飲食店(飲食業界)で離職率が高い理由とは?改善に向けたポイントや施策を紹介

飲食店を経営しており、人手不足に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。飲食店は入社率が高い一方で、離職率も非常に高いとされる業界です。

本記事では、飲食店の離職率の現状や、離職率が高い理由について解説します。人手不足の改善や離職防止のための具体的な施策も紹介するので、人材定着に関する課題に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。




飲食店に関連する産業の市場動向や離職率の現状

日本フードサービス協会によると、外食産業では新型コロナウイルス感染症に伴う行動規制の撤廃により、2024年は全体で客単価が上昇し、売り上げが3年連続で前年を上回ったとの調査結果が報告されています※1

コロナ禍からのダメージ回復傾向がある一方で、飲食サービス業は離職率が高い業種であり、慢性的な人手不足に悩まされている業界のひとつです。令和6年上半期の入職率・離職率はともに「宿泊業・飲食サービス業」がトップに位置しています※2

少子高齢化や人口減少に伴い労働者数が減少している状況もあるため、離職率が高い飲食店は、より危機感を持って対策を講じる必要があります。



飲食店の離職率が高い6つの理由

飲食店の離職率が高い主な理由は以下のとおりです。

①賃金の水準が低い
②業務量が多く体力的にきつい
③休暇が取りづらい
④アルバイトやパートが多い
⑤教育体制が整っていない
⑥人間関係の悩みが多い

それぞれの内容を詳しく解説します。


①賃金の水準が低い

飲食サービス業の賃金は数ある業種のなかでも、とくに低い水準です。厚生労働省の資料によると、令和6年の産業別賃金の平均は以下のとおりです。

賃金の低さは離職率が高まる要因のひとつになっていると考えられます

この問題は、単に賃金が「安い」だけでなく、「仕事内容に対して安すぎる」と感じさせてしまう設計にあるでしょう。飲食サービス業は、顧客対応や料理の提供、会計処理や衛生管理などマルチタスクが要求されます。これだけの能力を必要とされるなかで給与が低賃金であることが、相対価値が低いと判断されてしまいます。


②業務量が多く体力的にきつい

飲食店は基本的に立ち仕事であり、ホールやキッチンを長時間歩き回ることが多くあります。納品作業や棚卸し作業に加え、繁忙期やピーク時には通常よりも運動量が多くなるため、ある程度の体力が必要です。

店舗によっては深夜まで営業するため、生活リズムを整えることが難しい場合もあります。また、顧客からクレームが発生すると、精神的な負担がかかることもあるかもしれません。

特に現場の正社員は、現場責任や売上プレッシャー、スタッフ指導など「見えない責任」が積み重なりやすく、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥りやすいのが実情です。アルバイトやパートに比べて労働時間が長く、責任も重いため、体力的にも精神的にもきついと感じやすいでしょう。


③休暇が取りづらい

飲食店は土日や祝日、イベントシーズンや学生の長期休暇期間などが繁忙期になりやすい業種です。家族や友達、パートナーと過ごしたい時に休めないことも少なくありません。

また、厚生労働省のデータでは、有給の取得状況も他の業種に比べて低いことがわかっています。厚生労働省の令和5年の調査結果によると、全産業の有給平均取得日数が10.9日である一方、宿泊業、飲食サービス業の平均取得日数は5.9日でした

休みたい時に休めないことも、飲食店の離職率が高い要因と考えられるでしょう。

また、近年は「自由に時間を使えること」に価値を感じる傾向があります。飲食店は、「繁忙期=世間の休暇」という構造上、自由に休めない職場になりがちです。さらに、有給取得のハードルが高い職場も多くあります。「給与より自由」を求める世代が増えている背景も離職率に関係しているといえるでしょう。


④アルバイトやパートが多い

飲食店は正社員よりもアルバイトやパートタイムが多い業種です。厚生労働省のデータによると、令和元年10月1日現在で「パートタイム労働者がいる」と回答した事業所の割合が最も高かったのは、「宿泊業、飲食サービス業」で87.6%にのぼりました

非正規雇用の割合が大きいことも、離職率の高さに関係していると考えられます。


⑤教育体制が整っていない

教育体制が整っていないことも、離職率が高くなる原因のひとつです。人手不足が慢性化している飲食店では、新たに採用した新人従業員に教育・研修を行う余裕がない場合があります。

飲食店側は「マニュアルを渡せば問題ない」「忙しいから後で教える」が常態化しがちであり、従業員の「質問しづらい」「自分の存在が軽いと感じる」「放っておかれた」といった不満や精神的な負担につながり、離職の引き金になります。


⑥人間関係の悩みが多い

飲食店の職場環境によっては、人間関係の悩みが離職につながるケースもあります。飲食店では学生のアルバイトから年齢の高いフリーター・パートまで、幅広い年代の方が働いています。年齢の違いからコミュニケーションがうまくとれず、不和が生まれるケースも考えられます。

さらに、シフト制で一緒に働く人が日によって変わると、スタッフ同士の関係が深まりにくく、コミュニケーション不足になりがちです。その結果、意思疎通のズレや引き継ぎミスによるトラブルが発生しやすくなり、ストレスが原因で離職につながるおそれがあります。



飲食店の離職率改善・定着率向上のためのポイントと施策

飲食店の離職率改善・定着率向上のためには、以下の施策が効果的です。

●     採用のミスマッチ防止や労働環境の見直し
●     教育システムや評価制度の導入
●     コミュニケーション機会の創出
●     業務効率化・自動化のツールやシステムの導入

それぞれ詳しく紹介します。


採用のミスマッチ防止や労働環境の見直し

離職防止のためには、採用時にミスマッチを防ぐ必要があります。ミスマッチを防ぐポイントとして、求人情報には業務内容や勤務条件、求める人物像を正確かつ具体的に記載することが重要です。

例えば、業務内容に「ホール業務全般」と記載するのは抽象的すぎるでしょう。「お客さまのご案内、注文取り、料理提供、レジ対応、片付け」と業務内容の範囲を具体的に記載すると、認識のズレを小さくできます。

また、労働環境の整備も不可欠です。長時間労働や休日の少なさが離職の原因と考えられる場合には、柔軟なシフト体制の導入や休暇制度の見直し、不要な業務の省略・簡略化を図る必要があります。


教育システムや評価制度の導入

従業員のモチベーションを高めるためには、成長ステップを明確化したり、評価基準を整備したりすることが重要です。業務習得の段階ごとに必要なスキルや知識を体系化する、教育マニュアルやトレーニングプログラムを用意するなどが、具体的な施策として挙げられます。

教育システムや評価制度を導入すれば、従業員は目指す方向性を明確にしつつ、仕事に取り組めるでしょう。

評価制度では、単に評価するだけでなく、成果や努力が昇給やポジションアップにつながるなど、適切に評価が還元される仕組みを整えることも重要です。


コミュニケーション機会の創出

職場の人間関係が円満であれば、離職率の低下につながりやすくなります。そのため、コミュニケーションの機会を意識的に設けることが大切です。

例えば、定期的な朝礼や終礼、スタッフミーティングの実施により、情報共有や意見交換をしやすい環境を整えましょう。また、レクリエーションや懇親会なども、従業員同士の仲を深める手段とのひとつです。

アルバイトやパートが多い職場では、正社員は話しやすい雰囲気づくりを意識し、従業員が気軽に相談できる関係性を築くことが重要です。


業務効率化・自動化のツールやシステムの導入

慢性的な人手不足に悩んでいる飲食店なら、業務効率化・自動化するツールやシステムの導入も効果的です。飲食店の業務効率化に役立つシステム・ツールの一例は以下のとおりです。

●     モバイルオーダー
●     勤怠管理システム
●     受発注システム
●     配膳ロボット
●     キャッシュレス決済

上記のシステムやツールは省人化にもつながります。業務が効率化・自動化できれば、従業員が本来注力すべき接客や料理の提供など「人にしかできない仕事」に集中できる環境が整うでしょう。

飲食店の業務効率化についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店の業務効率化のポイントとは?オペレーション別に役立つツールと導入事例を紹介



「レストランマネジメントEXPO」で飲食店の離職率を改善するためのヒントを得よう

飲食店(飲食業界)に携わっており、離職防止や人材定着に関して悩んでいるなら、ぜひ「レストランマネジメントEXPO」にご来場ください。「レストランマネジメントEXPO」は、飲食店の経営や店舗管理の課題解決につながる情報・サービスが集まる展示会です。

飲食店の業務効率化や管理を支援するため、受発注システム、勤怠管理システム、採用/雇用支援、WEB/SNSマーケティング、炎上・防犯対策などの各種サービスが一堂に出展します。「バックオフィス支援ゾーン」「売上げ/集客UPゾーン」「リスクマネジメントゾーン」の3つの出展ゾーンに分かれており、人手不足の改善や離職防止につながるヒントが見つかるかもしれません。

展示会は事前登録をすれば同時開催展にも無料で来場可能です。飲食店の経営に関する有益な情報を収集する場としてご活用いただけます。

関連製品やサービスを扱う企業なら出展側としての参加も可能です。展示会には飲食チェーンの経営者や管理部門、運営部門の方々が来場します。出展側で参加し、飲食業界に対して自社製品の認知度向上や、商談につながる機会としてもご活用ください。

■レストランマネジメントEXPO 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ

詳細はこちら



飲食店の離職率改善を目指すならポイントを押さえて対策しよう

飲食店は慢性的な人手不足に悩んでいる業界です。人手不足により、従業員の業務負担が増えたり、教育体制を整える余裕がなかったりすると、悪循環に陥ります。離職防止や人材定着に関して悩んでいるなら、原因を理解し、具体的な対策を実施する必要があります。

飲食店で人手不足に悩んでいるなら、ぜひ「レストランマネジメントEXPO」にご来場ください。離職防止・人材定着に関する課題解決のヒントが得られる他、関連企業との商談獲得の機会にもご活用いただけます。来場側、出展側双方にメリットがある展示会なので、ぜひご活用ください。

■レストランマネジメントEXPO 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ

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▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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