飲食店が活用できる助成金・補助金とは?施策の事例や注意点を解説
飲食店の業績悪化や人手不足を解消するには、状況に応じた施策が必要です。しかし、費用面の問題から実施を見送るケースも少なくありません。
助成金や補助金を活用すれば、自己負担を抑えて必要な施策を実施できます。本記事では、飲食店が活用できる助成金や補助金を解説します。助成金・補助金を使った施策例や活用する際の注意点も紹介するため、飲食店を経営する方はぜひ、参考にしてください。
そもそも助成金・補助金とは?
助成金・補助金は、国や地方公共団体などから要件を満たす事業者へ支給されるお金です。両者は明確に区別されていない場合もありますが、主に次の点が異なります。
- 助成金:主に労働環境改善のために支給するお金をさす。具体的には「雇用の維持」「新規・中途雇用」「人材育成」「Uターン・Iターン・Jターン雇用」「障害者の定着支援」「就業規則改善」「介護・育児休暇の取得」などのための費用を助成。
- 補助金:一般的には、予算や資金の不足を補完するために提供される支援形態をさす。「事業拡大」「商品開発」「販売促進」「設備投資」などの事業経費となる。
助成金は労働者に対して支払われるお金が多い一方、補助金は事業経費に対して補助される支援金です。
助成金・補助金ごとに申請期間や予算などが決まっている場合があるため、活用したい場合は早めに手続きしましょう。
飲食店が活用できる助成金・補助金の情報は、ミラサポplusやJ-Net21支援情報ヘッドライン、各行政のホームページ、民間企業によるポータルサイトなどで確認できます。各地の自治体や商工会議所、商工会、よろず支援拠点、中小企業支援センターなどでは、助成金や補助金の相談にも対応しています。
これらを利用し、飲食店の課題解決に役立つ助成金・補助金の情報収集に役立てましょう。
飲食店が活用できる助成金
飲食店が活用できる助成金は、以下のとおりです。
- 業務改善助成金
- キャリアアップ助成金
- 雇用調整助成金
- 産業雇用安定助成金
助成金制度の詳細を以下で詳しく解説します。なお、助成金の適用条件や概要は公募期間や年度によって異なる場合があるため、詳細は前述したホームページや相談窓口でご確認ください。
業務改善助成金
業務改善助成金は、生産性を向上するために設備投資するとともに賃金を引き上げると、設備投資にかかった費用の一部を助成する制度です。事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げる必要があります。
設備投資による生産性の向上で売上を伸ばすと同時に、利益を従業員の賃金として還元する場合に活用できます。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者の正社員化や処遇改善を実施した事業主に対し、かかった費用の一部を助成します。
飲食店スタッフの待遇を改善できればモチベーションアップにつながり、離職を防いで人手不足の解消に役立ちます。
雇用調整助成金
雇用調整助成金では、事業の縮小を余儀なくされた事業者が雇用維持のために休業や教育訓練、出向に使った費用の一部が助成されます。
売上が悪化すれば、従業員を減らして経費削減を考えるケースもあるかもしれません。しかし、売上が回復した際、あらためて人員を確保する手間やコストを考えると、安易な人員削減は問題が残ります。
雇用調整助成金を活用すれば、売上が悪化した際の休業手当を補ったり、教育訓練を実施してスタッフのスキルアップを図ったりすることが可能です。
産業雇用安定助成金
産業雇用安定助成金の事業再構築支援コースは2023年4月に創設された、コロナ禍の影響などで事業を一時縮小した事業者が事業再構築を図るための人員補充を支援する助成金です。
新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成する事業です。
飲食店が活用できる補助金
飲食店が活用できる補助金は、以下のとおりです。
- 小規模事業者持続化補助金(一般型)
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
補助金制度の詳細を以下で詳しく解説します。なお、助成金と同じく、補助金の適用条件や概要も公募期間や年度によって異なる場合があるため、詳細は前述したホームページや相談窓口でご確認ください。
小規模事業者持続化補助金(一般型)
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者などが販路開拓や販路開拓とともに行う業務効率化を支援する補助金です。通常枠、賃金引き上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠が設定されています。
飲食店の場合は、集客向上のための設備の充実や、Webでの集客活動や販路拡大の費用などに使えます。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が自社の課題解決にあうITツールを導入する際に必要な費用を補助します。なお、IT導入補助金ITベンター側の支援サポートが必須となるため、信頼関係が築けるITベンターの選定をする必要があります。
2024年は通常枠、セキュリティ対策推進枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、複数社連携IT導入枠の全4支援枠が設定されています。インボイス枠は、2023年10月開始のインボイス制度に対応するため新設された支援枠です。
飲食店なら通常枠やインボイス枠を活用して、オーダーシステムや会計、在庫管理などのデジタル化を図れば、業務効率を高められます。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、経済社会の変化に対応して新分野展開や業態転換など、事業再構築に必要な費用を補助します。
飲食店の場合は、テイクアウトやデリバリーなど小売業態への進出、ネット通販に取り組みたい場合に活用できる補助金です。なお、美容業界からカフェ開業、呉服店からレストラン開業など、異業種から飲食業態を創設したい事業者も活用できます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
飲食店が製造業も担っていた場合「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」も活用できます。
ものづくり補助金とは、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が制度化した補助金です。中小企業・小規模事業者等が取り組む、生産性向上に役立てる革新的サービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。
飲食店が活用できる各都道府県の助成金・補助金
各都道府県の自治体や社団法人、財団法人などによる、地域に特化した助成金・補助金も存在します。事業を営む地域で利用できる制度がないか確認し、活用しましょう。
2024年2月時点で各都道府県が実施する、助成金・補助金を一部紹介します。
東京都|インバウンド対応力強化支援補助金
東京都のインバウンド対応力強化支援補助金は、都内の事業者が多言語対応や店内設備の充実にかかる費用を補助します。都内の飲食店も、補助金の対象(中小企業限定)です。
北海道砂川市|創業補助金
北海道砂川市の創業補助金は、地域内で創業者が持続可能な経営のため、販路拡大や売上拡大を支援する補助金です。砂川市で営業し、創業5年未満の飲食店なら利用できます。
鹿児島県東串良町|東串良町商工新規事業創出支援補助金
鹿児島県東串良町の東串良町商工新規事業創出支援補助金は、地域で起業する創業者に費用を補助しています。東串良町で開業を考える飲食店が利用できる補助金です。
助成金・補助金を使った飲食店の施策事例
様々な助成金・補助金を利用すれば、飲食店の課題解決に役立つ設備を導入し、業務の効率化や売上向上を期待できます。
しかし、施策内容をイメージできないと計画が立てられません。助成金や補助金を使った飲食店の施策例を以下で紹介するため、参考にしてください。
調理器具や洗浄機の導入
調理器具や洗浄機など、厨房業務を効率化する設備を導入すれば、作業時間の短縮や製造量の向上が見込めます。既に導入していても、経年劣化により性能が落ちている場合は設備の交換も重要です。
新しい機器の導入や入替を効果的に行えば、限られた人員でもスムーズに日々の業務を進められます。結果、接客に使える時間が増え、満足度の高いサービスを提供できます。
セルフオーダーシステムの導入
飲食店にセルフオーダーシステムを導入すると、スタッフが注文を聞いて回る手間を省けます。注文内容を伝達する際のミスも防ぎ、提供時間の短縮や食材ロスの削減につながります。
また、オーダーシステムに蓄積される注文履歴を活用すれば、仕込み量の最適化や繁忙時間の把握も可能です。食材や人員配置の無駄を減らし、効率化を図れます。
POSレジシステムや自動釣銭機の導入
POSレジシステムや自動釣銭機などを導入することで、精算業務の効率化や自動化ができます。会計の手間を減らし、釣り銭の受け渡しミス防止にも役立ちます。
また、POSレジシステムのなかには、売上データを会計ソフトと連携できるシステムも存在します。システムを上手く組み合せれば、経理業務の簡略化も可能です。
予約・問合せ対応の自動化
業務中、電話での予約や問い合わせに手を取られると、作業効率が低下します。予約や問合せ対応を自動化すれば、営業時間中はサービス提供に集中できるかもしれません。
例えば、グルメサイトの連携や予約ツールを導入すれば、予約対応を自動化できます。電話対応を自動化してくれるツールもあるため、自店舗の状況にあわせて導入を検討しましょう。
テイクアウトや宅配サービスで販路拡大
店舗内で料理を提供する業態にこだわらず、テイクアウトや宅配サービスなどの小売業態に進出し、販路拡大に成功した飲食店も存在します。販路拡大が成功すれば、新たな価値提供や顧客を獲得できます。
販路拡大に際しては、専用のオーダーシステムやECサイト構築、設備機器に費用がかかります。こうした費用にも助成金・補助金を活用できます。
ホームページやパンフレットなどを作成して集客
店舗を利用して欲しい層に認知してもらうため、集客にかかる費用も助成金・補助金が利用できます。
また、外国人観光客向けの多言に語対応したパンフレットを用意すれば、インバンド需要にも対応できます。海外からの観光客が多い飲食店は、集客の多言語化も検討しましょう。
飲食店が助成金・補助金を活用する際の注意点
助成金・補助金を活用すれば、費用負担を抑えて施策を実施できますが、注意点も存在します。
- 費用を使ってから受け取る
- 支出期間や申請期限、報告書の提出などがある
- 課題解決に適した施策を実施する
- 補助金申請書の書き方に注意する
費用を使ってから受け取る
助成金や補助金の多くは、必要な費用を使って対象事業を実施してから受け取る形式です。
施策にかかる費用は、先に自己負担で支払う必要があるため、必要な金額を用意した上で取り組みましょう。なお、現時点で余剰資金が少ない事業者は、採択後に取引先銀行の融資活用も視野に入れましょう。
支出期間や申請期限、報告書の提出などがある
一般的には、該当する事業期間に支出した費用に対して助成や補助を受けられることがあるため、期間外の支出は対象に含まれません。申請した事業期間内や交付決定してからの支払いでないと対象にならないため、注意しましょう。
また、申請期限や申請後の報告書提出が必要なケースもあります。例えば、小規模事業者持続化補助金は実施後に実績報告書の提出、補助金交付後は状況報告書の提出が必要です。必要書類は忘れず提出しましょう。
課題解決に適した施策を実施する
補助金を受け取ると、会計検査院の検査を受ける可能性があります。受け取った補助金を適切に活用していないと、指摘を受ける可能性があります。
そもそも、不要な施策を実施していては受け取れる助成金・補助金を活かせません。助成金・補助金が活きる施策で、飲食店の課題を解決しましょう。
補助金申請書の書き方に注意する
補助金申請書を初めて作成する方は、以下の内容に注意しながら申請書を作成しましょう。
- 事業の背景と理念を記載する
- 明確な目的陳述をする
- 具体的で詳細な計画説明をする
- 目標と手段の明確化する
- 予算の説明をする
- 効果や影響に焦点をあてる
- 専門用語はなるべく使用しない
- 主語を書く
- 文章は「ですます調」で記載する
これらに注意したうえで、補助金申請書を作成しましょう。
助成金で店舗のDXや業務効率化を図りたい方は展示会での情報収集がおすすめ
業務改善助成金やIT導入補助金などの助成金・補助金を活用すれば、飲食店の自動化・DX等の費用負担を減らすことが可能です。業務の効率化を図るため、飲食店の経営者は自動化やDXを検討しましょう。
飲食店の自動化やDXに興味を持っている方には展示会での情報収集がおすすめです。
スマートレストランEXPOは、飲食店の自動化やDXに特化した展示会です。人手不足の解消や業務の自動化・効率化に役立つサービスを提供する企業が、多数出展しています。導入したいツールを展示会で体験し、比較検討に必要な情報を集められるでしょう。
また、飲食店向けのツールを提供する企業は、課題解決に必要なツールを求める経営者とマッチングできる場です。自社サービスを直接訴求し、新たな顧客を得るきっかけ作りに役立ちます。
スマートレストラン EXPOの詳細は以下のとおりです。
来場・出展ともにメリットがある、飲食店の自動化・DXに特化したスマートレストランEXPOへ、ぜひご来場ください。
また、DXについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
助成金・補助金を活用して飲食店の課題解決を
飲食店が活用できる助成金は、業務改善助成金やキャリアアップ助成金などです。補助金には小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金、事業再構築補助金などがあります。
さらに、各都道府県の自治体なども、独自の補助金制度を実施しているため、必要に応じて活用しましょう。
なお、助成金・補助金ありきの事業は失敗する事例が多いのが現状です。例えば、計画の不備や実現不可能な目標、マーケット調査不足、予算の誤算、経営者や従業員のスキル不足や情熱不足、責任者不在、市場変動や環境変化への読み間違い、関係者のコミュニケーション不足などが例として挙げられます。
成功するかどうかは、計画や実行、リーダーシップ、市場分析、環境変化への適応力など、多くの要素に依存します。
補助金を受けることはあくまで手段、その後の実行力や経営者の賢明な判断が成功を左右します。
成功への鍵は計画の適切な策定と柔軟な対応力、そして変化に対する適切な戦略の策定にあります。そして資金調達とロイヤルカスタマー同時に手に入る「クラウドファンディング」も同時に検討することをおすすめします。
助成金・補助金を使って導入したい飲食店の支援ツールは、スマートレストランEXPOで体験可能です。人手不足の解消や業務の効率化に役立つツールを探す飲食店経営者の方は展示会などへの参加もご検討ください。
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり飲食店プロデューサー。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリア トスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。 昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
▼この記事をSNSでシェアする