食品工場の在庫管理とは?重要性や課題、業務効率化のアイデアを解説

在庫とは「商品や原材料などの形で保管されているもの、または輸送中の棚卸資産」のことです。その在庫を適切に管理する「在庫管理」は、現場の重要な業務です。

在庫管理は業務量が多く、また正確性を求められるため、煩雑になりやすくミスも起こりがちです。しかし、適切に行わなければ経営状況に影響する可能性があるため、より良いやり方を模索している企業は多いかもしれません。

本記事では、在庫管理の目的や課題を解説します。在庫管理の課題や効率化アイデアも紹介するため、仕組みを改善したいと考えている企業の方はぜひご覧ください。



在庫管理とは?

在庫管理とは、在庫数を管理し、必要量を必要なタイミングで供給できるようにすることをさします。また、商品の管理中に管理物の品質が損なわれないように、適切な環境管理(温湿度、衝撃など)で品質を担保することも重要です。

在庫管理に含まれるのは、以下のような業務です。

  • 入出庫管理
  • 在庫の発注
  • 返品管理
  • 棚卸
  • 賞味期限・消費期限の管理
  • ロット・トレーサビリティ
  • 原材料・仕掛品・製品それぞれの在庫特性
  • 冷蔵・冷凍・常温など温度帯別管理

在庫数の増減や入出庫のタイミングを把握するための作業など、全てが在庫管理に含まれます。



在庫管理の目的と重要性

適切な在庫管理は、健全な企業経営に必須です。ここでは、在庫管理を行う目的と、なぜ重要視されているのかを4つの視点から解説します。

  • 適正な在庫を保つ
  • キャッシュフローを改善する
  • 品質を守り、衛生リスクを低減する
  • 生産性が向上する

それぞれ、詳しく見ていきましょう。


適正な在庫を保つ

そもそも在庫管理とは、受発注などの状況に応じて、最適な数量の在庫を確保することです。

受注量や生産計画にあわせて在庫をコントロールできていれば、「作りたいのに原料が足りない」「作ったが倉庫に溢れている」といった事態は起こりにくくなります。

在庫品の過不足が減ると、過剰在庫による保管スペースや保管期間のムダが解消される他、期限切れによる廃棄ロスを防げます。また、在庫不足による機会損失ロスも回避できるでしょう。

適正な在庫を保つ考え方として、現場でも取り入れやすい手法が「ABC分析」です。これは、「20%の商品が売上の80%を占める」というパレートの法則に基づき、売れ筋とそうでない商品を見える化する管理方法です。例えば、以下のようなグループ分けが考えられます。

  • グループA:主力商品・頻繁に動く原材料
    売上の大半を占めるため、優先的に在庫を確保する(在庫割合70%)
  • グループB:一定の需要があり、売上拡大が見込める商品
    売上アップを見込めるため、在庫が減ったら発注する(在庫割合20%)
  • グループC:動きが少ない商品・使用頻度の低い原材料
    売上への貢献度が低いため、状況によって発注を見合わせる(在庫割合10%)

ABC分析を活用することで、「どの在庫を重点的に簡易すべきか」「どの商品が過剰に保険されているのか」が明確になります。結果として、発注判断が属人化しにくくなり、誰が見てもわかる在庫管理を実現しやすくなる点も、現場にとって大きなメリットです。


キャッシュフローを改善する

在庫を持ちすぎると、キャッシュフローが悪化します。キャッシュフローとは、企業の経営活動を通じて生じる現金の流れをさす言葉です。

原材料や商品を仕入れる時には、先にお金を支払いますが、商品が売れて代金が入ってくるまでの間、そのお金は在庫として倉庫に置かれたままになります。そのため、在庫を長期間、過剰に持つと、資金繰りの悪化につながります。

たとえ帳簿上は利益が出ていても、今すぐ使えるお金がなければ、家賃や光熱費、従業員の給料、借入金の返済などができず、経営を続けることができません。

必要以上に在庫を持たず、適正な在庫数を維持することで、現金が手元に残りやすくなり、会社経営の健全化につながります。


品質を守り、衛生リスクを低減する

食品工場の在庫管理では、食品の安全性を維持・管理することが特に重要な要素となります。万が一、賞味期限や消費期限の切れた商品が市場へ流出すれば、食中毒やクレームなど、企業の信用や信頼を左右する重大な事案につながるおそれがあります。

食品の品質を守り、衛生リスクを低減するには、原材料を含め、商品の情報をリアルタイムで管理することが大切です。

徹底した在庫管理をしていれば、商品の品質に関わるトラブルを防ぐだけではなく、トラブルが起こった時の早急な対処も可能となります。


生産性が向上する

在庫を適切に管理できると、物を探す時間を減らしたり、欠品により作業できない時間を防いだりできます。

在庫を抱えすぎると、必要な物をすぐに取り出せません。また、管理するのにかかる作業量も増えるため、業務の時間や手間が増えてしまいます。

過剰在庫を防いで管理する在庫を減らすことで工数が減り、他の業務に人員を割けるようになるでしょう。



在庫管理の課題

在庫管理では、「保管期間の長期化による品質劣化」「長期間保管された不良在庫の存在」「拠点を超えた在庫状況の共有ができない」など、陥りやすい課題がいくつかあります。

ここでは、特に重視すべき3つの課題を紹介します。

  • 保管場所が分からず商品探しに手間と時間がかかる
  • 正しい数量を把握できずに過不足が起きる
  • 長期在庫による廃棄ロスの発生が懸念される

保管場所がわからず商品探しに手間と時間がかかる

在庫管理の業務は煩雑で、手間と時間がかかります。

管理が不十分な状態では保管場所が分からなくなり、必要な商品が見つからないことがあります。保管場所を決めていても棚が埋まっていたり、見えない位置に置いていたりすると、探し出せないこともあるでしょう。

また、保管場所が把握できていないと、在庫商品の資産価値を算出するために在庫数を確認する「棚卸作業」にも時間がかかります。

在庫を正確に管理するためには、現在の位置情報を共有する必要がありますが、リアルタイムの管理は難しく、在庫管理方法がルール化されていないと属人化する可能性があります。属人化した状態では、担当者不在時に業務が滞ってしまう課題も生じます。

さらに、人手に頼って在庫管理を行うと、時間や手間がかかるだけではなく、人員不足を招いて業務効率が下がる恐れもあります。

人が足りず確認作業に時間がかかる、一人あたりの業務が増えてヒューマンエラーが発生しやすくなるなどのトラブルから、結果として適正な在庫管理が困難になることも想定されます。


正しい数量を把握できずに過不足が起きる

在庫管理業務では、数量のカウントと記録を頻繁に行う必要があります。在庫を動かすたびに情報を更新するため、ヒューマンエラーが起こりやすい業務です。

入力ミスや在庫数のカウントミスなどによって在庫数の過不足が起こると、そのたびに再確認が必要となり、余計な手間や時間がかかります。

拠点が複数ある場合はさらに注意が必要です。各拠点にある在庫の情報をリアルタイムで反映しなければ、無駄な発注にもつながりかねません。

商品の正しい需要予測を立てることも、適正な在庫管理には重要です。適正な在庫管理ができていなければ、正確な需要予測を立てられず、商品の過不足が常態化する可能性もありえます。


長期在庫による廃棄ロスの発生が懸念される

食品工場にとって長期在庫は、賞味期限切れや消費期限切れ、異物混入など、商品の品質リスクに直結する課題です。

また、販売の見込みが立たない滞留在庫を抱えていると、売上の見通しが立たず、キャッシュフローにも懸念が生じます。

滞留在庫がやがて販売できなくなると、商品の廃棄ロスが発生します。商品を廃棄すると売上につながらないだけでなく、原材料費や管理費、廃棄費用などのコストが出ていくため、キャッシュフローにさらなる悪影響を与えます。

他にも、先入れ先出しのミスや誤出荷を生じる原因になる、管理する在庫が膨大になって他の商品の管理にも影響を及ぼすなど、長期在庫は在庫管理上の課題を増やすことになるでしょう。



無駄を省いて効率的に在庫管理を行うための工夫・アイデア

在庫管理の効率化を行う方法は、大きく分けて2種類あります。

  • ルールを標準化しマニュアルを整備する
  • システム化によって在庫管理の自動化・効率化を図る

具体的な施策も含めて、効率化の方法を解説します。


ルールを標準化しマニュアルを整備する

在庫管理のルールが曖昧な職場では、業務の無駄が増えます。まずは、ルールを整備し、運用することからはじめましょう。

具体的には、以下のような内容を整備していきます。


適正在庫の把握

過剰在庫や欠品を防ぐために、必要な在庫数を算出します。適正在庫は、「サイクル在庫+安全在庫」で求めるのが一般的です。

「サイクル在庫」とは、発注から次の発注までの期間に消費される在庫の半分をさします。また、「安全在庫」は品切れを防ぐために最低限持っておくべき在庫数のことです。

安全在庫は、以下の計算式で求められます。

● 安全在庫=安全係数(1.65)×使用量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)


適切な発注方式

在庫を管理するには、適切な発注方式で発注する必要があります。管理状況にあわない発注を続けていると、過剰在庫や在庫不足につながるでしょう。

在庫管理の発注方式には以下の6種類があり、それぞれ特徴が異なります。

安定した出荷量の場合は定量発注方式でも問題ないですが、時期によって需要に差がある場合などは都度必要数を発注する方式をとるなど、商品の特性にあわせて選ぶのが重要です。


先入れ先出し

先入れ先出しとは、先に入庫した物から使う仕組みのことです。古い物から使うことで保管期間が短くなり、商品の劣化を防げるのがメリットです。

この管理方法は、食品のように「期限」のある材料や商品を扱う場合に有効です。

ただし、単に「古いもの(賞味期限や消費期限の近いもの)から出荷する」在庫管理だけでは、期限切れや品質低下の課題をクリアするのは難しいでしょう。

賞味期限や消費期限を把握して適正な品質管理を実現するには、トレーサビリティを導入し、原材料や商品がいつ・どこで・誰によって製造されたのかを明確化することが重要です。

トレーサビリティについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:トレーサビリティとは?基本構造からメリットや課題、取り組み事例まで紹介

▶関連記事:食品トレーサビリティの取り組みと導入メリットとは?課題点や事例を紹介


ロケーション管理

倉庫内に住所を決めるイメージで、場所を管理するのがロケーション管理です。特に大型の倉庫では、ロケーション管理の考え方が欠かせません。

具体的には、以下の2つの管理方法があります。

  • 固定ロケーション:アイテムごとに保管場所を決める方法。場所が覚えやすい反面、在庫毎に空きスペースが必要で柔軟性に欠ける
  • フリーロケーション:流動的に開いている場所に保管する方法。保管場所がわかるように、記録を取る必要がある。倉庫内の在庫情報とロケーション情報を連携して登録する必要があり、ハンディーターミナルなどのIoT機器の整備が必須

作業標準書の作成

業務の属人化に悩んでいる企業は、標準化と作業標準書の作成が有効です。

標準化とは、全員が守るべきルールを定め、徹底させることをさします。徹底させるためには「徹底させる仕掛け」が必要ですが、IoT活用がその手段のひとつといえます。

標準化しても、口伝では途中でルールが変わるかもしれません。ここで役立つのが、作業のやり方を書面にまとめた「作業標準書」で、ルールの徹底や新人への教育にも使えます。


システム化によって在庫管理の自動化・効率化を図る

適正な在庫管理は、企業の売上やキャッシュフローにも影響を与えるため重要です。しかし、業務には時間や手間がかかるため、在庫管理をシステム化して負担を軽減する方法があります。

在庫管理をシステム化すると業務の自動化・効率化を図ることができるため、業務効率が上がると期待されます。

また、人手に頼ることや属人化によって発生しがちなトラブルを低減し、在庫状況や賞味期限・消費期限、需要予測など、知りたい情報をリアルタイムで把握できるようになります。

在庫管理システムの一例として、以下のようなものがあります。

それぞれのシステムを連携させることができれば、誰でも必要なタイミングで必要な情報を取得できるため、現場の作業効率向上にさらに役立つでしょう。


トレーサビリティシステム

前述のとおり、在庫製品の品質管理には、原材料や商品がいつ・どこで・誰によって製造されたかを追跡するトレーサビリティシステムが有効です。具体的には、原材料や商品に紐づいたロット番号から、製造から在庫管理、流通までの履歴を一貫して管理します。

冷蔵や冷凍が必要な食品工場では、保管場所の温度や湿度をIoTセンサーでトレーサビリティシステムに自動で記録し、品質管理に活用することもできます。


入出庫管理システム

原材料や商品の在庫は日々変動するため、在庫管理には入出庫の正確な管理が欠かせません。

入出庫管理が不十分だと、想定外の過不足が生じる、机上の在庫数を信頼できない、発注量のミスにつながるなどの課題に悩まされることにもなるでしょう。

入出庫管理をシステム化すれば、ヒューマンエラーを防ぎつつ、在庫状況を正確かつ効率的に把握・管理できます。


在庫管理システム

在庫管理システムを活用すれば、在庫を複数の場所で同時に見られ、情報共有が簡単になります。生産数や生産コストなどの情報とも紐づけられるため、保管コストの増加や機会損失、廃棄ロスを回避するのに役立ちます。

在庫管理システムには、例えば、IoT重量計やハンディーターミナルがあります。

  • IoT重量計:手作業を介さず商品の重量を記録。重量から在庫数への換算などにも対応
  • ハンディーターミナル:商品コードを読み取る在庫管理機器。他のシステムとの連携で業務効率化の実現が可能


食品工場の在庫管理を効率化するなら「食品工場Week(フードテックWeek)」へ

食品工場などにおいて在庫管理の効率を向上させたいなら、システム化をおすすめします。前述のとおり、在庫管理をシステム化すれば、人にかかる負担を減らし、業務効率化につながります。

在庫管理のシステム化を検討している方は、まず情報収集からはじめてみましょう。ネットなどで情報を集めることもできますが、「実際に製品を見たい」「デモを体験したい」という場合は、展示会などへの参加も検討してみてください。

自社の在庫管理に役立つ情報を集めたいなら、「食品工場Week(フードテックWeek)」へご来場ください。食品工場Week(フードテックWeek)は、食品工場の課題を解決するための最新技術・サービス・情報が一堂に集まる展示会です。

新設された「食品のコールドチェーンフェア」では、冷蔵や冷凍による管理が必要な食品を扱う企業にとって、最新情報を得る絶好の機会となるはずです。

なお、展示会は事前登録を行えば、無料でご入場いただけます。

また、関連サービスや製品を扱う企業であれば、出展側でのご参加もおすすめです。自社製品の認知度向上の場として活用できるだけでなく、食品メーカーの工場関係者と直接つながる機会として活用できます。

具体的な商談、見込み客やリードの獲得につながる可能性も高いため、ぜひ出展もご検討ください。

■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催

■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催



適切な在庫管理方法で業務の効率化・経営の健全化を目指そう

適切な在庫管理は、生産性向上やキャッシュフローの改善に結びつく重要な業務です。しかし、管理が煩雑になりやすく、人為的ミスが起こりやすいなど、課題を抱える企業も多いでしょう。

効率化する方法には、ルールの標準化やシステム化などがあります。自社の規模や状況に合った方法を取り入れることが、在庫管理の課題解決には必要です。

在庫管理のシステム化を検討しているなら、まずは最新情報を収集することからはじめ、実際に様々な技術を比較検討することをおすすめします。

また、自社に合った方法や最新の取り組み事例を知るには、展示会の活用も効果的です。「食品工場Week(フードテックWeek)」や「食品のコールドチェーンフェア」では、現場改善のヒントとなる最新技術やサービスを知ることができます。

ぜひご来場いただき、職場環境改善の推進に役立ててください。

■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催

■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催


▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリア トスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。 昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を超え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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