減効果も期待できます。農林水産省の「第10回食品産業もったいない大賞」では、アップサイクル事業により約1年間で51.8トンの食品ロスを削減し、66.7トンのCO2削減を実現した事例が表彰されました。
フードテックを活用して、廃棄予定の食品に新たな付加価値を持つ製品とする取り組みとしてアップサイクルが注目されており、新たなビジネスモデルの創出にもつながっています。
上記のメリット以外にも、SDGsが注目されている今、企業全体で環境負荷を意識してアップサイクルに積極的に取り組むことは、イメージアップにつながるでしょう。
食品業界でアップサイクルに取り組む課題
食品業界でアップサイクルに取り組む場合、以下のような課題が挙げられます。
- 安定した原材料確保の難しさ
- 廃棄物削減とアップサイクル製品製造のジレンマ
大きな課題は、安定した原材料確保の難しさです。アップサイクル製品は、廃棄物ありきで生産するため、生産したいタイミングで原材料が十分にあるとは限りません。
供給が不安定な状態で製品を作るのは難しいため、「どのようにビジネスとして成立させるのか」「どんなビジネスモデルにするのか」などを検討する必要があります。
また、アップサイクル製品が売れたからといって、原材料となる廃棄物を増やすのは本末転倒です。廃棄物を減らしたいという概念と矛盾する可能性がある点も考慮しなければいけません。
アップサイクルに興味があるなら「食品工場Week(フードテックWeek)」へ
様々な企業の取り組みを受けて、自社にもアップサイクルの仕組みを取り入れたいとお考えの方がいるかもしれません。アップサイクルなど食の資源循環や循環型社会に向けた取り組みに興味があるものの、具体的なアイデアが浮かばない方は、展示会での情報収集をおすすめします。
「食品工場Week(フードテックWeek)」は、食品製造に関する最新技術やサービス、情報が一堂に出展する展示会です。食品ロス対策のアイデアや食品業界が抱える課題を解決する手段を知る場として活用いただけます。
会場内では、食品のアップサイクルやリサイクルに関する特設エリア「食の資源循環・環境対応フェア」も開催されます。食品工場で出た不可食部を自社で処理する方法や、調理ゴミ・食べ残しの処理コストを削減する方法など、資源循環に関する情報を得たい方はぜひこちらにご参加ください。
食品ロス軽減を目指す食品メーカーや外食チェーンの方は、来場することで自社の課題解決に向けた糸口を見つけられるでしょう。
なお、来場だけでなく出展社側として参加することにもメリットがあります。課題を抱える企業に対して自社製品の認知度を高めることができる他、導入を前向きに検討している企業と商談でき、案件獲得にもつながります。
来場、出展ともにメリットがあるので、ぜひ参加をご検討ください。
■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催
■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催
■食品工場 Weekを構成する展示会/フェア
アップサイクルを実践して食の資源循環を目指そう
アップサイクルは、本来廃棄される予定の製品に付加価値を与えて再生することをさし、元の状態より価値が上がることが特徴です。廃棄される食材を使って別の食品を作るアップサイクルは、食の資源循環に向けた手段のひとつとして注目されています。
自社の廃棄予定食品を使ってアップサイクル製品を生産できれば、環境負荷の低減やコスト削減を同時に叶えられます。さらに、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の達成にも貢献し、企業価値の向上にもつながるでしょう。
廃棄食材の特徴を活かしたアイデア創出や異業種企業との連携により、従来では考えられなかった新たな価値創造の可能性も広がります。
食の資源循環に取り組みたいものの方法がわからない場合や、実際に関連製品・サービスを比較検討しながら最新情報を収集したい場合は、ぜひ「食品工場Week(フードテックWeek)」の参加をご検討ください。
■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催
■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催
■食品工場 Weekを構成する展示会/フェア
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他 資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。
その後、経営企画、事業企画等に従事し、技術経営、サプライチェーンマネージメント及び事業継続マネジメント等を推進。
2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて環境経営支援、資源エネルギー技術開発等など社会実証に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 内閣府国土強靭化推進会議 委員他
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