食品衛生監視員とは?国家公務員・地方公務員の仕事内容の違いや資格取得方法を紹介

食品衛生監視員は、食品衛生法に基づいて食品の安全を確保する仕事のひとつです。国家公務員と地方公務員に分けられ、仕事内容や勤務先は採用先によって異なります。

本記事では、食品衛生監視員の概要や仕事内容、資格の取得方法を紹介します。食品衛生監視員に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。



食品衛生監視員とは「食品の安全管理を担う公務員」のこと

食品衛生監視員とは、食品衛生法に基づき、食の安全を確保するために働く公務員をさします。食品営業施設の立ち入り検査や食品関係の指導、衛生の確保・監視・改善を行うことが食品衛生監視員の主な仕事です。

また、食品衛生監視員は、厚生労働省管轄の検疫所で働く「国家公務員」と、各都道府県に設置されている保健所で働く「地方公務員」に分けられます。

国家公務員の食品衛生監視員は、全国的な視点で食品衛生を監視・管理する役割を担っており、特に食品の輸出入に関わる業務が中心です。一方、地方公務員の食品衛生監視員は、地域の飲食店や食品製造施設などを対象にした日常的な監視・指導を主な業務としています。

仕事内容についての詳細は後述します。

食品衛生監視員資格は、特定の職務や職位に任命されるために必要とされる「任用資格」です。一般的な資格のように、試験を受けるだけで取得できる資格ではありません。特定の資格要件を満たす人が公的機関の採用試験に合格し、厚生労働大臣または都道府県知事などにより任命されることで得られます。

なお、厚生労働省検疫所の食品衛生監視員採用は、平成24年度に人事院が新たに創設した専門職試験として実施されています。


食品衛生監視員の役割

食品衛生監視員は、社会にとって極めて重要な役割を果たしています。

食品の製造、加工、流通、販売の各段階で衛生状態を監視し、不適切な状態を早期に発見・是正することで、食中毒や食品関連の疾病の発生を防ぎます。これにより、地域住民の健康を守るとともに、安全な食品の提供を通じて消費者の信頼を確保します。消費者の信頼が高まることで、食品業界全体の信頼性が向上し、経済活動の安定にも寄与します。

また、食品衛生監視員は食品衛生法などの法令を遵守するために、食品関連事業者に対する監視・指導を行います。これにより、法令遵守が徹底され、公正な競争環境が確保されるとともに、不正行為の防止にもつながります。

さらに、国際的な食品安全基準を維持する役割も果たしており、輸入食品や輸出食品の安全性を確保し、国際的な信用を保つ重要な役割も担っています。

食品衛生監視員としてのキャリアは、社会貢献度が高く、専門知識やスキルを活かせる専門職といえるでしょう。


食品衛生監視員・食品衛生管理者・食品衛生責任者の違い

食品衛生監視員と混同しやすい資格に、「食品衛生管理者」や「食品衛生責任者」があります。各資格の概要は、以下のとおりです。

食品衛生管理者は、食肉製品や調製粉乳をはじめとする食品衛生法施行令第13条に規定された特定の食品・添加物の製造または加工を行う施設で専任が義務付けられています。一方、食品衛生責任者は原則全ての食品営業施設で設置が必要です。

また、食品衛生管理者は、食品衛生責任者を兼任できます。食品衛生責任者は、食品衛生管理者を兼任できないため、食品衛生管理者の方が上位資格です。

なお、前述のとおり、食品衛生監視員は公務員で、検疫所や保健所が主な勤務先です。食品衛生管理者や食品衛生責任者は民間企業に勤める点でも、食品衛生監視員と大きく異なります。

食品衛生管理者や似た言葉である衛生管理者については、以下の記事で詳しく紹介しています。気になる方はぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品衛生管理者とは?専任が必要な業種や資格の取得要件をわかりやすく紹介!

▶関連記事:衛生管理者の役割とは?資格の種類や受験資格、選任が必要なケースをわかりやすく解説


食品衛生監視員の仕事内容

食品衛生監視員の仕事内容は、以下の2つの勤務先によって異なります。

  • 国家公務員
  • 地方公務員

それぞれの仕事内容を簡潔に紹介します。


【国家公務員】食品衛生監視員の仕事

国家公務員の場合、全国の主要な海・空港の検疫所をはじめとする、厚生労働省管轄の検疫所で働きます。
主な仕事内容は以下のとおりです。

▼国家公務員の食品衛生監視員の仕事内容

上記の業務を通じて、国内の食品安全を確保し、消費者の健康を守る役割を担っています。


【地方公務員】食品衛生監視員の仕事

地方公務員の場合、各自治体の保健所で働きます。
勤務先や仕事内容は、営業施設の監視や指導、食品の検査など、設置されている部署や配属先によっても異なります。例えば東京都の場合、主な仕事内容は以下のとおりです。

▼地方公務員の食品衛生監視員の仕事内容

国家公務員の食品衛生監視員は全国的な視点で食の安全を守る一方、地方公務員の場合、地域に密着し、食の安全を守ることを主な業務としています。



食品衛生監視員になるためには?

食品衛生監視員になる方法は、国家公務員と地方公務員で手順が似ていますが、応募先や資格取得のための受験資格が異なるケースがあります。

ここでは国家公務員と地方公務員と分けて、受験に必要な資格や試験内容、合格率を紹介します。


国家公務員の食品衛生監視員の場合

国家公務員の食品衛生監視員になるためには、受験資格を満たした上で採用試験での合格が必要です。
国家公務員の食品衛生監視員採用試験概要は、人事院のホームページに詳細が記載されていますが、令和6年の受験資格と試験内容は以下のとおりです。

▼受験資格

▼試験内容

合格率は、人事院で公表されている「試験実施状況」の受験者数と最終合格者数から算出できます。最終合格者数までわかっている2022年と2023年のデータに基づいて計算すると、合格率は以下のとおりです。

▼合格率


地方公務員の食品衛生監視員の場合

地方公務員の食品衛生監視員になりたい場合、各地方団体の採用試験での合格が必要です。受験資格は、各地方公共団体の募集要項に記載されています。

年齢制限や経験要件など、自治体によって受験資格が異なる場合があるため、受験資格や応募要件は事前に確認しましょう。

試験内容も基本的な項目は共通ですが、形式などが自治体によって異なる可能性があるため、受験資格とあわせて確認してください。

東京都の令和6年度の試験案内を例にして受験資格と試験内容を紹介すると、以下のとおりです。

▼受験資格

▼試験内容

合格率は、東京都の場合報道資料で確認できます。平成2022年度と2023年度の合格率は以下のとおりです。

▼合格率



食品衛生監視員の待遇やワークライフバランス

検疫所または地方厚生局で働く国家公務員の食品衛生監視員には、専門行政職俸給表が適用されます。人事院の「令和4年国家公務員給与等実態調査の結果」によると、食品衛生監視員の平均給与は44万4,865円ですが、実際の給与は配属先や手当、勤続年数によって異なります。

地方公務員の場合も、勤務先の自治体や仕事内容、配属先によって異なります。東京都の場合、食品衛生監視員試験案内に記載されている内容を参考にすると、初任給は約23万5,400円です。

厚生労働省では、給与以外の内容として、食品衛生監視員のワークライフバランスの状況も公開しています。公開されているデータの内容は以下のとおりです。



食品衛生監視員の業務で活用できる最新技術

食品衛生監視員は、食品の安全管理と衛生管理を行い、消費者の食の安全を守ります。専門的な知識だけではなく、関係事業者と接する際には専門用語や関連法令をわかりやすく説明するコミュニケーション能力も必要です。

一方、食品の監視や検査ではAIやIoTをはじめとする技術の活用も期待されています。AIやIoTなどの最新技術を活用すると、人間には難しい精度での監視や検査が可能になります。食品衛生監視員の仕事は、国民や消費者の健康を守る重要な役割を果たしているため、高い精度で危険を検知できる最新のシステムを知ることも大切です。

例えば、従来、人毛をはじめとする低密度、非金属異物は、検査装置での検出が難しいとされていました。人による目視検査工程が必要な上、衛生管理に関する基準も煩雑になっており、人手不足が深刻化しています。そこで、近年では衛生管理の高度化のため、「AI食品検査システム」が開発されています。

AIによる機械学習手法をベースとした異物検出アルゴリズムを活用し、作業者や検査員が行っている目視検査の代替ができるシステムの開発が進められ、実際に導入している企業もあります。



食品衛生に関する情報収集なら「食品衛生イノベーション展」へ

食品の衛生管理に活用されている最新技術や製品を知りたい場合は、「食品衛生イノベーション展」にご来場ください。食品衛生イノベーション展は、食品製造業の重要テーマである「食品衛生の課題解決」のための専門展です。

AI・外観検査、監視カメラ、入退室管理、HACCP関連などの商材を持つ、食品業界に関わるメーカーや商社、部門が多く出展・来場します。

品質管理、製造、生産技術、経営・管理に関する情報収集や食品衛生管理に活用できる商材を扱うメーカーとつながる場としての活用でき、事前登録すれば無料で入場可能です。

また、出展側としての参加も可能です。自社製品アピールの場や販路拡大、商談の機会にもご活用ください。

来場、出展ともにメリットがあるので、食品衛生監視員の方や食品衛生管理業務に携わる方は、ぜひこの機会にご来場ください。

■第1回食品衛生イノベーション展
 2024年11月20日(水)~22日(金)
 詳細はこちら



食品衛生監視員の仕事は国民の健康を守る重要な役割を担う

食品衛生監視員は、空港や港、各自治体の保健所で働き、主に食品の検査や業者が法令に従って営業しているかの監視・指導を行います。仕事内容は配属先や部署によって異なりますが、目的は食品の安全を確保し、国民の健康を守ることです。

食品衛生監視員には専門的な知識が求められますが、より効率的で精度の高い管理を目指したい場合には、AIやIoTをはじめとする最新技術を理解することも大切です。

食品衛生管理に興味がある場合は、ぜひ食品衛生イノベーション展にご来場ください。AI・外観検査や監視カメラ、入退室管理、HACCP関連など、食品業界に関わるメーカーや商社、部門が多く出展・来場するため、食の衛生管理に関する知識の収集や製品の比較にご活用いただけます。

食品衛生監視員を目指している方や食品衛生管理業務に携わっている方は、ぜひこの機会にご来場ください。

■第1回食品衛生イノベーション展
 2024年11月20日(水)~22日(金)
 詳細はこちら



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



▼この記事をSNSでシェアする


■関連する記事