飲食店で異物混入対策が重要な理由とは?主な発生ポイントや原因、対策方法を徹底解説

飲食業は人の健康や命に関わる仕事であり、異物混入は本来発生してはいけない重大な問題です。飲食店で異物混入が発生すれば、営業停止や法的な罰則を受ける可能性があります。そのため、異物混入対策をはじめとする衛生管理を日頃から徹底することが重要です。

本記事では、飲食店で異物混入対策の徹底が求められている背景や、異物混入によって発生するリスクを紹介します。また、異物混入の原因と対策も紹介するので、飲食店の経営に携わっている方は参考にしてください。




飲食店で異物混入対策の徹底が求められている背景

食品の安全性は消費者の健康を守るために重要ですが、異物混入や食中毒をはじめとする食品事故は毎年発生しています。

これまでの衛生管理は抜取検査が主流で、無作為に選んだ食品の一部を検査する方法がとられていました。しかし、この方法では全ての食品を検査できないため、問題のある食品が見逃されるリスクを排除できません。

こうした背景から、2021年6月には食中毒対策強化のひとつとして原則全ての食品等事業者に対し、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されました。HACCPとは世界的にも導入されている衛生管理手法です。

HACCP方式の衛生管理では、異物混入や食中毒などの発生を未然に防ぐために、特に重要な工程を設定し、それを継続的に監視・記録することが求められます。

しかし、HACCPの義務化後も食品苦情は多数発生しており、2022年度に都内で発生した食品苦情は前年より約11%増加し、4,071件にのぼりました。なかでも異物混入は13.9%(565件)と高い割合を占めています。

異物混入の要因と割合の内訳は以下のとおりです。

異物混入の発生は後述する様々なリスクに発展するため、飲食店をはじめ食品を取り扱う全ての企業が異物混入対策を行うことが求められます。

なお、HACCPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶︎関連記事:HACCP(ハサップ)とは?概要や対象事業者、メリットと注意点をわかりやすく紹介



飲食店が異物混入対策を怠ることで発生するリスク

飲食店で異物混入対策を怠ることで発生するリスクは以下のとおりです。

  • 顧客への健康被害と法的リスク・損害賠償の発生
  • クレームの発生と信用の低下
  • 保健所からの指導・営業停止

それぞれ詳しく紹介します。


顧客への健康被害と法的リスク・損害賠償の発生

食品に異物が混入し、それによって消費者の健康に被害が発生した場合、食品衛生法第6条第4号に違反する可能性があります。この条文では 「不潔、異物の混入または添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」の販売や製造を禁止しています。

違反と見なされた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に科されることがあり、重大な法的リスクを伴います。

また、健康被害が生じた場合には、損害賠償請求に発展する可能性もあります。


クレームの発生と信用の低下

異物混入は、顧客からのクレームにつながる重大な問題です。

近年ではスマホの普及により、異物混入に関する情報がSNSで瞬く間に拡散されるケースも少なくありません。複数の店舗を展開している企業では、異物混入の発覚を受けて全店舗を一時閉鎖し、原因調査と再発防止対策に追われた事例も報告されています。

たった一度の異物混入で顧客からの信頼を大きく損ない、経営に深刻なダメージを与えるリスクがあります。


保健所からの指導・営業停止

保健所には、異物が混入していた食品を摂取したことで体調不良が発生した場合に、相談・通報できる窓口が設けられています。

消費者から通報があった場合、保健所による企業への調査や指導が入る可能性があり、場合によっては営業停止の処分が下されることもあります。

2019年から2023年(令和元年〜令和5年)に東京で発生した食品苦情報告件数と異物混入の割合は以下のとおりです。

異物混入は食品衛生法違反にあたるため、内容によっては営業停止処分を受ける可能性もあります。食品衛生法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶︎関連記事:食品衛生法とは?改正の内容と押さえておくべき重要なポイントをわかりやすく解説


顧客への健康被害と法的リスク・損害賠償の発生

食品に異物が混入し、それによって消費者の健康に被害が発生した場合、食品衛生法第6条第4号に違反する可能性があります。この条文では 「不潔、異物の混入または添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」の販売や製造を禁止しています。

違反と見なされた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に科されることがあり、重大な法的リスクを伴います。

また、健康被害が生じた場合には、損害賠償請求に発展する可能性もあります。


飲食店で発生するリスクがある異物混入の具体例

飲食店で発生するリスクがある異物混入は様々です。具体例として、以下の内容が挙げられます。

  • 毛髪や爪の混入
  • 害虫の混入
  • プラスチックや包装材の混入
  • 設備や器具の欠片の混入
  • 薬剤・洗剤の混入
  • 従業員の私物の混入

それぞれ原因にあわせた対策を行うことが大切です。


飲食店で異物混入が発生する主な原因

飲食店で異物混入が発生する主な原因は以下のとおりです。

以降で具体的な対策を紹介します。


飲食店で異物混入を防ぐための対策

飲食店で異物混入を防ぐための対策は以下のとおりです。

  • 食材の仕入れ時に確認する
  • 加工品仕入れ業者と情報共有する
  • 食材の保管・管理を徹底する共有をする
  • 従業員に指導・教育をする
  • 調理場や器具・設備を衛生的に保つ
  • 害虫の侵入経路を封じる

それぞれ詳しく紹介します。


食材の仕入れ時に確認する

仕入れた食材は目視で確認し、包装の破損や変形、汚れがないかを確認することが大切です。外箱に破損があれば、輸送中に異物混入が発生している可能性があります。

万が一、異物混入が見つかった場合は、すぐに仕入れ業者に連絡しましょう。日頃から仕入れ業者と密にコミュニケーションをとり、異物混入対策の意識を共有する他、衛生管理が行き届いた信頼できる業者選びも重要です。


加工品仕入れ業者と情報共有する

加工品はすでに調理や包装がされた状態で納品されるため、店側が内容物を全て目視で確認することが難しい場合があります。そのため、製造工程での異物混入が見逃されたまま提供されてしまうリスクがあります。

対策として、定期的に仕入れ業者と衛生管理や製造工程について情報共有を行い、管理体制を把握しておくことが有効です。また、必要に応じて仕入れ業者への衛生視察、仕入れ業者の変更も検討しましょう。


食材の保管・管理を徹底する

保管中に異物が付着したり、発生したりするケースもあります。そのため、食材の保管・管理は日頃から徹底する必要があります。

保管場所は常に整理整頓し、衛生状態を保つことが基本です。また、食材に適した温度管理を行うことで、異物の発生を抑えることが可能です。


従業員に指導・教育をする

異物混入対策は設備の整備やチェックだけでなく、従業員一人ひとりの衛生意識も大切です。入社時だけでなく定期的に衛生管理の研修を行い、異物混入の原因や防止方法を従業員に正しく伝えましょう。

具体的には、従業員に対して正しい手洗い方法やタイミングを指導するとともに、作業時に帽子や衛生服の着用を徹底させ、衣類点検を日常的に実施するよう習慣付けることが大切です。


調理場や器具・設備を衛生的に保つ

調理場の清潔さを維持することも重要です。食材に問題がなくても、調理場が不衛生だと異物混入の原因になります。

調理器具や作業台、シンク、換気扇などの設備は、埃や油汚れ、食材カスが蓄積しやすいため、こまめな清掃と点検を行いましょう。

また、設備や器具の塗装の剥がれやネジの緩み、破損があると異物混入が発生する原因となります。そのため、設備や器具の定期的なメンテナンスが重要です。


害虫の侵入経路を封じる

飲食店をはじめとする食材を扱う店舗では、ゴキブリやネズミ、ハエなどの害虫に注意が必要です。店舗の構造的な弱点を把握し、侵入経路を徹底的に塞ぎましょう。

ドアや窓の隙間、配管まわり、排水口、換気口などは害虫の侵入ルートになりやすい部分です。パッキンや網戸、防虫ブラシを取り付けるなどの対策が効果的です。

ただし、侵入経路を完全に断つことは簡単ではありません。店の周囲やゴミ置き場も清潔に保つことを心がけたり、必要に応じて定期的に専門業者に防虫点検や駆除対策を依頼したりすることも有効な手段です。



飲食店で異物混入が発生した際の対応方法

異物混入は注意していても発生する可能性があります。万が一発生した場合に備え、対応の流れや連絡系統を従業員に共有しましょう。

飲食店で異物混入が発生した際の対応の流れと、項目ごとの注意点は以下のとおりです。

なお、食品衛生法や食品表示法に違反しているおそれがある場合には、都道府県知事や保健所へ報告が必要です。



飲食店の異物混入対策に関する有益な情報を得るなら「飲食業界イノベーションWeek」へ

飲食店の異物混入対策や衛生管理対策に関連する製品の比較検討・最新技術の情報収集に興味があるなら、ぜひ「飲食業界イノベーションWeek」にご来場ください。「飲食業界イノベーションWeek」とは、飲食店の悩みや課題を解決する最新サービスやデジタル技術が出展する展示会です。

展示会では、製品・サービスの展示に加え、異物検出・検知装置、外観検査装置、画像処理機器、エアシャワー、殺菌・滅菌装置、防虫・防鼠対策など、食品の衛生管理に有益な最新技術が一堂に出展します。有力企業の取り組み事例や業界トレンドなどのセミナーも開催されるため、飲食業界の品質管理に関する最新情報を得ることが可能です。

さらに、「食品衛生イノベーション展」や「レストランマネジメントEXPO」も併催されます。

「食品衛生イノベーション展」は、衛生管理や安全対策に関する最新ソリューションが一堂に出展する展示会です。AI・外観検査、監視カメラ、入退室管理、HACCP関連、洗浄・殺菌、衛生・クリーン資材など様々な製品・サービスが出展します。

また、「レストランマネジメントEXPO」では、飲食店の経営や店舗管理の課題を解決するための、受発注システム、勤怠管理システム、採用/雇用支援、WEB/SNSマーケティング、炎上・防犯対策など各種サービスが出展します。

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展示会は事前登録すれば無料で入場可能です。関連サービスや製品を扱う企業なら出展側での参加も可能なため、自社製品の認知度向上や、新規リード獲得・営業強化の機会にご活用いただけます。

■飲食業界イノベーションWeek
 会期:2025年12月3日(水)〜5日(金)
 会期:幕張メッセ

詳細はこちら



飲食店の異物混入対策は必要不可欠

飲食店で異物混入が発生することは、本来あってはならない問題です。対策を怠ると、顧客の気分を害するだけでなく、体調不良やケガなどの健康被害を引き起こす可能性もあります。結果として、店舗の信用が低下するだけでなく、法的なリスクに発展し、経営が続けられなくなるおそれもあります。

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展示会では、異物混入対策や衛生管理対策といった飲食店の課題を解決する最新技術や情報の収集が可能です。

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■飲食業界イノベーションWeek
 会期:2025年12月3日(水)〜5日(金)
 会期:幕張メッセ

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▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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