食品衛生法とは?施行規則やポジティブリストなどの改正のポイントをわかりやすく解説
食品業界に携わる場合は、食品衛生法を遵守した経営を行うことが前提です。
食品衛生法は平成30年(西暦2018年)に大改革され、主な焦点は「HACCPの義務化」「新しい食品リコール制度の導入」「ポジティブリスト制度の導入」「罰則強化」です。
これらの改正により、HACCP7原則に基づく体系的な衛生管理や記録の徹底、使用素材の確認、リコール体制整備など、食品衛生法施行規則に定められた具体的な基準への対応が事業者に求められるようになりました。
事業者は、最新の制度運用や告示改正を継続的に確認し、食品安全と信頼性を確保することが重要です。
また、2025年6月からは、食品に触れる器具・容器包装(合成樹脂など)について、リストに掲載された物質のみ使用可能とする「ポジティブリスト制度」が完全施行されました。違反すれば営業停止や罰金、懲役の可能性もあるため注意が必要です。
本記事では食品衛生法の概要や重要なポイント、改正後の内容を紹介します。食品業界に携わるなら理解しておくべき内容なので、ぜひ参考にしてください。
食品衛生法の概要・目的
食品衛生法とは、食を取り巻く環境変化や国際化などに対応し、食品の安全を確保するための法律です。簡単に説明すると、食品事業者が安全な食品を提供するために、食品の製造から販売まで全ての過程で守るべきルールを定めた法律のことです。
飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、国民の健康の保護を図ることを目的としています。まずは、食品衛生法の概要を詳しくみていきましょう。
食品衛生法の対象
食品衛生法は、薬事法に規定する医薬品および医薬部外品を除き、ほぼ全ての食品が対象です。食品添加物や調理器具、容器、包装、乳幼児の口に入る可能性があるおもちゃ、野菜や果物または食器に使用する洗浄剤も対象としています。
食品衛生法の歴史
食品衛生法は昭和22年(西暦1947年)に公布された法律で、社会情勢の変化や食を取り巻く環境の変化とともに改正がなされています。
平成30年(西暦2018年)には、平成15年の改正から15年ぶりの大改革が行われました。国際的な食品安全の基準にも採用されている「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理が義務化されるなど、7つの制度改正が実施されています。
また、平成30年(西暦2018年)の食品衛生法改正により、これまで地方自治体の条例で規定されていた多くの業種の衛生管理基準が食品衛生法施行規則で統一され、全国一律の基準となりました。
食品衛生法施行規則(厚生労働省令)
食品衛生法施行規則は、食品衛生法の具体的な実施基準を定めた厚生労働省令です。
施行規則では「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準が定められており、営業者には以下の対応が求められます。
【営業者に求められる対応】
- 衛生管理計画の作成
- 手順書の整備
- 実施記録の保存
- 定期的な検証と見直し
食品事業者にとって、これらは日常の衛生管理業務における重要な実務指針となっています。
食品衛生法に違反すると罰則も
食品衛生法違反に対する罰則の適用は段階的に行われます。
「HACCPに沿った衛生管理」を導入しないことでの直接的な罰則はありません。一方で、衛生管理に不備がある場合は口頭や書面での改善指導が実施され、改善が図られない場合に営業停止・営業禁止などの行政処分が下される場合があります。
食品衛生法に違反する行為を行うと、最も重い場合で3年以下の懲役または罰金300万円以下(情状により併科)の刑事処分が科される可能性があります(前述は違反者に対する規定であり、法人に対しては別途1億円以下の罰金刑規定があります)。
また、食品衛生法第六十九条の規定により違反者の名称などが公表される場合もあるため、食品事業者にとって深刻な影響を与えるでしょう。
食品衛生法で押さえておくべき6つのポイント
食品衛生法で押さえておくべきポイントは以下の6つです。
- 食品等事業者の責務と努力義務
- 食品および添加物に関する事項
- 器具および容器包装に関する事項
- 表示および広告に関する事項
- 営業に関する事項
- その他の事項
各項目の具体例を食品衛生法から一部抜粋しつつ、簡潔に紹介します。
1.食品等事業者の責務と努力義務
食品衛生法第三条には、食品等事業者の責務と努力義務が定められています。具体的な内容は以下のとおりです。
※出典:e-Gov法令検索「食品衛生法」
食品等事業者には、予防的対策から事後対応まで包括的な責任が求められていることがわかります。そのため事業者は、日常的な安全管理体制の構築、取引先情報の適切な記録・保存、そして万一の際の迅速な危害防止措置という三段階全てにおいて、継続的な管理体制を整備する必要があります。
法違反を犯した場合には、営業許可の取り消しや、内容によっては懲役刑や罰金刑ともなりうるため注意が必要です。
2.食品および添加物に関する事項
食品衛生法第二章(第五条〜第十四条)では、食品および添加物の取り扱いに関する具体的な事項が規定されています。人の健康に有害な食品および添加物は販売や輸入、加工、調理などをしてはならないとする内容です。一例として、第五条、第六条を抜粋して紹介します。
※出典:e-Gov法令検索「食品衛生法」
食品関連事業者は、製造から販売まで全工程において、清潔・衛生的な管理が義務付けられています。腐敗・変敗品、病原微生物汚染品、異物混入品など人の健康を損なう恐れがある食品の販売などが、厳格に禁止されているためです。
そのため、各工程での品質管理と安全性確認を徹底する必要があります。
食品業界の管理についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
3.器具および容器包装に関する事項
食品衛生法第三章(第十五条〜第十八条)では、営業上使用する調理器具や容器、包装の取り扱いに関する具体的な事項が規定されています。第十五条、第十六条を一例に紹介すると、以下のとおりです。
※出典:e-Gov法令検索「食品衛生法」
食品に直接接触する器具・容器包装にも、厳格な安全基準が設けられていることがわかります。また、清潔・衛生的な管理に加え、有毒・有害物質を含む製品や食品に悪影響を与える恐れのある器具・容器包装の使用が全面的に禁止されています。
そのため、調達段階から安全性の確認と適切な管理体制の構築が必要です。
4.表示および広告に関する事項
食品衛生法第四章(第十九条、第二十条)では、表示および広告に関する具体的な事項が規定されています。規定の内容は、「規格または基準が定められた器具・容器包装は、その基準に合う表示がなければ販売や営業上の使用は禁止」や「公衆衛生に危害をおよぼす誇大広告や虚偽の広告は禁止」などです。
そのため食品事業者は、製品の表示内容が法定基準に適合しているかの確認や、広告・宣伝活動での誇大表現や虚偽記載を避けるためのチェック体制の整備が不可欠です。
表示基準に関しての詳細は食品表示法で定められているため、あわせて確認しましょう。
5.営業に関する事項
食品衛生法第九章では、営業上必要な届出に関する事項や、措置、衛生管理を行う上で必要な資格などが規定されています。
例えば、以下の食品を製造または加工する場合、その施設ごとに専任の食品衛生管理者を設置しなければなりません。
- 全粉乳(その容量が1,400グラム以下である缶に収められるものに限る)
- 加糖粉乳
- 調製粉乳
- 食肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するものをいう)
- 魚肉ハム
- 魚肉ソーセージ
- 放射線照射食品
- 食用油脂(脱色または脱臭の過程を経て製造されるものに限る)
- マーガリン
- ショートニング
- 添加物(食品衛生法第13条第1項の規定により規格が定められたものに限る)
届出や資格取得など、食品を取り扱う事業の開始前に準備が必要なものも多いので、よく確認しておきましょう。
食品衛生管理者についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
6.その他の事項
第五章は食品添加物公定書、第六章は監視指導、第七章は検査、第八章は登録検査機関、第十章は雑則、第十一章は罰則に関する事項が規定されています。
第十一章(罰則)を除き、国や都道府県知事などが行うべき措置が規定されている部分がほとんどです。
1〜5と比較すると事業者が注視すべきポイントは少ないかもしれませんが、一部食品関連事業者が行うべき措置も規定されているため、必要に応じて確認しましょう。
食品衛生法の改正で押さえておくべき7つのポイント
平成30年6月13日、食品衛生法等を改正する法律が公布され、世帯構造の変化や健康被害への対応強化、国際標準と整合的な食品衛生管理を行うことを目的として改正が行われています。改正のポイントを大きく分けると以下の7つです。
- 広域的な食中毒事案への対策強化
- HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化
- 健康リスクの懸念がある成分等を含む食品による健康被害情報の収集
- 国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
- 営業許可制度の見直しおよび営業届出制度の創設
- 食品のリコール情報の報告制度の創設
- 輸入食品の安全性確保
それぞれ簡潔に紹介します。
1.広域的な食中毒事案への対策強化
法改正の前年(平成29年)、関東を中心に起こった食中毒事案に対して対応が遅れたことを課題とし、対策の強化が行われました。具体的に定められた内容は以下の3つです。
- 広域連携協議会の設置:広域連携協議会は、国と地方自治体が協力して食中毒事案に迅速かつ効果的に対応するための協議の場です。地域ブロックごとに設置されることで、地域特有の事情に応じた対応が可能になります。
- 厚生労働大臣の役割:厚生労働大臣は広域連携協議会を通じて、全国的な食中毒事案への対応を指揮・調整します。これによって広域的な感染拡大を防止し、迅速な情報共有と対策実施が図られます。
- 行動指針や協力体制の明記:食中毒が発生した際には、具体的な行動指針と協力体制が明確にされているため、関係機関が迅速に対応し、被害を最小限に抑えることができます。
食中毒が発生した際の行動指針や協力体制が明記されました。
2.HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化
食中毒発生件数の下げ止まりを受け、HACCPに沿った衛生管理の制度化が実施されました。
HACCPとは、食品の安全性を確保するための衛生管理手法をさします。
国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会から発表された、国際的にも認められた衛生管理手法です。
HACCPでは、原料の入荷から製品の出荷までの全ての工程で、発生する可能性のある危害要因(生物的・化学的・物理的)を事前に分析し、特に重要な工程を定めて管理します。以下の7つの原則に基づいて運用されます。
【HACCPの7原則】
この手法によって製造中の状態を継続的に管理・記録することで、出荷する製品の安全性を常に確保できます。
HACCPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
3.健康リスクの懸念がある成分等を含む食品による健康被害情報の収集
食品の安全を守るために、事業者は健康被害情報を届け出る制度が導入されました。
これは、ホルモンのような作用を持つ成分が含まれる食品で、製造管理が適切でなかったり、成分の含有量が一定でなかったりするためです。また、科学的な根拠に基づかない摂取量の設定も問題となっていました。このため、平成24年から平成29年までの5年間に223件の健康被害が報告されました。
対象となるのは、厚生労働大臣が「特別な注意が必要」として指定する成分を含有する食品です。2025年9月現在での指定成分は、「コレウス・フォルスコリー」「ドオウレン」「プエラリア・ミリフィカ」「ブラックコホシュ」の4つです。
販売者・製造者は、消費者から健康被害情報を得た場合、その情報を都道府県などの保健所へ届け出ることが義務付けられています。
また、指定成分は、健康被害の状況に応じて追加されることもあります。
4.国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
食品用器具・容器包装の安全性や規制の国際整合性の確保のため、安全が確保されたもののみ使用できるように改正されています。従来は、使用が規制されていない物質であれば原則使用を認める「ネガティブリスト制度」が採用されていました。
改正案では、規格が定まっていない原材料を使用した器具・容器包装の販売などを禁止し、合成樹脂を対象に安全が担保されたもののみ使用可能な「ポジティブリスト制度」に改正されています。
容器等製造業者は、原材料の確認、関連事業者へ規格基準の適合情報提供、製造記録の保存などが必要です。
5.営業許可制度の見直しおよび営業届出制度の創設
HACCPの制度化により、営業許可の対象業種以外の事業者の所在などを把握するため、届出制度が創設されました。また、食中毒などのリスクや食品産業の実態を踏まえ、営業許可業種の見直しも行われています。
常温で保存可能な包装食品のみの販売などを除き、営業者は営業許可または営業届出が必要です。見直しの内容や対象となる業種・営業は厚生労働省のホームページ※で確認できます。
※出典:厚生労働省「営業届出制度の創設」および「営業許可業種の見直しの考え方」
6.食品のリコール情報の報告制度の創設
食品衛生法に違反する、または違反するおそれがある食品を対象に、事業者がリコールを行う場合は、行政への届出が義務付けられました。事業者による食品などのリコール情報を行政が確実に把握し、的確な監視指導や消費者への情報提供につなげ、食品による健康被害の発生防止を目的としています。
7.輸入食品の安全性確保
輸出国で検査や管理が適切に行われた旨を確認し、輸入食品の安全性を確保するため、HACCPに基づく衛生管理や乳製品・水産食品の衛生証明書の添付が輸入要件化されました。従来の内容と改正後の内容は下表のとおりです。
食品衛生法を踏まえた衛生管理にはシステム導入も有効
食品衛生法の改正により、衛生管理の重要性がさらに高まっています。しかし、徹底した衛生管理は人件費の増大につながる他、人員を増やしても人的ミスが多発するかもしれません。
徹底した衛生管理を行う場合は、システムの導入も選択肢のひとつです。最新技術を駆使したシステムを導入すれば、効率的かつ精度の高い衛生管理が期待できます。近年ではAI(人工知能)技術を用いてデータを解析し、温度変動や異物混入など様々な危険因子を検知できる製品もあります。
効率的に安全な食品を製造・提供したい場合は、衛生管理に活用できる最新技術や製品に関する情報を収集し、導入を検討しましょう。
衛生管理や最新技術の情報についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
衛生管理に関する情報収集は「食品工場Week(フードテックWeek)」へ
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なお、食品工場Week(フードテックWeek)の構成展である「食品安全・衛生イノベーション展」では、食品製造業の重要テーマである「食品衛生の課題解決」のための専門展です。
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2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催
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2026年11月18日(水)~20日(金)開催
■食品工場 Weekを構成する展示会/フェア
食品衛生法改正でより高度な衛生管理が求められる時代に
食品衛生法は食品の安全を確保するための法律です。平成30年には社会情勢や食を取り巻く環境の変化を背景に改正が行われました。特に、HACCPに沿った衛生管理の制度化により、全ての食品等事業者に科学的根拠に基づく衛生管理が義務付けられています。今後も時代とともにより安全な食品が提供できるよう、衛生管理の重要性が高まることも予想されます。
食品業界に携わっている方で、衛生管理に関する最新技術や製品の情報を収集したい場合は、ぜひ「食品工場Week(フードテックWeek)」および「食品安全・衛生イノベーション展」にご来場ください。
食品衛生の課題解決につながる最新製品やサービスが多数出展するため、有益な情報や衛生管理に活用できる製品の比較ができます。事前登録すれば無料で来場可能です。
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■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催
■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催
■食品工場 Weekを構成する展示会/フェア
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を超え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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