食品衛生管理者とは?専任が必要な業種や資格の取得要件をわかりやすく紹介!

食品衛生管理者は食の安全を担う存在で、特定の業種では専任が義務付けられています。食品関連の事業を行う場合や食品業界で働く場合は、食品衛生管理者の詳細を正しく理解しておきましょう。

本記事では、食品衛生管理者の概要や資格取得に必要な要件、資格を活用できる業種を紹介します。似た資格の「食品衛生責任者」との違いも詳しく紹介するので、食品衛生管理者様について知りたい人はぜひ参考にしてください。



食品衛生管理者とは食品製造・加工施設で必要な国家資格

食品衛生管理者は、食品の製造または加工を行う工場で、衛生上の管理をする際に必要な国家資格です。食品衛生法施行令で定められている特定の業種では、施設ごとに専任の食品衛生管理者を置かなければなりません。

食品衛生管理者の資格を取得するための要件専任が必要な業種は、後述の内容を参考にしてください。食品衛生管理者の設置義務に該当する工場や施設で働いている方は、正しく理解しておきましょう。

なお、営業者は、食品衛生管理者を設置や変更を行った場合、15日以内に都道府県知事(保健所)に食品衛生管理者の氏名やその他必要事項を届け出る必要があります。

届出をせず営業した場合や虚偽の届出をした場合には、50万円以下の罰金が科されるため注意しましょう。ただし、詳細な規定や最新の法律は、都道府県の保健所や食品衛生に関する公式文書の確認をおすすめします。


食品衛生管理者と食品衛生責任者の違い

「食品衛生責任者」は、食品衛生管理者と混同しやすい資格です。食品衛生管理者と食品衛生責任者は異なるため、違いを理解しておきましょう。

食品衛生責任者とは、飲食店や食品製造業、食品販売店などの営業施設・調理施設・製造施設において、施設の衛生管理を担う責任者のことです。法令(食品衛生法施行規則)によって、営業者は営業施設ごとに「食品衛生責任者」を設置することが義務付けられています。

一方、先述した食品衛生管理者は、一定規模以上の食品製造業や食品加工業などの営業施設において、施設の衛生管理を専門的に担当する責任者のことです。法令(食品衛生法施行規則)によって、特定の業種においては営業者が営業施設ごとに「食品衛生管理者」を設置することが義務付けられています。

このように、両者は設置を義務付けられている対象の業種や施設が異なります。食品衛生責任者は販売・製造に関する衛生管理を行い、飲食店をはじめとした食品に関わるより多くの施設で必要になります。

食品衛生責任者になるためには、以下いずれかの資格を有している必要があります。

  • 栄養士
  • 調理師
  • 製菓衛生師
  • 食鳥処理衛生管理者
  • と畜場法に規定する衛生管理責任者若しくは作業衛生責任者
  • 船舶料理士
  • 食品衛生管理者の有資格者
  • 都道府県知事等が行う食品衛生責任者になるための講習会または都道府県知事等が適正と認める講習会の受講修了者

いずれかの資格を保有している方は、食品衛生責任者になれます。資格を持っていない場合、認定を受けた団体で実施される養成講習会を受講して、資格を取得しなければなりません。

なお、食品衛生管理者は食品衛生責任者の上位資格です。食品衛生管理者は食品衛生責任者を兼任できますが、食品衛生責任者が食品衛生管理者の業務を兼任できないので注意しましょう。

他にも混同されやすい資格に「衛生管理者」があります。衛生管理者については別の記事で詳しく紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:衛生管理者の役割とは?資格の種類や受験資格、選任が必要なケースをわかりやすく解説



食品衛生管理者になるためには?|資格取得要件・受講科目・合格率

食品衛生管理者の資格は、特定の条件を満たした上で、講習を受けると資格を取得できます。

  • 資格取得の要件
  • 講習会での受講科目
  • 食品衛生管理者の合格率

上記の3つをそれぞれ簡潔に紹介します。


資格取得の要件

食品衛生法第48条第6項に定められている特定の条件を満たし、講習を受けると食品衛生管理者の資格を取得できます。

条件は下記のとおりで、いずれかを満たしていれば、講習を受けた後に食品衛生管理者になれます。

  1. 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師
  2. 学校教育法に基づく大学、旧大学令に基づく大学または旧専門学校令に基づく専門学校で医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した人
  3. 都道府県知事の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設で所定の課程を修了した人
  4. 学校教育法に基づく高等学校もしくは中等教育学校若しくは旧中等学校令に基づく中等学校を卒業した人、または厚生労働省令の定めるところにより、これらの人と同等以上の学力があると認められる人で、食品衛生管理者を置かなければならない製造業または加工業において食品、または添加物の製造、または加工の衛生管理の業務に3年以上従事し、かつ、都道府県知事の登録を受けた講習会の課程を修了した人

上記のうち、4つ目の条件に該当する人は、衛生管理の業務に3年以上従事した製造業または加工業と同業種の施設でのみ食品衛生管理者となれます。

また、3つ目の条件の「都道府県知事の登録を受けた食品衛生管理者の養成施設」は、厚生労働省が公開しています。最新の養成施設一覧が記載されたPDFが厚生労働省のホームページでダウンロードできるので、3つ目の条件の方法で資格取得の要件を満たす場合は確認しておきましょう。


講習会での受講科目

高校卒業相当以上かつ、食品衛生管理者を置かなければならない施設で3年以上の衛生管理業務従事経験がある方であれば、講習を受けると食品衛生管理者になれます。特定の資格を持っていない方や、大学・養成施設に通っていなかった方でも目指せる国家資格です。

食品衛生管理者登録講習会は、講習会を実施しようとする団体が都道府県知事の登録を受けて実施されます。令和6年の実施状況は厚生労働省のホームページに掲載されており、2024年5月現在掲載されている内容は下記のとおりです。

食品衛生管理者登録講習会の科目と講習の時間数は、厚生労働省によって定められている基準を満たしている必要があります。科目と必要時間数は食品衛生法施行規則第56条で規定されている他、厚労省のページにも転記されているのでそちらをご確認ください。

なお、講習会では、食品衛生に関する幅広い知識と実践的な技術を習得するために、次の科目が含まれます。

  • 食品衛生法規
  • 微生物学
  • 食品の保存および加工技術
  • 衛生管理の実践方法
  • 危害分析重要管理点(HACCP)の概念と応用

食品衛生管理者の合格率

食品衛生管理者は、講習を修了すれば資格が取得できます。一般的な試験のような、合格・不合格はありません。

また、食品衛生管理者は、現時点(2024年5月現在)では有効期限がないため、一度講習を修了して取得した後、更新手続きは不要です。


食品衛生管理者の資格を活用できる業種

続いては、食品衛生管理者の資格を活用できる職場を紹介します。食品衛生管理者が活用できる業種は、大まかに分けると下記の2つです。

  • 食品の製造や加工を行う施設
  • 食品製造販売業者や給食施設

それぞれについて、詳しくみていきましょう。


食品の製造や加工を行う施設

前述したとおり、食品の製造や加工を行う施設では、食品衛生管理者の設置が義務付けられています。食品衛生管理者を選任する必要がある食品工場は、食品衛生法施行令第13条で定められている食品を製造・加工する施設です。具体的には、次のような食品を製造・加工する工場です。

  • 食肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)
  • 魚肉ハム、魚肉ソーセージ
  • 全粉乳(1,400g以下の缶に収められたものに限る)
  • 加糖粉乳
  • 調整粉乳
  • 放射線照射食品
  • 食用油脂(脱色または脱臭の過程を経て製造されるものに限る)
  • マーガリン、ショートニング
  • 添加物(食品衛生法第11条第1項の規定により規格が定められたものに限る)

営業者は、自ら資格を取得して食品衛生管理者として登録するか、資格を保有している人材を確保する必要があります。

一方、食品衛生法施行令第13条に定められた食品・添加物以外の製造・加工を行う施設は対象外で、食品衛生管理者を設置する必要はありません。


食品製造販売業者や給食施設

食品衛生管理者は、食品や添加物を製造・加工する特定の施設では設置が義務付けられていますが、飲食店や給食施設など食品を製造販売する施設は、設置義務の対象外です。

一方、原則として食品を取り扱う全ての施設には「食品衛生責任者」の設置が義務付けられています。前述のとおり、食品衛生管理者の資格を持っている方は、食品衛生責任者も兼任が可能です。

そのため、食品衛生管理者の資格を持っている方は、食品の衛生管理に詳しい存在として、食品衛生責任者の設置が必要な飲食店や給食施設でも重宝される可能性が高いです。



HACCP(ハサップ)の推進によって高まる食品衛生管理の重要性

近年HACCPの推進により、食品衛生管理の重要性が高まっています。HACCPとは、「Hazard Analysis Critical Control Point」の頭文字をとった言葉で、食品の安全性を確保するための衛生管理手法をさします。

令和3年(2021年)6月1日から、原則全ての食品等事業者には、HACCPに沿った衛生管理が義務付けられました。HACCPの「一般的な衛生管理に関する基準」のなかには、食品衛生責任者の専任も明記されています。

食品衛生責任者を兼任できる国家資格である食品衛生管理者資格保有者は、衛生管理に精通している人材として、食品業界で重宝される可能性も高いでしょう。事業者側は、食品衛生管理者資格を保有する人材の採用によって、取り扱う食品の安全性を高めることも期待できます。

HACCPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

▶関連記事:HACCP(ハサップ)とは?概要や対象事業者、メリットと注意点をわかりやすく紹介



食品衛生管理に関する情報収集は「食品衛生イノベーション展」へ

食品の衛生管理は、資格保有者を確保するだけで終わりではありません。衛生管理に精通した人材の確保に加え、衛生管理に関する最新技術や知識を収集し、業務に反映して食の安全性を高めることが大切です。

食品の衛生管理に関する最新情報を得たい方は、ぜひ「食品衛生イノベーション展」にご来場ください。食品衛生イノベーション展は、食品製造業の重要テーマである「食品衛生の課題解決」のための専門展です。

AI・外観検査や監視カメラ、入退室管理、HACCP関連などの商材を持つ、食品業界のメーカーや商社、部門が多く出展・来場します。食品衛生イノベーション展は、事前登録すれば無料で入場可能です。出展側での参加も可能で、自社製品アピールの場や、新規リード獲得・営業強化の機会としてぜひご活用ください。

食品衛生イノベーション展の詳細は以下からご確認いただけます。

■食品衛生イノベーション展
詳細はこちら

来場側、出展側どちらにもメリットがあるので、食品衛生に関する情報や最新技術に興味がある方は、ぜひ足を運んでみてください。



食品衛生管理者の重要性は今後も高まることが予想される    

食品衛生管理者は、食品の製造・加工を行う施設で衛生上の管理を行うために必要な国家資格です。特定の業種では専任が義務付けられているので、対象業種を確認しておきましょう。資格取得の要件を満たし、講習を受けると取得できる他、資格保有者は食品衛生責任者も兼任可能です。

令和3年6月からは、HACCPに沿った衛生管理が義務付けられ、食品の衛生管理に対する重要性は高まっています。食品衛生管理者の重要性が高まることも予想されるため、資格を保有している人材の確保だけではなく、食の安全性を高める実用的な衛生管理システムの導入も重要です。

食品の衛生管理に関する最新技術・製品の情報を集める場として、食品衛生イノベーション展にぜひご来場ください。情報収集や他社と交流する場としての活用も可能です。

食品衛生イノベーション展 東京
2024年11月20日(水)~22日(金)開催



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリア トスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。 昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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