フォーキャストとは?意味と目的や効果的に進めるポイントを解説
予測される業績と、目標とする業績のギャップに悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
フォーキャストは現状把握や予測に基づき、目標へのギャップを埋めるために使用される経営管理手法のひとつです。
本記事では、フォーキャストの意味や目的を紹介します。実践する際の手順や成果を出すためのポイントも紹介するので、フォーキャストを詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
フォーキャストとは「業績目標管理」のこと
フォーキャストは英語では「forecast」と表記し、直訳すると「予想」「予測」「見込み」などを意味する言葉です。
英単語として使われる場合もありますが、ビジネスシーンでは、事業の予算計画や営業部門の業績目標、製造業の発注計画など様々なシーンで使用されます。
ビジネスシーンでのフォーキャストは「業績目標管理」と呼ばれ、簡略化して「FCST」と表記される場合もあるので覚えておくとよいでしょう。
ビジネスシーンにおけるフォーキャスト管理の意味
フォーキャストはビジネスシーンにおいて、事業部門や企業全体で達成すべき売上などの目標達成見込みを予測することを意味します。予測と目標の間に生まれた差異を予測し、差異を埋めるための対応策や、計画の実行が目的です。
フォーキャストを用いて予測と目標の差異を最小化していくマネジメントを「フォーキャスト管理」と呼びます。フォーキャストが用いられるのは、特定の部門だけではありません。前述のとおり、事業の予算計画や営業部門の業績目標、製造業の発注計画などの様々なシーンで使われ、目的も異なります。
以下では営業部門と製造業に分けてフォーキャストの活用方法を簡潔に紹介するので、参考にしてください。
営業のフォーキャスト
営業部門で実施されるフォーキャスト管理は、業績目標達成の確度を高めるために活用されます。
例えば、現在の売上のままだと最終的な業績の目標達成率は85%と予測した場合、残りの15%をどのように上げていくかの対策を考え、実行していくマネジメント行動がフォーキャスト管理です。予測と目標のギャップを把握し、課題の発見や対応策の策定に役立ちます。
製造業(生産管理)のフォーキャスト
製造業の生産管理の現場で、フォーキャストは的確な生産計画の立案と在庫管理を行い、最大限の利益を獲得できる生産ラインの稼働を目的として用いられます。
製造業のフォーキャスト管理で大切なのは、中長期的な受注や需要の予測です。受注予測や需要見込みに基づき、販売計画や生産計画を立て、生産数や在庫数の他、スタッフの配置などを決定します。
素材や部品製造企業(例:機械、電子)の場合、納入先企業の生産計画の影響が大きいため、それら情報の予測値を事前に入手できる関係を構築し、受注予測の精度を高めることが大切です。
フォーキャストの主な目的
前述したとおり、フォーキャストの主な目的は、事業や部門によっても異なります。部門ごとのフォーキャスト管理の概要と主な目的を簡潔に紹介すると、以下のとおりです。
上表のとおり部門ごとに目的は異なりますが、それぞれのフォーキャスト管理がうまく行けば、事業の効率化及び事業計画の達成と、利益の増大などが期待できます。
フォーキャストの特徴・メリット
フォーキャストは、実践するだけでも様々な発見が得られます。フォーキャストの特徴や実践するメリットは、以下のとおりです。
- 業績目標の達成確度を高められる
- 現状の課題を見つけられる
- 目標達成の指針を部署やチームで共有できる
それぞれ、以下で詳しく紹介します。
業績目標の達成確度を高められる
長期的に目標達成の精度を高められるのは、フォーキャスト管理を行う大きなメリットです。
ただし、フォーキャストを行えば確実に目標を達成できるわけではありません。成功させるためには精度の高い予測データの提供が大切です。予測の精度が低い場合、思ったとおりの結果につながらない可能性があります。
フォーキャストを実践する手順や効果的に行うためのポイントは、後述する内容を参考にしてください。
現状の課題を見つけられる
フォーキャスト管理では予測と目標からギャップを把握するため、目標を達成するために必要なものや、現状の課題を見つけやすくなります。
ギャップを把握して、なぜ目標を達成できないのか、現状にどのような課題があり、どのような行動が必要なのかを明確にします。
これにより、課題を発見して改善点や行動指針を明確にすることが可能です。
目標達成の指針を部署やチームで共有できる
フォーキャストで明らかになった情報や改善点、行動指針は部署やチームで共有できます。情報共有により、各部門で共通認識をもったうえで、目標達成に向けた行動を実践します。
リモートワークなどで部署やチーム内の意思疎通が難しい場合などにも、情報共有のしくみを構築しておけば、部署やチームで目標達成にコミットできます。
フォーキャストを実践する手順
フォーキャストを実践する手順は部門や事業によって異なりますが、大まかな手順・流れは以下のとおりです。
①過去のデータ分析による現状把握
②売上・着地見込みの予測
③差異を埋めるための対策を検討・実施
④結果の分析と改善
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
①過去のデータ分析による現状把握
まずは、現状を把握するために、現在の進捗状況や業績などの確定値のデータ、過去のデータを収集・分析します。
過去のデータは、今後の予測・見込みを立てるための貴重なデータです。高い精度でフォーキャストの効果を得たい場合は、漏れのない過去データの収集と、適切な分析が大切です。
②売上・着地見込みの予測
次に、得られたデータから売上や着地の見込みを予想します。予測を立てるためには、実績データに加えて、過去からの売上げトレンドや市場の動向も考慮することが大切です。
売上・着地見込みを算出して、目標との差異を明確にしましょう。
③差異を埋める対策の検討・実施
現状と目標の差異が明らかになった後は、差異を埋めるための対策を検討します。
対策は、人、物、プロセスなど、多面的な切り口から目標達成までのアプローチを考えます。一面的に捉えるより、効果的な対策を発見できる可能性が高まります。
抽出した複数の課題や対策から、特に改善すべき点や重点的に取り組むべき対策が絞り込めれば、目標達成の確度が高まるかもしれません。
対策が決定した後は、誰がいつまでに何をするかを具体的に決めて実践します。
④結果の分析と改善
対策を実践すれば、フォーキャストが完了するわけではありません。対策を講じて得られた結果を元にして、さらなる改善を長期的な目線で行うことが大切です。
トレンドや市場の動向も常に変化し、一定ではありません。一時的な結果に一喜一憂するのではなく、得られたデータを元に、常に予測をアップデートしながらフォーキャスト管理を進めましょう。
期待する成果が得られない場合、過去データの分析や現状把握、未来予測の精度が低い可能性があります。進展が見られない場合は、手順や対策の見直し、漏れがないかの確認も必要です。
製造業でのフォーキャストを効果的に行うための重要なポイント
フォーキャストを効果的に行うためのポイントを、製造業を例に紹介します。
- タイムリーで精度の高い情報を活用する
- 具体的なKPIを設定する
- 効率化するためのシステムを導入する
製造業以外でも通ずる部分はあるので、フォーキャスト管理の効果を上げたい場合は参考にしてください。
タイムリーで精度の高い情報を活用する
フォーキャストで期待する結果を得るためには、精度の高いデータが大切です。過去データの不足や誤った分析は、失敗につながるため注意しましょう。
例えば、フォーキャスト管理に優れたシステムを導入しても、入力するデータに誤りやミスがあれば、精度の高い予測はできません。反対に、精度の高いデータは改善点や課題を明確化し、予測精度の向上につながります。
過去のデータに加えて、変化するトレンドや市場の動向など、タイムリーな情報の収集・更新も大切です。リアルタイムな情報と、過去のデータを活用すると、精度の高い未来予測が期待できます。
具体的なKPIを設定する
フォーキャストを行うにあたって、具体的なKPIを設定しましょう。KPIとは「重要業績評価指標」を意味し、達成目標の定点観測を行うことで最終目標を達成するためのプロセスを評価するものです。
具体的な売上や達成率など具体的な数値を設定すると、目標に向けた動向を把握しやすくなります。例えばKPIを設定して、現在地と目標値のギャップを把握しながら、活動の修正を行います。
フォーキャストでも、KPIを設定すると達成度合いの把握に役立ちます。中間目標でもあるKPIを定期的に確認すると、目標までのプロセスを具体的に評価・分析しやすくなるためです。
効率化するためのシステムを導入する
フォーキャストの精度を高めるためには、システムの導入をおすすめします。
前述したように、フォーキャストで期待した結果を得るためには、精度の高いデータや未来予測が大切です。人が行うと人的ミスが起こる可能性がある他、タイムリーな情報をすぐに収集・分析するのは難しいかもしれません。一方、人材を増やしても人的コストの増大につながります。
そのため、フォーキャスト管理を効率化する上で、支援するITシステムの活用は欠かせません。近年、生産管理の分野で導入されている自動化・デジタル化ツールのなかで、大きなキーワードとなるのが「DX」や「IoT」です。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル化により社会や生活の形・スタイルに変革をもたらすことをさします。一方、IoTはInternet of Thingsの略で、あらゆるものをインターネットに接続する技術をさす言葉です。IoTはDXを成功させるための手段として、欠かせません。
IoTを活用すると、データを自動的に収集・管理・分析が可能です。例えば、生産管理の現場にIoTを導入すると、可視化しづらいデータの「見える化」や、データの収集・分析の「自動化」が可能になり、棚卸や在庫管理、工程管理なども効率的に行えます。
正確かつ適切な在庫管理ができると、結果としてフォーキャスト管理の精度向上も期待できます。
DXについては以下の記事で詳しく紹介しているため、あわせてご覧ください。
生産管理の効率化で悩んでいるなら展示会への参加もおすすめ
効率的な生産管理でうまく効果を上げられない場合や、効果的な生産管理の方法を知りたい場合は展示会への参加がおすすめです。特に、自社の業界にあった展示会に参加すると、有益な情報を得られるかもしれません。
例えば、食品業界の生産管理であれば、ぜひ「フードテックジャパン」にご来場ください。フードテックジャパンとは、食品製造に関する最新設備やソリューションが一堂に出展する展示会です。
工場の自動化を実現するロボットや、AI・IoTによる生産管理の効率化に特化したシステムなどを見ることが可能です。来場登録をすると無料で出展製品の見学が行える他、出展企業による製品技術セミナーも聴講もできます。
なお、フードテックジャパンでは、出展する側としての参加も可能です。食品メーカーなど全国から関係者が多数来場するため、販路拡大や商談につながる可能性もある他、自社の新製品をアピールする場としての活用もできます。
フードテックジャパンの詳細は、以下のとおりです。
フォーキャストの精度向上には適切な準備が必要
フォーキャストとは、業績目標管理をさします。フォーキャストの目的は、部署や企業、チームで設定した目標達成をより確実にすることです。
フォーキャストを行うと、業績目標達成の確度を高められる他、業務上の課題などの発見にも役立ちます。成功させるためには、AI・IoTなど、フォーキャストをサポートするITシステムの活用も効果的です。
AI・IoT技術は、業界によって様々なものがあります。食品業界で生産管理の効率化に悩んでいる方や、導入されている最新技術に興味がある方は展示会などへの参加もご検討ください。
▶監修:門脇 一彦(かどわき かずひこ)
岡山商科大学経営学部特任教授、キャリアセンター長
國學院大學経済学部兼任講師
1959年大阪市生まれ。神戸大学経営学研究科博士後期課程、博士(経営学)。大手空調企業で機器開発及び業務改革を実践後、ITコンサルタントを担い現在に至る。2021年より現職。経営戦略、技術管理、IT活用、医療サービスマネジメントなどを研究。
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