飲食店が人手不足になる理由とは?7つの原因ともたらす影響や解決策を解説
人手不足は、様々な業界が抱える課題です。特に、飲食店は深刻な人手不足に陥っています。
人手不足による悪影響は、スタッフの負担が増して離職者がさらに増える悪循環を引き起こすだけではありません。人手不足からサービス品質の低下や顧客離れが起き、営業できない事態に追い込まれる可能性もあります。
人手不足の解消には、原因の特定と対処が重要です。待遇の見直しや社内制度の充実など、状況にあわせた解決策を検討しましょう。
本記事では、飲食店が人手不足に陥る原因と人手不足がもたらす影響、解決方法を解説します。人手不足に悩む飲食業界の方は、ぜひ参考にしてください。
食品業界全体の人手不足については以下の記事で紹介しているため、あわせてご覧ください。
飲食店の人手不足の現状は?
飲食業界は非正規雇用で働く方の割合が多く、飲食店の人手不足は大きな課題として以前から注視されています。
2020年からは、新型コロナウイルスの影響で、飲食店を含む多数の小売店が営業自粛や時短営業を余儀なくされました。営業時間の減少から一時的に人手不足は軽減しましたが、同時に離職する非正規スタッフも増えました。
コロナ禍の影響が落ち着きはじめた近年、人の流れは戻りつつある状況です。しかし、飲食店は離職したスタッフの補充が追いつかない状態で、さらなる人手不足に陥っています。
実際、産業別に職業紹介状況を見ると、「宿泊業、飲食サービス業」の有効求人倍率は高い状態です。宿泊業、飲食サービス業の入職者数は多いですが離職者数も多く、採用したスタッフが定着せずに人手不足の状態が続いていると考えられます。
飲食店が人手不足に陥る7つの原因
飲食店が人手不足に陥っている原因には、次の7つが考えられます。
- 賃金の水準が低い
- 休みを取りづらい
- 長時間労働になりやすい
- スタッフの負担が重い
- 十分な研修・教育を受けられないことがある
- 離職率が高く人材が定着しない
- 人材を補充する余裕がない
7つの原因を以下で詳しく解説します。
賃金の水準が低い
飲食店が人手不足に陥る原因には、他業種と比べた賃金の低さや、雇用条件の悪さが挙げられます。
厚生労働省のデータによると、「宿泊業、飲食サービス業」の賃金がもっとも低い結果でした※1。年齢階級別に見ると、年齢が上がっても賃金はさほど増えていません。
別の厚生労働省のデータでは、賞与制度のない企業割合が他業種より高いという結果が出ています※2。賞与制度のある企業でも、支給していないケースの割合が他業種より高い傾向です。
※1出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計」
※2出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」
休みを取りづらい
飲食店が人手不足に陥る原因には、他業種と比べた賃金の低さや、雇用条件の悪さが挙げられます。
厚生労働省のデータによると、「宿泊業、飲食サービス業」の賃金がもっとも低い結果でした※1。年齢階級別に見ると、年齢が上がっても賃金はさほど増えていません。
別の厚生労働省のデータでは、賞与制度のない企業割合が他業種より高いという結果が出ています※2。賞与制度のある企業でも、支給していないケースの割合が他業種より高い傾向です。
※出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」
長時間労働になりやすい
飲食店は、休みが少ないだけでなく夜遅くまで営業するケースもあり、労働時間が長い傾向も見られます。厚生労働省のデータによると、「宿泊業、飲食サービス業」の労働時間は、他業種を上回る結果でした※。
繁忙期は休憩時間の確保が難しいケースもあり、長時間労働による負担を感じやすい仕事です。
※出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」
スタッフの負担が重い
飲食店は、ホール・キッチンともに立ち仕事で、体力を使うとともに衛生管理や接客にも気を使います。
飲食店は脳・心臓疾患や精神障害などの労災認定で上位に入る業種であり、心身に負担がかかる仕事です。スタッフがカスタマーハラスメントにあう可能性もあり、大きなストレスから離職につながるケースもあるでしょう。
また、飲食店では店長、社員、アルバイトなどの立場に関係なく、同等の業務を行っている店舗も珍しくありません。立場の違いで業務の線引きが難しい仕事ですが、社員並みに働くアルバイトが、社員より悪い待遇だとモチベーション維持が難しいこともあるかもしれません。
十分な研修・教育を受けられないことがある
人手不足の飲食店では、新人に付きっきりで指導する環境を作るのは難しいこともあります。
結果、業務に必要な教育に使う時間が限られ、十分な研修を受けないまま実務をこなすケースもあるかもしれません。教育面での不満や不安から離職が増えれば、人手不足を解消できません。
また、料理や接客、店舗経営を学びたい意欲的な方も、十分な指導を受けられない飲食店ではやりがいを感じられずに離職する恐れがあります。
離職率が高く人材が定着しない
賃金や休暇、労働時間などの問題から飲食店は労働条件が悪くなりやすく、負担の重さも相まって離職率が高い傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、2022年の離職率は産業計が15.0%に対して、「宿泊業、飲食サービス業」は26.8%と一番高い結果でした※。
採用してもスタッフが定着しなければ、人手不足を解消できません。人手不足が慢性化すれば採用を繰り返すコストもかかり、飲食店の負担が増加します。
※出典:厚生労働省「-令和4年雇用動向調査結果の概況-」
人材を補充する余裕がない
人手不足を解消するために新しいスタッフを採用するには、人件費がかかります。
しかし、十分な売上を得られていない状況では、人件費を抑えなければなりません。
人件費にお金をかける余裕がない場合、経営状態の見直しや人件費以外で削減可能な経費がないかなどを考えましょう。
飲食店の人手不足がもたらす影響
飲食店の人手不足がもたらす影響には、次の3点が挙げられます。
- スタッフや経営者の負担が増加する
- サービス品質の低下や顧客離れが起きる
- 店舗の営業が難しくなる
いずれも経営状態の悪化につながるため、早期解決が必要です。
スタッフや経営者の負担が増加する
人員補充ができないと、人手不足をカバーするために既存スタッフや経営者自身の負担が増加します。負担増から既存スタッフが離職する悪循環も考えられます。
スタッフに負担をかけないために、経営者自身がフォローするにしても限界があります。十分な休息を取れない状態が続けば、経営者自身の健康を害しかねません。
サービス品質の低下や顧客離れが起きる
人手不足の状態で飲食店を営業していると、十分なサービスを提供できない可能性が高まります。スタッフの負担増によってスタッフのミスを誘発したり、顧客の待ち時間が延びたりすれば、クレームが増加する可能性があります。
また、提供するサービス品質が低下すれば、リピーターを獲得できない、顧客が離れるなどの事態につながりかねません。このように、飲食店の人手不足は、経営状態に深刻な打撃を与える可能性も考えられます。
店舗の営業が難しくなる
店舗の営業に必要な人数を確保できないと、営業できなくなる可能性も考えられます。
営業日が減少すれば売上も下がり、経営状態の悪化は避けられません。最悪の場合、閉店を余儀なくされることもあるでしょう。
人手不足は深刻な影響を与える前に、対応すべき課題です。
飲食店の人手不足を解消する7つの方法
飲食店の人手不足を解消するには、次に挙げる7つの方法が有効です。
- 雇用条件を見直す
- 募集方法を見直す
- 研修・教育制度を整える
- 明瞭な人事評価システムを導入する
- スポット求人を活用する
- デジタル機器やITサービスを活用して効率化を図る
- 助成金を活用する
7つの方法のなかで、自店舗に取り入れられる方法がないか検討しましょう。
雇用条件を見直す
募集しても人が集まらない、あるいは待遇に不満を抱えるスタッフがいる場合は、雇用条件を見直すことが大切です。具体的には、以下の事柄を検討しましょう。
- 同業他社と比較して給与水準が低くないか見直す
- 業務内容や業務時間を柔軟に変更する
- 福利厚生を充実できないか考える
また、学生や扶養内で働きたい主婦など、特定の人物像にこだわらず、採用対象者の拡大も検討しましょう。
募集方法を見直す
店頭掲示や自社ホームページ、ハローワークだけでなく、幅広い募集方法を試し、多くの方の目に留まるよう工夫しましょう。
特にSNSを使ったスタッフ募集は、費用をかけずに採用活動ができて有用です。
また、リファラル採用も自社従業員、取引先などからの紹介、推薦などで、初見では読み取れない人柄やスキルなども紹介者からヒアリングできるため採用精度向上が期待できるでしょう。
研修・教育制度を整える
採用したスタッフを効率よく育てるためには、研修・教育制度の整備も重要です。
飲食店での研修や教育は「見て覚える」ケースも珍しくありませんが、新人を指導しながら行う業務は負担が大きいでしょう。忙しさから新人へのフォローが追いつかず、トラブルを引き起こす可能性も考えられます。
基本的な業務手順や接客マナーなどをまとめたマニュアルを用意すれば、逐一業務の疑問を既存スタッフに質問しなくても解決可能です。
マニュアルを見直していつでも対処方法を確認できれば、サービスの均一化も図れます。実際の動きを見せたい場合などは、動画マニュアルの導入も検討しましょう。
明瞭な人事評価システムを導入する
昇給の評価基準や評価による特典が明確だと、スタッフのモチベーションアップにつながります。
仕事で何を頑張れば評価されるかが具体化されていれば、明確な目標設定が可能なので、スタッフの意欲や接客品質の向上にも役立ちます。
現状の評価システムが曖昧な状態であれば整備のし直し、設けていない場合は適切な評価システムを導入しましょう。
スポット求人を活用する
特定の日だけ人手不足を解消したい場合は、スポット求人のマッチングサービスも便利です。
なかには、スポット求人で来てくれた方を長期アルバイトとして直接雇用できるサービスも登場しています。実際の働きぶりを見てから長期雇用の相談ができるため、スタッフの募集・採用がスムーズです。
デジタル機器やITサービスを活用して効率化を図る
飲食店の人手不足を解決するには、業務の効率化も重要です。業務効率が悪いとスタッフの負担が増え、店舗営業に多くの人数が必要な状態に陥ります。
業務の効率化や負担軽減を進めるには、DXを検討しましょう。DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。デジタル化で業務や組織を改革し、優位性を高めることをさし、各業界でDX推進が近年必要とされています。
以下に挙げる事柄は、飲食店のDX例です。
- 各種オペレーションの負担を軽減する機器を導入する
- Web予約システムを導入して電話対応を減らす
- キャッシュレス決済を導入して会計の手間を減らす
- シフト管理アプリを活用してシフト作成の手間を省き、柔軟な働き方ができる体制を作る
- 配膳ロボットの導入で人手が少なくても回る体制を構築する
飲食店もDXを推進して、人手不足の解消につなげましょう。
飲食店のDXを詳しく知りたい方は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?食品業界の具体例などわかりやすく解説」をご覧ください。
助成金を活用する
人手不足を解消するには費用がかかる方法もありますが、助成金制度もあるので必要に応じて活用しましょう。
利用可能な助成金制度は、業務改善助成金、キャリアアップ助成金、ものづくり補助金、 IT導入補助金などです。
給与アップや福利厚生の充実、DXに必要なツール導入の費用を助成金で補えれば、経営者側の負担を減らせます。
「事業主の方のための雇用関係助成金」などは、情報の入手漏れがないよう定期的にチェックすることをおすすめします。
飲食店の業務自動化・DXで人手不足を解消するなら「スマートレストランEXPO」へ
飲食店の業務自動化やDXは、人手不足の解消にも役立ちます。以下は一例ですが、人手不足の解消に効果があるツールです。
- 配膳ロボの導入でホールスタッフの負担を軽減する
- 調理ロボを活用してキッチンの作業効率を上げる
- アプリでオーダーできるシステムの導入で直接注文を取る手間を減らす
- 研修に必要なマニュアル作成をサポートするツールで教育制度を整える
現在、飲食店向けの様々なツールが登場しています。選択肢が豊富な反面、実際に機能を体験しないと、自店舗の課題解決に適したツールが何かの判断は難しいでしょう。
スマートレストランEXPOでは、飲食店の人手不足解消に役立つツールが展示されます。
会場で機能を体験し、サービスを提供する企業様から直接話を聞ければ、自店舗の課題解決に適しているかの判断に役立ちます。飲食店の自動化・DXを考える方は、ぜひご来場ください。
また、自動化・DXに役立つツールやサービスを提供する企業様の場合は、利用者とマッチングすることも可能です。展示・サンプル配布などのサービス訴求によって、商談の促進につながる絶好の機会ですので、ぜひご検討ください。
スマートレストランEXPOの詳細は以下のとおりです。
なお、人手不足を含む飲食店の経営課題にお悩みの場合は「レストランマネジメントEXPO」への参加をおすすめします。
「レストランマネジメントEXPO」では、「バックオフィス支援ゾーン」「集客支援ゾーン」「リスクマネジメントゾーン」の3つの出展カテゴリーに分けて、様々な飲食店の経営課題を解決するための展示を行います。
バックオフィス支援ゾーンでは、採用や雇用支援の他、勤怠管理システムや人材管理システムに関する商材を扱う企業も出展するため、自店舗の課題解決に向けたヒントを得られるでしょう。
レストランマネジメント EXPOの詳細は以下のとおりです。
飲食店の人手不足にお悩みの経営者の方は、ぜひ展示会に参加して課題解決への糸口を見つけてください。関連サービスを提供している企業さまにもメリットのある展示会なので、あわせて出展もご検討ください。
現状を把握して飲食店の人手不足を解消しよう
飲食店は、人手不足が深刻な状況です。人手不足が解消できない場合は、スタッフや経営者の負担が増すだけでなく、品質低下からの顧客離れや、営業できない事態に追い込まれる可能性があり、早期解決が必要です。
人手不足の解消方法には雇用条件や募集方法の見直し、教育制度や人事評価システムの整備・導入、業務効率を高めるツールを導入したDXが挙げられます。先端テクノロジーを使ったツール導入には初期費用がかかりますが、助成金を活用すれば負担を抑えられます。まずは展示会で人手不足解消への糸口を見つけましょう。
▶監修:泉 明美(いずみ あけみ)
「これからの時代の飲食店マネジメント協会」コンサルタント飲食チェーン2社の店舗開発(加盟者開発、物件開発)にて加盟者面談から新規出店までの業務全般を担当。FC店スーパーバイザー業務(12店舗)及び、直営店での店舗運営業務に携わる。その後、M&A仲介企業にて飲食店の店舗事業譲渡、店舗造作設備譲渡のアドバイザリー業務など行い、現在、既存、新規商業施設へのテナントリーシング、店舗、企業などのPR業務等に取り組む。
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