飲食店の利益率目安は?計算方法と利益率を上げるためのポイント

飲食店の経営を成功させるためには、美味しいメニューを提供してお客さんを喜ばせることだけでなく、利益率を意識した経営が大切です。

人気があっても利益率が悪ければ健全な経営とはいえず、最悪の場合は経営が続けられなくなるかもしれません。

本記事では、飲食店の平均的な利益率や利益率の計算方法、利益率を改善するためのポイントを紹介します。飲食店の経営に携わっている方や、これから飲食店の経営を考えている方はぜひ参考にしてください。



飲食店の利益の種類と概要

利益率を紹介する前に、利益の種類を紹介します。

  • 売上総利益(粗利)
  • 営業利益

それぞれ計算方法が異なるので、正しく理解しましょう。


売上総利益(粗利)

売上総利益とは大雑把な収益を表しており、飲食店の場合は売上高から売上原価(原材料費)を差し引いて計算される利益です。売上総利益は、粗利(あらり)や粗利益(あらりえき)とも呼ばれ、売上高に対する粗利の割合は「売上総利益率」や「粗利率」といいます。

それぞれ以下の計算式で算出可能です。

  • 売上総利益(円)= 売上高 – 売上原価(原材料費)
  • 売上総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

例えば、1皿1,000円でオムライスを提供しており、原材料費が300円だった場合、売上総利益は、売上高の1,000円から原材料費の300円を引いた700円、売上総利益率は70%となります。

売上総利益=売上高1,000円 – 原材料費300円=700円

売上総利益率=売上総利益(粗利)700円÷売上高1,000円×100=70%

なお、人件費や家賃などの諸経費は考慮されていないので、手元に残る利益とは異なります。


営業利益

営業利益は、企業が本業で稼いだ利益を表し、売上総利益から人件費(経営者の役員報酬含む)や広告費、光熱費などの「販売費および一般管理費」を差し引いて計算されます。個人事業者の場合は全ての経費(販売費および一般管理費)を計上した残りが営業利益(個人所得)となります。

営業利益と営業利益に対する利益率を示す「売上高営業利益率」は、以下の計算式で算出可能です。

  • 営業利益(円)=売上総利益 ― 販売費および一般管理費
  • 売上高営業利益率(%)=営業利益 ÷ 売上高 × 100

例えば、月の売上高が500万円、原材料が150万円、販売費および一般管理費が300万円の場合(法人の場合 役員報酬を含む)、営業利益が50万円となり、売上高営業利益率は10%となります。

営業利益=売上総利益(500万円―150万円)―販売費および一般管理費300万円=50万円

売上高営業利益率=営業利益50万円÷売上高500万円×100=10%

なお、営業利益は経営上で発生するコストを除いた「手元に残る利益」です。そのため、売上高営業利益率が高いほど、本業の営業活動の収益力が高いと捉えられます。

一方、保有する不動産の家賃収入や借入金に対する支払い利息など、本業以外で生じた収入・支出を含めたものを「経常利益」と呼びます。ただし、本業とは関係ない損益も含むため、飲食店本来の業務に関係する利益率を参考にする場合は、営業利益率を参考にしましょう。


飲食店の平均利益率

経済産業省の商工業実態基本調査(2007年)によると、大企業を含めた飲食企業全体の売上総利益率は平均55.9%※1、売上高営業利益率は8.6%です※2

実際の利益率は業態や規模によって異なりますが、飲食店の営業利益率は10〜15%が目標値の目安にされることが一般的です。昨今トレンドであるビジネスモデルの従業員(パート含む)を一切雇用せず、店主一人で運営する場合、営業利益率は20~40%が目標値目安です。

また、日本政策金融公庫では、小規模の飲食店を対象に調査が行われています。2023年度に行われた調査によると、一般飲食店の売上高営業利益率は4.3%(黒字かつ自己資本プラスの企業の平均)です※3

調査対象全体の平均だと、全ての業態で売上高営業利益率はマイナスを記録していますが、営業利益率は10%を超えることを目指しましょう。マイナスならば経営体制の改善が必要です。


飲食店の利益率の計算方法

改めて飲食店の利益率の計算方法を紹介します。

それぞれの計算方法は以下のとおりです。

  • 売上総利益(円)= 売上高 – 売上原価(原材料費)
  • 売上総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100
  • 営業利益(円)=売上総利益 ― 販売費および一般管理費
  • 売上高営業利益率(%)=営業利益 ÷ 売上高 × 100

売上総利益は「売上高-売上原価(原材料費)」で計算できます。利益率の計算は「売上高総利益÷売上高×100」です。売上総利益は経営に必要なコストが考慮されていないので、手元に残る利益ではありません。

手元に残る利益を計算したい場合、営業利益を算出する必要があります。営業利益は、「売上総利益-販売費および一般管理費」もしくは「売上高-(売上原価+販売費および一般管理費)」で算出できます。営業利益率の計算は「営業利益÷売上高×100」です。



飲食店の利益率に関わるコストの内訳

営業利益を計算する時に使用する「販売費および一般管理費」についても理解しておきましょう。

販売費は、商品やサービスを販売するために直接かかる費用です。一般管理費は、業務全般の管理にかかる費用をさします。つまり、販売費および一般管理費は経営で必要になるコストです。

飲食店の経営で必要になるコストは、大きく以下の2つに分けられます。

  • 固定費
  • 変動費

導入設備やセキュリティシステムにかかる費用は店舗によって異なります。ここでは、固定費と変動費の代表的なものを紹介します。


固定費

固定費とは、店舗を経営する上で売上の増減とは関係なく発生する一定の費用です。固定費の代表例は以下のとおりです。

  • 賃料
  • 正社員の人件費および交通費
  • 光熱費の基本料
  • 設備のリース料
  • 減価償却費
  • 各種保険料
  • 通信費(WEB、レジなど)

固定費は経営に必要不可欠な出費も多いので、極端な削減は難しいかもしれません。しかし、固定費を削減できると毎月の支出が減らせるため、利益率の改善につながる可能性が高まります。

ここで一番重要な固定費は「家賃」です。事業ビジネスモデルに適した家賃設定を計画的に行い、出店地を選定するのが成功のカギといえるでしょう。


変動費

変動費とは、売上の上下にともなって変動(主に売上の増加とともに比例して増加)する費用をさします。変動費の代表例は以下のとおりです。

  • 食材費
  • アルバイト・パートの人件費および交通費
  • 使用量に応じた光熱費
  • 宣伝・広告費
  • 消耗品費および雑費
  • 支払い手数料(主にキャッシュレス決済手数料)
  • 送料(WEBでも商品を販売している場合)

変動費を極端に節約しようとするとサービスの質を低下させる要因になるため注意が必要です。例えば、スタッフを減らして対応したり、原価が安い材料を使用したりすると、固定費は削減できますが、サービスの質の低下につながります。

変動費を削減する場合、サービスの質を維持しつつ削減する工夫が大切です。

なお、原材料費率(食材原価率)を全メニュー統一する必要はありません。店側の工夫とセンスで営業利益率が高く、なお且つお客さまの満足度も高いメニュー、サービスを整えるが成功のカギです。



飲食店で利益率を高めるために知っておきたい2つの指標

飲食店で利益率を高めるためには、適切な指標を使用して経営状態を把握することが大切です。飲食店で使用される主な指標は以下の2つが挙げられます。

  • 損益分岐点
  • FLコスト

以降で詳しく紹介するので参考にしてください。


損益分岐点

損益分岐点とは、売上高と費用が等しくなり、損益がゼロになる時の売上高をさします。損益分岐点を下回れば損失、上回れば利益となるので、経営上の指標として活用できます。

損益分岐点を超えることが利益を出す前提条件であるため、飲食店の経営でもひとつの基準として用いられます。損益分岐点の計算式は以下のとおりです。

  • 損益分岐点(円)=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}

例えば、月の収支として、固定費万60円、変動費150万円、売上高300万円と仮定すると、60万円÷{1-(150万円÷300万円)}で、120万円以上が損益分岐点の売上高になります。


FLコスト

FLコストとは、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計金額をさします。

FLコストの比率(FL比率)は、以下の計算式で算出可能です。

  • FL比率(%)=(食材費+人件費)÷売上高×100

例えば、食材費が40万円、人件費が30万円、売上高が100万円と仮定すると、(40万円+30万円)÷100万円×100で、FL比率は70%です。

業態によって異なりますが、FL比率は55〜60%が一般的な適正値とされています。FL比率が高すぎると、利益を出すことが難しくなっている状態と判断できます。

ただし、低すぎても良い状態とはいえません。食材費や人件費を抑えれば、FL比率は低くなる一方、安い原価の材料を使った料理で質が低下したり、低賃金で人手不足につながったりします。

ここで重要なのは、FLコスト比率のバランスと回転率、適正売価設定です。例えば、質も単価も高い銘柄肉を仕入れて安価で提供し、過剰に従業員をシフトに入れ、店内の回転率も低い状態では利益が残りません。

一方、質も単価も高い銘柄肉を仕入れて、セルフサービスで提供し、時間制制限を設けてお客さま自身で焼いてもらう体制を整えれば、利益が見込めるでしょう。



飲食店で利益率を上げるためのポイント

飲食店で利益率を上げるためのポイントは以下のとおりです。

  • 利益率の高い商品を提供する(付加価値の高い商品を開発する)
  • 仕入れコストを抑える(仕入れ業者をビジネスパートナーとして考える)
  • 販売価格や販売時期を見直す(マーケティング調査を必ず行う)
  • 業務効率化に効果的なシステム・ツールを導入する(ビジネスモデルの精査する)

それぞれ簡潔に紹介します。


利益率の高い商品を提供する(付加価値の高い商品を開発する)

商品の利益率が低ければ、回転率が高くても利益率が改善されない可能性があります。回転率とは、1日にお客さんが何回入れ替わったかを示す指標です。

全体的な利益率が低い場合は、看板メニューに利益率の高い商品を置いて改善を図りましょう。ドリンクは原価が安い傾向にあり利益につながりやすいため、新しいドリンクメニューを開発するのも手段のひとつです。利益率の高い商品が増えれば、回転率に比例して利益率も改善されます。


仕入れコストを抑える(仕入れ業者をビジネスパートナーとして考える)

食材や消耗品の仕入れコストを見直すと利益率改善につながります。コストを抑えるための具体的な施策は、以下のとおりです。

  • 現在より安く仕入れられる業者を選ぶ
  • 仕入れ先の業者と交渉する
  • 商品で使用する材料を見直す

コスト削減に大きく影響するのは、仕入れ先の選定です。複数の選択肢を確保しつつ、比較して割安で購入できる仕入れ先を選びましょう。もしくは、仕入れる量や期間に応じて、価格の交渉を行うのもひとつの方法です。

仕入価格を下げる工夫をしつつ、メニューの工夫も行いましょう。原価の高い材料を使っているメニューは、代替できる材料がないか見直しましょう。


販売価格や販売時期を見直す(マーケティング調査を必ず行う)

商品の質や原価はそのままで、販売価格や販売時期を見直して利益率の改善を図る方法も選択肢のひとつです。原材料の価格が高騰している場合は、販売価格据え置きだと利益率の低下につながるため、一度見直しましょう。

仕入れコストが変動しやすい食材を取り扱っている場合は、利益率が出やすい時期の限定メニューに変更して提供するのも、今すぐできる工夫のひとつです。


業務効率化に効果的なシステム・ツールを導入する(ビジネスモデルの精査する)

利益率改善のために業務やメニューを増やすと、人件費や食材の管理費増大につながる可能性があるので注意が必要です。業務効率化を図れるシステム・ツールを導入すると、コストを削減しつつ利益率の改善ができるかもしれません。

業務の効率化に役立つシステムやツールの一例は以下のとおりです。

  • モバイルオーダーシステム
  • 配膳ロボット
  • キャッシュレス決済
  • 在庫管理システム
  • 勤怠管理システム

モバイルオーダーシステムや配膳ロボットを導入すれば、従来スタッフが対応していた作業を機械に任せられます。ピークタイムやスタッフが急病で休んだ際も少ない人数で対応できるため、人件費の削減につながります。

キャッシュレス決済は、お会計にかかる時間を短縮できる他、レジでの会計ミスを減らし、管理業務の簡略化にもつながります。勤怠管理システムも、手入力による作業ミスの削減や労働時間の短縮に貢献するシステムです。

システムやツールの導入には初期費用がかかりますが、長期的には利益率の改善に役立ちます。また、テーブルサービスやお客さんとのコミュニケーションなど、人にしかできない本当に大切な業務に専念できます。お店の評判が良くなれば、売上の向上にもつながるでしょう。

業務効率化を図るツールなどについては以下の記事でも紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店の配膳ロボットとは?機能や導入のメリット・デメリットを解説

▶関連記事:調理ロボットのメリット・デメリットは?活用事例やおすすめの選び方を解説

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飲食店の利益率向上に効果が期待できる最新技術の導入事例

飲食店の利益率向上に貢献する最新技術は様々です。例えば、近年ではモバイルオーダーや配膳ロボットを導入している飲食店も多くあります。

モバイルオーダーとは、スマートフォンやタブレットから商品の注文・決済が行えるシステムです。お客さんはご自身のスマートフォンを使ってQRコードを読み込むことで、注文からお会計金額の確認ができます。

対応しているキャッシュレス決済でそのまま支払いまで完了できるものもあり、スタッフが対応する時間や、お客さんの待ち時間を削減できる便利なサービスです。

配膳ロボットは、テーブルまで料理を運んだり、空いた食器を下げたりできるロボットで、近年飲食店で導入が進んでいます。配膳ロボットを導入すれば、スタッフが厨房とホールを行き来する手間を省ける他、ピークタイムでも余裕をもったテーブルサービスができるようになります。なお、表情や音声、BGMの演出で楽しませる機能を備えた配膳ロボットも登場しています。

ただし、効果的なシステム・ツールは業態や店舗ごとの課題によって異なるため、ご自身の店舗に合ったものを選ぶことが大切です。また、導入には初期コストがかかるため、システム・ツールを導入する際には事前の情報収集や比較検討が大切です。



飲食店の利益率向上のヒントを探すなら「レストランマネジメントEXPO」へ

飲食店で利益率向上を目指す場合は、店舗の環境や経営体制の整備が欠かせません。飲食店の経営を成功させるための情報収集なら、ぜひ「レストランマネジメントEXPO」にご来場ください。

レストランマネジメントEXPOは、飲食店の経営や店舗管理の課題を解決するための展示会です。

会場は「集客支援ゾーン」「バックオフィスゾーン」「リスクマネジメントゾーン」の3つに分かれています。飲食店経営に役立つ様々な情報を得ながら、様々な製品・サービスを比較検討可能です。

同時開催の「スマートレストランEXPO」も、最新技術の情報収集・製品比較の場にご活用ください。スマートレストランEXPOは、飲食店の自動化・DXに特化した展示会です。人手不足問題・労働環境の改善などの課題を、先端テクノロジー(ロボット・IoT・AIなど)で解決する企業が、最新技術や製品を出展します。

人件費の削減による利益率の向上を目指す飲食店に役立つ情報が得られます。各展示会は事前登録すれば無料で入場可能、出展側としての参加も可能です。自社製品のアピールや他社との商談の機会としてご活用いただけます。

利益率の改善だけではなく、飲食店の課題解決に役立つ情報の収集や製品の比較ができるため、飲食店経営に携わっている方はぜひご来場ください。

レストランマネジメントEXPO
2025年12月3日(水)~5日(金)開催

スマートレストラン EXPO
2025年12月3日(水)~5日(金)開催



飲食店の利益率を上げるためには業務効率化が大切

飲食店の平均営業利益率は8.6%です。飲食店を経営する場合、営業利益率は10〜15%が一般的に目標値として設定されます。利益率を上げるためには、仕入れコストや商品の内容、オペレーションを見直すことが大切です。ただし、新商品の開発やオペレーションの複雑化はコスト増大につながるので注意しましょう。

利益率向上の手段として、業務効率化に貢献するシステム・ツールの導入もおすすめです。しかし、導入すれば必ず成功するとは限りません。適切な情報収集や、製品を目で見て比較し、店舗にあったものを導入しましょう。

飲食店の経営に携わっている方で利益率の向上を目指している場合は、ぜひレストランマネジメントEXPOにご来場ください。来場者として有益な情報の収集や、製品・サービスの比較検討ができるだけでなく、出展者として自社製品のアピールも可能です。ぜひこの機会にご来場ください。



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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