食品ロス(フ―ドロス)の現状は世界と日本でどう違う?原因や削減への取り組みを紹介

近年スーパーや飲食店など身近な場所で「食品ロス(フ―ドロス)」の言葉を目にする機会も多いのではないでしょうか。言葉は知っていても、食品ロスの現状がどれほど深刻なのかわからない方も多いかもしれません。

本記事では、日本を含めた世界の食品ロスの現状や、食品ロスによって発生する問題、具体的な食品ロス対策を紹介します。言葉として食品ロスを知っているものの、詳しく理解していない方や、食品ロス削減への取り組みを検討している方はぜひ参考にしてください。



世界と日本の食品ロスの現状

「食品ロス」とは、まだ食べられる食品の廃棄を意味します。FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界で廃棄されている食料は年間約13億トンです。これは、食料生産量の3分の1に相当します※1

一方、農林水産省発表の日本で発生している食品ロス推計値は、約523万トンです※2。国民一人あたりに換算すると毎日おにぎり1個分(約114グラム)の食品を捨てている計算になります※2

世界では10人に1人が栄養不足で苦しんでいる一方、大量に食品ロスが発生している状況や、食料の多くを輸入に頼っている日本で大量の食品ロスが発生している状況は、解決すべき問題として対策が進められています。

現状を踏まえ、日本やアメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、ドイツなどの各国は、国連の「持続可能な開発目標12.3」の目標にならい、2030年までに食品ロスの半減を目標に掲げました。目標達成に向けて各国で様々な対策・政策が進められています。日本を含めた世界各国の動向の詳細は後述します。

なお、フードロスについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

▶関連記事:フードロス(食品ロス)の問題点とは?日本の現状や企業が取り組める対策を紹介


事業系と家庭系別|日本の食品ロスの現状と推移

食品ロスは、食品メーカーや小売店、飲食店で発生する「事業系食品ロス」と、日常生活のなかで発生する「家庭系食品ロス」の2つに分けられます。

日本の事業系食品ロスと家庭系食品ロスの推移は下表のとおりです。

食品ロスが発生する要因は様々です。令和3年度の食品ロス発生要因の内訳も農林水産省や環境省で公表されています。

事業系と家庭系を比較すると、事業系の方が食品ロスは多い傾向にあります。しかし、食品ロス削減のためには、事業者と家庭双方で減らす取り組みが必要です。


食品ロス発生の背景は先進国と途上国で異なる

日本の食品ロス発生状況を紹介しましたが、食品ロスが発生する背景は、先進国と途上国で異なるとされています。先進国は食品の外観を重視する「外観品質基準」が強いことや、小売店での大量陳列や、食品を簡単に捨ててしまえる余裕があることから、食品ロスの発生段階が様々です。

一方、途上国では、収穫技術が低いことや、厳しい気候下での貯蔵が難しいなどの理由から、生産や加工の段階で食品ロスが発生するとされています。



食品ロスが発生する主な原因

食品ロスが発生する具体的な原因を紹介します。

  • 事業系食品ロスの現状と発生の原因
  • 家庭系食品ロスの現状と発生の原因

上記の2つに分けて紹介するので、より具体的な原因を理解するための参考にしてください。


事業系食品ロスの現状と発生の原因

事業系食品ロスの業種別内訳と割合は下表のとおりです。

食品ロスが発生する原因は、下表のように業態によって様々です。

人的ミスによる食品ロスもありますが、顧客の満足度を高めるための工程が食品ロスにつながっている部分も少なくありません。食品ロスを削減するには流通全体の構造を再編成していく必要があるでしょう。


家庭系食品ロスの現状と発生の原因

家庭系食品ロスが発生する主な原因と割合は下表のとおりです。

消費者庁が徳島県で行った「食べられる食品を捨てた理由を調査したアンケート」では、下記の理由が挙げられています。

家庭での食品ロス発生理由には「買い過ぎ」や「作り過ぎ」などの注意不足の他、「体調不良や子どもの食べ残し」「いただき物が余った」など、予測が難しいものもあります。

購入する食材の量や作る量を意識的に調整する他、余った食材を食べ切る工夫も必要です。

なお、アンケート後には、食品ロスに対する意識が高まり、食品ロス削減に向けた行動を意識するようになったとの調査結果も報告されています。


食品ロス削減が求められる理由

食品ロスの削減が求められる主な理由は以下のとおりです。

  • 環境汚染につながる
  • 処理費用の増大につながる
  • 貧困や食糧不足につながる

それぞれ簡潔に紹介します。


環境汚染につながる

食品ロスがごみとして廃棄されて焼却処理される過程では、温室効果ガスのCO2(二酸化炭素)が排出されます。WWF(世界自然保護基金)の報告によると、世界で排出されるCO2のうち、約10%が食料廃棄物処理によるものです。

これは、アメリカとヨーロッパで車が1年間に排出する量のほぼ2倍に相当する量であり、地球温暖化に影響を与え、気候変動の一因とされています。

焼却後の灰は埋め立て処分されており、環境省によると、現在の整備状況のままだと埋立地は20年ほどで満杯になる、とされていることも懸念点のひとつです※。食品ロスは、間接的に様々な環境汚染につながるため、削減が求められています。


処理費用の増大につながる

食品ロスはごみとして廃棄する過程で多額の費用がかかります。令和3年度のごみ処理事業経費(一般廃棄物処理事業のうち、し尿処理事業経費を除く)は約2.1兆円です※。国民一人あたりに換算すると年間約1万7,000円の負担に相当します※。

なお、ごみの処理費用は税金でまかなわれます。食品ロスが増えるほど、廃棄物処理に多くの税金が使われるため、理解しておきましょう。


貧困や食糧不足につながる

世界では約10人に1人が飢餓で苦しんでおり、日本では9人に1人の子どもが食事に困っています。前述のとおり、食品ロスの発生量は世界で約13億トン、日本で約523万トンです。

飢餓に苦しんでいる方が多い一方で、大量の食品ロスが発生している状況は、食料資源が有効活用されていないとして問題視されています。

また、日本では、食費は消費支出のうち4分の1以上を占めているため、食品ロスを減らすことは家計の負担軽減にもつながります。


食品ロス削減に向けた世界や日本の動向

食品ロスの現状を踏まえ、日本を含めた世界中で食品ロス削減に向けた取り組みが進んでいます。世界と日本の動向をそれぞれ紹介するので、食品ロスの現状を理解するための参考にしてください。


世界各国の目標や動向

地球規模で食品ロス削減の意識が高まるなか、2015年に国際連合総会でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。SDGsでは、目標12のなかで食品ロス量の半減が目標と示されています。

アメリカやイギリス、オーストラリア、フランス、ドイツは、SDGsの目標に倣い、2030年までに食品ロス半減を目標としました。ただし、対何年比で半減しようとしているかは国によって異なる他、明言していない国もあります。

各国の食品ロス状況や取り組みは下表のとおりです。

上表の状況を踏まえ、各国では官民で協力した啓発活動の推進が行われています。AIを用いた在庫管理・売上予測ツールの導入などにより、食品ロス削減に取り組んでいる企業も少なくありません。

食品ロスに関する法整備や税制優遇措置は、設けている国と設けていない国があります。消費者庁の資料で公表されている各国の状況は以下のとおりです。


日本の目標や動向

日本は、「2030年度に2000年度比で家庭系食品ロス、事業系食品ロス量の半減」を目標としています。2019年5月には、食品ロス削減の推進に関する法律「食品ロス削減推進法」が全会一致で成立し、同年10月に施行されました。

国・地方公共団体や事業者、消費者等の多様な主体が連携し、国民運動として食品ロス削減に取り組むため、2020年3月には「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」が閣議決定されています。

食品ロス削減推進にあたり求められる行動や役割を詳しく明記しているため、食品ロスに取り組む際に一読すると良いでしょう。

例えば「Ⅱ 食品ロスの削減の推進の内容に関する事項」では、以下の項目に分けて、それぞれが行うべき行動や役割が明記されています。

  • 消費者
  • 農林漁業者・食品関連事業者
  • 事業者(農林漁業者、食品関連事業者以外の事業者を含む。)
  • マスコミ、消費者団体、NPO等
  • 国・地方公共団体

消費者の場合、買い物や調理、食品の保存、外食の際など、状況ごとに取るべき行動が示されています。全文は消費者庁が公表している資料※で閲覧できるので確認してみてください。

また、政府主導の取り組みもあり、2021年度には、2000年度に比べて家庭系食品ロスは56%、事業系食品ロスは51%の削減に成功しています。



食品ロス削減に向けた企業の具体的な取り組み事例

続いては、食品ロス削減のために企業が取り組んでいる事例を紹介します。

  • 規格外食品を廃棄しない工夫をする
  • 需要に応じた柔軟な販売方法を取り入れる
  • 調理ロスを発生させない工夫や呼びかけを行う
  • 製造過程で食品ロスを防ぐ工夫や技術を取り入れる

食品ロス削減の取り組みの実践を検討している方は参考にしてください。


規格外食品を廃棄しない工夫をする

傷や形の不良、獲れすぎなどで廃棄される「規格外食品」は以下の方法で有効活用されています。

  • 生産地の直売店で販売
  • インターネットで販売
  • 加工食品の原材料として活用

規格外の商品でも、「訳あり品」として価格を下げて販売すると売れるかもしれません。消費者庁のアンケートでは、約8割の方が「規格外品等の農水産物を購入したことがある。身近に販売されていれば、購入する人が増える可能性がある」と答えています※。

独自の冷凍技術を使い、規格外の果物をスムージーに使えるようにするなど、工夫によって新しい価値を付けて販売している会社もあるので、工夫次第では新商品の開発にもつながるかもしれません。


需要に応じた柔軟な販売方法を取り入れる

消費者の需要に合わせた販売方法を取り入れると、食品ロスを削減できる可能性があります。小分け販売やばら売りすると、家族構成にあわせて商品を選びやすくなります。

また、クリスマスケーキや恵方巻きをはじめとする、需要の時期が限定的な季節商品は、予約販売にして売れ残りを防ぐと食品ロス削減につながります。AI(人工知能)を活用した需要予測に基づいた販売なども有効です。

体感気温やSNSに投稿されているデータから、販売が見込まれる商品を予測して販売し、成功している事例もあります。


調理ロスを発生させない工夫や呼びかけを行う

飲食店などで発生する食品ロスは、以下の方法で削減が行われています。

  • 野菜の端材を従業員の賄い料理に利用する
  • 余った料理のお持ち帰りサービスを提供する
  • 消費者が料理の量を調整できる工夫をする

食べきった子どもにデザートや表彰状をプレゼントするなどしてイベントとして楽しんでもらい、食品ロスの削減に取り組んでいる企業もあります。


製造過程で食品ロスを防ぐ工夫や技術を取り入れる

食品の製造過程では、以下の工夫が取り入れられています。

  • 包装容器を工夫して賞味期限を延長する
  • 賞味期限の大括り化で廃棄を減らす
  • AIを活用した異物混入検査により廃棄量を減らす

食品ロス削減には、新たな活用法を見つける「リサイクル」より、そもそも食品ロスを発生させないために減らす「リデュース」が優先的に考えられます。

例えば、賞味期限が3ヶ月以上の商品は、消費者庁によって年月表示が認められており、年月表示によって納品済みの商品よりも前の日付の賞味期限である商品を納品できない「日付の逆転」による食品ロスを減らせます。

また、AIで精度の高い異物混入検査を導入すれば、誤検知を防げ、食品ロスを減らせるため、最新技術や製品に関心を持つことも大切です。

異物混入の事例や対策については以下の記事で紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:異物混入対策とは?食品工場・製造現場の事例と原因を解説



「フードテックジャパン」で食品ロス対策の最新技術・製品の情報収集を

食品ロスを削減するには、まず現状を理解した上で具体的な取り組みを実施することが重要です。食品ロスを削減したい、食品ロス削減に関する情報を得たい方はぜひ「フードテックジャパン」へご来場ください。

フードテックジャパンとは、食品製造に関する最新設備やソリューションが一堂に出展する展示会です。今年は「食の資源循環フェア」を新設し、食品ロスの削減をテーマに、食品残渣リサイクルやアップサイクルといった新技術の展示だけでなく、有力企業によるセミナーも併催されます。

食品業界における食品ロス対策、工場の自動化・省人化・DXに関する最新の情報収集が可能ですので、ぜひ展示会への参加をおすすめします。

なお、事前登録すれば無料で入場可能です。出展側として参加し、自社製品のアピールや他社とつながる場としてもご活用いただけます。来場側、出展側双方にメリットがあるため、食品ロスの取り組みに興味がある方は、ぜひこの機会にフードテックジャパンへ足を運んでください。

フードテックジャパンの詳細は以下からご確認いただけます。

■フードテックジャパン東京

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■食の資源循環フェア
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食品ロスの現状を知って対策に取り組もう

食品ロス発生の現状は、世界で約13億トン、日本で約523万トンです。世界各国で食品ロス削減に向けた取り組みが進められており、日本でも食品ロス削減推進法に基づく基本方針が閣議決定されるなど、政府主導で食品ロス削減の推進が行われています。

食品ロス削減に向けて、食品ロスに関する最新情報や対策技術に興味がある方は、ぜひフードテックジャパンにご来場ください。効率的かつ具体的な情報交換や商談の機会につながるはずです。出展側としての参加も可能なので、自社製品アピールの場としてご活用いただけます。

■フードテックジャパン
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▶監修:廣澤 克美(ひろさわ かつみ)

食品ロスマイスタ講師
暮らしの実用書作家(ペンネーム/広沢かつみ)国内・国外にて多数出版。日本専門家検定協会代表理事として食品ロスの啓蒙に努める。2016年度より札幌市環境局ゴミ削減・食品ロス監修。わかりやすい食品ロスや家庭で出来る取り組みなどの講演が好評で各組織団体やJA会員会合などに招聘されている。




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