食品ロス対策に取り組む企業事例を紹介|世界と日本の現状や取り組むメリットとは

近年、食品製造の現場や一般家庭など、あらゆるシーンで「食品ロス」の言葉を目にする機会も多いのではないでしょうか。しかし、見聞きしたことはあっても、食品ロスの現状を具体的にご存じない方もいるかもしれません。

とりわけ食資源に関わる仕事に携わる企業にとっては、食品ロスの削減が自社の利益を守るのみならず、環境への負荷を減らし、社会貢献につながるなど、大きな意味を持ちます。

本記事では、日本を含めた世界の食品ロスの現状や食品ロスによって引き起こされる影響、食品ロス対策の成功事例を紹介します。企業として食品ロス削減への理解を深め、取り組みたいとお考えでしたら、ぜひ参考にしてください。



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世界と日本の食品ロスの現状

「食品ロス」とは、まだ食べられる食品の廃棄を意味します。WWF(世界自然保護基金)の2021年7月の報告書によると、世界で廃棄されている食料は年間約25億トンです。これは、食料生産量の約40%に相当します※1。

一方、環境省発表の日本で発生している食品ロス推計値は、約461万トンです※2。国民一人あたりに換算すると、毎日おにぎり1個分(約102グラム)の食品を捨てている計算になります※2。

世界では12人に1人が栄養不足で苦しんでいる一方、大量に食品ロスが発生している状況や、食料の多くを輸入に頼っている日本で大量の食品ロスが発生している状況は、解決すべき問題として対策が進められています。

現状を踏まえ、日本やアメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、ドイツなどの各国は、国連の「持続可能な開発目標12.3」の目標に沿って、2030年までに小売・消費段階の一人当たり食品廃棄を半減し、サプライチェーンでの食品ロスの削減を目標に掲げました。目標達成に向けて各国で様々な対策・政策が進められています。日本を含めた世界各国の動向の詳細は後述します。

なお、食品ロスについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

▶関連記事:フードロス(食品ロス)の原因や問題点とは?日本の現状や企業が取り組める対策を紹介



食品ロスが発生する主な原因

食品ロスが発生する主な原因を以下の2つに分けて紹介します。

  • 事業系食品ロスの現状と発生の原因
  • 家庭系食品ロスの現状と発生の原因

より具体的な発生原因を理解するための参考にしてください。


事業系食品ロスの現状と発生の原因

事業系食品ロスの業種別内訳とその割合は下表のとおりです。

食品ロスが発生する原因は、下表のように業態によって異なります。

人的ミスによる食品ロスもありますが、顧客の満足度を高めるための工程が、結果的に食品ロスを生むケースも多く見られます。食品ロスを削減するには流通全体の構造を再編成していく必要があるでしょう。


家庭系食品ロスの現状と発生の原因

家庭系食品ロスが発生する主な原因と割合は下表のとおりです。

消費者庁が徳島県で行った「食品ロスの発生理由を調査したアンケート」では、下記の理由が挙げられています。

家庭での食品ロス発生理由には「買い過ぎ」や「作り過ぎ」などの注意不足の他、「体調不良や子どもの食べ残し」「いただき物が余った」など、予測が難しいものもあります。

家庭でできる食品ロス対策として「必要な分だけ購入する」「保存方法を工夫する」「食材を使い切る」などの心がけも大切です。

なお、アンケート後には、食品ロスに対する意識が高まり、食品ロス削減に向けた行動を意識するようになったと報告されています。



食品ロスによって引き起こされる影響

食品ロスから派生する影響に、環境汚染があります。食品ロスが焼却処理される過程で、温室効果ガスのCO2(二酸化炭素)が大量に排出されます。焼却後の灰を処分するための埋立地も、現在の整備状況のままでは、25年ほどで満杯になる見通しであることも懸念点のひとつです※1。

また、食品ロスはごみとして廃棄する過程で多額の費用がかかる点も大きな問題です。令和5年度のごみ処理事業経費(一般廃棄物処理事業のうち、し尿処理事業経費を除く)は約2.3兆円です※2。国民一人あたりに換算すると年間約18,300円の負担に相当します。

前述のとおり、食品ロスの発生は日本で約461万トンにも及びます※3。世界で、12人に1人が飢餓に苦しむ状況を鑑みても、食品ロスの増大は、貧困や食糧不足につながる可能性もあるのです※4。



食品ロス削減に取り組むメリット

企業が食品ロス削減に取り組むメリットとして、以下2点が挙げられます。

  • コスト削減
  • 企業イメージの向上

メリットを把握することで、より効果的な食品ロス対策ができるでしょう。


コスト削減

食品ロス対策を行うことで、廃棄にかかる処理費用(廃棄物処理代・人件費)を削減できます。

製造段階では、適切な在庫管理を行うことで、仕入れや原材料の無駄を省きコスト削減につなげることができます。また、過剰生産を抑えることで、エネルギーや水の使用量や、物流・廃棄にかかるコストまで削減可能です。

廃棄削減の取り組みは効率的な経営につながるため、収益性の向上に寄与します。さらに、SDGsや法規制への対応を同時に満たすことで、将来的な罰則リスクや余計なコストも回避できます。


企業イメージの向上

日本では「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」が施行され、事業者や消費者に削減努力が求められています。また、国連のSDGs(持続可能な開発目標)では、「2030年までに世界の食料廃棄を半減」が掲げられています。

食品ロス削減は、環境負荷の低減(廃棄物処理や温室効果ガス排出削減)につながるため、国際的にも重要な課題です。企業が法規制へ対応することは、社会的信頼の獲得につながり、ブランド価値が向上します。

食品ロス対策を積極的に行う姿勢は、SDGsや環境配慮を重視する消費者からの支持を得やすいこともメリットです。SDGsへの取り組みを示すことが、投資家や取引先からの評価向上にもつながります。

食品ロス削減への取り組みは、競合との差別化やマーケティング効果として、環境意識の高い層からの共感・ファン化が期待できます。



食品ロス削減に向けた企業の対策

ここでは、食品ロス削減のために企業ができる対策を紹介します。

  • 生産・製造での対策
  • 流通・販売での対策
  • 消費・外食での対策

企業として食品ロス削減の取り組みを検討している方は、ぜひ参考にしてください。


生産・製造での対策

食品ロス削減のために企業ができる生産・製造段階での対策は、以下が挙げられます。

  • 生産量を需要予測に基づいて調整し、余剰在庫を減らす
  • 在庫管理システムを導入し、期限切れを防ぐ
  • 規格外品や形の不揃いな食材を活用した加工食品の製造を行う
  • 副産物や加工時に出る端材を飼料・肥料・エネルギーとして再利用する
  • 製造段階で発生する食品残渣をリサイクルや再加工に回す
  • 保存技術や包装技術を向上させ、賞味期限を延長する

生産・製造段階での食品ロス対策は、コスト削減にも直結するため重要です。

在庫管理や食品残渣のリサイクルについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品工場の在庫管理とは?重要性や課題、業務効率化のアイデアを解説
▶関連記事:食品残渣とは?削減・リサイクルが求められる背景や取り組みの具体事例を紹介


流通・販売での対策

流通・販売において、食品ロス削減を目的として企業ができる対策には、以下が挙げられます。

  • 在庫管理を徹底し、先入れ先出し(FIFO)を徹底することで、賞味期限切れや廃棄を防ぐ
  • 発注ロットや生産ロットを適正化し、需要予測やAIを活用しながら発注量を調整することで余剰在庫や廃棄を防ぐ
  • 消費期限・賞味期限を分かりやすく表示し、誤解による廃棄を減らす
  • 賞味期限が近い商品を値引き販売やセールで消費につなげる
  • 規格外品や見た目に難のある商品を「訳あり商品」として販売する
  • フードバンクや地域団体への寄付で余剰食品を有効活用する
  • 消費者への啓発活動を通じ、食品の無駄を減らす取り組みを周知する

地域団体や消費者なども巻き込んだ対策を行うことで、より効果的に活動を推進できます。


消費・外食での対策

食品ロス削減を目指して企業ができる消費・外食での対策には、以下が挙げられます。

  • 顧客が食べきれない分は、エコ容器で持ち帰れるようにする
  • 小盛りメニューを用意するなど、食べ切れる量で提供する
  • 消費者啓発イベントやキャンペーンを通じ、食べ残しゼロを呼びかける
  • フードシェアリングサービスとの連携による廃棄の削減

企業が対策を継続的に行うことで、顧客にも食べ残しをしない文化が浸透することが期待できます。



食品ロス対策の成功事例

食品ロス対策の成功事例として、以下の5社を紹介します。

  • 株式会社吉野家ホールディングス
  • 江崎グリコ株式会社
  • 株式会社ローソン
  • キユーピー株式会社
  • 味の素株式会社

具体例を知ることで、自社でできる食品ロス対策をよりイメージしやすくなるため、ぜひ参考にしてください。


株式会社吉野家ホールディングス

株式会社吉野家ホールディングスは「食材すべてを無駄にしない」という指針を創業時から掲げ、食品ロス削減を企業ポリシーとして根付かせています。2023年度以降は、全国の自社工場で発生する食品残渣の再生利用率100%を達成しました。

吉野家東京工場では、規格外の玉ねぎ端材(芯など)を乾燥処理し、食用パウダーとしてアップサイクルする取り組みを実施しています。このアップサイクルにより、年間約180トンの食品ロス削減を達成し、廃棄処理費用の削減も実現しました。

牛丼の調理過程で発生する牛脂は1976年から油脂製品として再利用し、全店舗(離島を除く)で100%リサイクルを行っています。また、店舗で出る食べ残し・厨房調理くずなどの残渣を、飼料化・肥料化するなど、食品リサイクルルートで再利用しています。

食品残渣の100%再利用や玉ねぎ端材のアップサイクルなど、廃棄物を新たな資源に変える仕組みを構築した点が、吉野家ホールディングスの成功要因です。

アップサイクルについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:アップサイクルとは?リサイクル・リメイクとの違いや食品業界の事例など詳しく解説


江崎グリコ株式会社

江崎グリコ株式会社は、「Glicoグループ環境ビジョン2050」を策定して、食品廃棄物95%削減を掲げています。

食品廃棄物を生産設備から発生する「フードロス」と売れ残りなどの「フードウェイスト」の二つに分類し、それぞれに対して異なる対策を実施しています。

製造工程においては、原料や製品の過剰在庫を持たないよう需給予測の精度を向上させ、廃棄の発生を抑える仕組みを導入しました。販売の段階では、規格外品・形状不良品(ふぞろい品)を「アウトレット販売」として提供する取り組みを行っています。

従業員に対しては、コンポストを使った生ごみの堆肥化プログラムを実施し、「食の循環」を体感できる環境を整えました。また、消費者へは、保存食(缶入りビスコなど)の賞味期限が切れる前にメールで通知するシステムを提供し、消費を促進する工夫をしています。

製造・販売・消費の各段階でロス削減を徹底し、ふぞろい品販売やリサイクル率95%達成など、多面的に取り組んだ点が江崎グリコ株式会社の成功要因です。


株式会社ローソン

コンビニエンスストア大手の株式会社ローソンでは、「2025年に2018年対比25%削減、2030年に同50%削減」という目標を掲げて、需要予測を活用した適正発注や販売期限の見直しに取り組んでいます。

目標達成に向けて、「発生抑制・再利用・再生利用」を3本柱とした、実践的な食品ロス削減が進められています。

「発生抑制」においては、商品棚の手前にある商品から取る「てまえどり」の啓発や値引き販売による販売期限が近い商品の購入促進、AIを活用した適切な商品発注の実現、長期保存を可能とする商品やパッケージの開発などが導入されています。

さらに、「再利用」においてはフードバンクや福祉施設などへの販売期限を過ぎた商品を寄贈し、「再生利用」においては売れ残った商品の飼料化や肥料化、バイオガス発電などへのリサイクルで、資源の有効活用を試みています。

製造から販売、廃棄の段階にまで及ぶ株式会社ローソンの取り組みは、食品ロスの削減だけでなく、循環型社会の実現にも貢献しているといえるでしょう。


キユーピー株式会社

キユーピー株式会社は食資源を扱うメーカーとして「資源の有効活用・循環」の取り組みを掲げ、食品ロス削減に努めています。

製造工程においては、効率的な製造ラインの配置や商品設計の工夫などにより、食品ロスを徹底的に排除する仕組みが導入されています。さらに、製造・販売・物流の部門間で情報を共有し、需要予測による生産と販売実績とのギャップや流通段階での売れ残りの削減を実現しています。

他にも、キユーピーの独自の低温・高圧処理技術、製造方法やパッケージの改良などを積極的に取り入れ、賞味期限の延長にも取り組んでいます。

また、ユニークなのがパッケージサラダの商品で行われている取り組みです。野菜の収穫量が多い「旬」にあわせて内容量を増やすキャンペーンで、供給過多になりがちな旬野菜を廃棄せず市場に届けることで、食品ロス削減と農業支援の両立を目指しています。



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食品ロス対策の最新技術・製品の情報収集を

食資源を扱う企業が食品ロスを削減するには、まず現状を理解し、その上で具体的な取り組みを実施することが重要です。食品ロスを削減したい、食品ロス削減に関するアイデアを収集したいなら、ぜひ「食品工場Week(旧称:フードテックWeek)」へご来場ください。

食品工場Week(旧称:フードテックWeek)は、食品工場における課題解決のための最新技術やサービス、情報が一堂に出展する展示会です。

また、食品工場Week(旧称:フードテックWeek)内の特設エリア「食の資源循環・環境対応フェア」では、食品ロス削減や工場の環境対応をテーマに、食品残渣のサーキュラー・リサイクル・アップサイクルといった新技術が出展しており、課題解決や技術導入を目的とした多数の食品メーカーや食品関連企業が来場します。

食品業界における食品ロス対策、環境対応に関する最新トレンドがわかるだけでなく、具体的な技術やサービスの導入も検討できるため、ぜひ展示会への参加をおすすめします。

また、食品ロスに関連する製品・サービスを提供している企業は、出展側として参加することができます。自社製品の認知向上につなげられるだけでなく、食品ロス対策の導入・改善を検討している企業とつながる場としてもご活用いただけます。

具体的な商談の実現やリード案件獲得につながる可能性も高いため、ぜひ出展もご検討ください。

来場側、出展側双方にメリットがあるため、食品ロスの取り組みに興味がある方は、ぜひこの機会に食品工場Week(旧称:フードテックWeek)へ足を運んでください。


■第7回 食品工場Week(フードテックWeek)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催




食品ロスの現状を知って対策に取り組もう

食品ロス削減に向けた取り組みは世界的に進められており、日本でも食品ロス削減推進法に基づく基本方針が閣議決定されるなど、政府主導で推進されています。

一般家庭はだけでなく、とりわけ食資源を扱う企業にとって食品ロスの削減は大変重要な課題です。自社の売上を守るためだけではなく、地球環境や社会貢献にもつながる大きな意義を持ちます。

食品ロス削減に向けて、最新情報や対策技術に興味がある方は、ぜひ食品工場Week(旧称:フードテックWeek)にご来場ください。効率的かつ具体的な情報収集や比較検討の機会につながるはずです。出展側としての参加も可能なので、数多くの見込み顧客と出会う場としてご活用いただけます。


■第7回 食品工場Week(フードテックWeek)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催




▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリア トスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。 昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を超え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。


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