ロジスティクスとは?物流・SCMとの違いや仕組み、課題の解決方法をわかりやすく解説
食品業界において、安全で品質の高い食品を消費者へ提供することは大変重要です。特に製造から配送までを担う食品工場では、品質や在庫の管理などの負担が大きく、ロジスティクスの重要性が増しています。
本記事では、ロジスティクスの意味や仕組み、運用上の課題や最適化の手段などをわかりやすく解説します。
ロジスティクスは、経営をより戦略的に進め、企業がさらに成長するために必要な考え方ですので、基本をしっかり確認しておきましょう。
ロジスティクスとは生産から流通までの流れを最適化すること
ロジスティクスとは「原料の調達から生産や加工・保管・梱包・出荷・配送までの物流に関わる工程を効率化・最適化すること」で、食品業界では「ロジ」と略されることもあります。
ロジスティクスで物流の各工程を一括管理すると、「在庫を持ちすぎて廃棄が増える」「必要な商品が足りず販売機会を逃す」「無駄な配送や保管コストがかかる」といった問題を防ぐことができます。
その結果、コスト削減・食品ロスの削減・安定した供給につながり、現場の負担も軽くなることで業務の効率化が可能になります。
ロジスティクスと物流の違い
ロジスティクスと似た考え方に「物流」があります。物流は「作られた商品を保管し、運び、届けるまでの動きそのもの」をさす言葉です。
食品でいうと、「冷蔵倉庫での保管」「トラックでの配送」「店舗や卸先への納品」といった「運ぶ・保管する」部分が物流です。
一方、ロジスティクスは物流を一括管理し、最適化するところまでを包括しています。
物流だけでなく、「原材料の仕入れ量の調整」「製造計画の立て方」「在庫の持ち方」「賞味期限や温度管理のルール」までを含めて考えます。
物流は生産工程を含みませんが、ロジスティクスは商品が作られてから届くまで全体を見るため、原材料の調達を含む点も違いです。
食品業界では、賞味期限や温度管理といった制約が多いため、物流だけでなくロジスティクス全体を考えることが特に重要になります。
ロジスティクスとSCM(サプライチェーンマネジメント)との違い
ロジスティクスと似た言葉である「SCM」は、サプライチェーンマネジメントの略で、ロジスティクスより広い概念をさします。
SCMは、「原材料の調達、生産、流通全体(サプライチェーン)を管理し、関わる企業全体で最適化を目指す考え方」です。
ロジスティクスは自社内での最適化をさしますが、SCMは企業をまたいだ最適化をさす点が異なります。
ロジスティクスの仕組み
ロジスティクスに含まれる主な要素は以下のとおりです。
- 在庫管理
- 倉庫管理
- 受注・出荷管理
- 販売後のサポート
在庫管理や出荷から顧客の手元にわたるまでのサポートなど、全体を同期化して総合的にマネジメントするのがロジスティクスです。
ロジスティクスによって各工程の業務効率化を行えば、必要な商品を必要なタイミングで必要な場所へ、迅速に出荷できるようになるでしょう。この仕組みは、食品工場などの製造業には欠かせません。
在庫管理についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
ロジスティクスはなぜ重要とされているのか?
ロジスティクスは、売上をはじめとする企業課題の解決に役立つため、重要視されています。
例えば、ロジスティクスの導入によって、正確に素早く必要な商品を届けられるようになれば、売上や顧客満足度の向上につながるでしょう。
また、様々な工程を一元化して管理できるため、工程間のコミュニケーションエラーによるトラブルの回避にも有効です。
全体を見て改善すべきところを見つければ、企業課題を解決しやすくなるかもしれません。
ロジスティクスの目的
ロジスティクスを導入する目的は、以下のとおりです。
- 商品の品質を維持したまま届ける
- 過剰在庫やムダな生産を減らす
- コストを削減する
- リードタイムを短縮する
- 営業を支援する
それぞれ解説します。
商品の品質を維持したまま届ける
ロジスティクスのもっとも重要な目的とされるのが、品質を維持しながら、顧客の元へ求められる商品を届けることです。
とりわけ食品には、商品ごとに適した温度や湿度、衛生環境があり、商品の品質維持にはこれらの管理が欠かせません。
厳格な温度管理が必要な生鮮食品や冷凍食品などの商品は、コールドチェーン(低温物流)を取り入れ、低温や冷蔵、冷凍での配送を確立する必要があります。
過剰在庫やムダな生産を減らす
ロジスティクスを活用すると、商品の過剰在庫やムダな生産を減らせます。
リアルタイム管理で各工程の状況が見えれば、商品が消費者に届くまでの流れのムダが明らかになり、そこを改善することでムダがなくなるためです。
全体で在庫を共有すれば、各パートで余剰在庫を持ちすぎることがなくなり、受注予測の精度が上がります。欠品防止にもなり、管理しやすくなる点もメリットです。
コストを削減する
輸送費や在庫の削減により、企業全体のコスト削減につながります。必要な物を必要なタイミングで作って輸送できれば、保管費も削減できるでしょう。
全体を管理することで、生産数が足りない、配送が遅れるなどのトラブルも減り、機会損失も防げます。
リードタイムを短縮する
ロジスティクスによって必要な時に必要な物を生産して流通できるようになれば、生産全体のリードタイム削減になります。顧客まで円滑に商品が届くようになり、顧客満足度の向上につながるため、ビジネスの収益性がアップするのもメリットです。
急な需要増加にも速く対応できるようになり、ビジネスチャンスをいち早くつかめるようになるかもしれません。
営業を支援する
ロジスティクスによって、商品の在庫や動向が営業にも可視化されます。営業担当者が各商品の在庫数量を把握した上で戦略を立てられるため、商品を売りやすくなるのもメリットでしょう。
小規模な営業所や企業では、営業が在庫管理を兼ねている場合もあります。ロジスティクスによって営業と在庫管理を分離すれば、本来の「営業」の業務に集中できるなどのメリットもあります。
ロジスティクスを取り巻く課題
ロジスティクスに関連する課題には、以下のようなものが挙げられます。
- 人手不足
- ニーズの多様化
- 物流コストの上昇
- コールドチェーン(低温物流)の維持にかかる長期的負担
- 環境負荷の増加
それぞれ詳しく解説します。
人手不足
労働年齢人口の減少が課題になっている今、特に輸送を担うドライバーの人手不足が深刻化しています。その他、流通や製造の現場でも人手が少ない状態です。
人員確保が急務ですが、少ない人員でも負担を最小限にして現場が回せるように、まずは業務効率化を図る必要があります。
ニーズの多様化
ニーズの多様化により、必要工数が増えていることも課題です。生産の現場では、様々なニーズに応えるため、多品種小ロット生産が求められるようになりました。これにより、必要な原材料数や生産の段替えが増えて管理の手間がかかっています。
また、配送する商品数の増加による輸送効率の低下や管理コストの増加も問題です。ECサイトなどから個人の注文が増えることにより、配送時間指定を加味した輸送ルート作成にも負担がかかっています。
その他、配送件数や商品が増えることで、誤配送のリスクも高まるでしょう。
物流コストの上昇
輸送コストの占める割合が上がったことにより、物流全体のコストも上昇しています。物流コストは上昇傾向にあるため、物流の効率化が急務です。
日本ロジスティクスシステム協会の調べによると、2024年度に物流業者から値上げ要請を受けた企業は91.7%であり、さらなるコスト増が予想されます。
ロジスティクスで物流の工程を最適化しなければ、利益率を圧迫したり、商品値上げが顧客離れの原因になったりするかもしれません。
コールドチェーン(低温物流)の維持にかかる長期的負担
前述のとおり、温度管理の難しい生鮮食品や冷凍食品をはじめ、多様な食品の品質を保ちながら広範囲に流通させるには、コールドチェーン(低温物流)の活用が欠かせません。
しかし、温度や湿度を厳格に管理できる倉庫やコンテナ、配送手段を維持するには、常温下の物流よりコストがかかります。さらに、コールドチェーンに対応する工場や倉庫は、通常のものに比べて老朽化が早く、耐用年数が短いとの指摘もあります。
他にも、管理すべき情報が増えることに伴う、人手不足や人件費の負担も考慮すべきでしょう。
環境負荷の増加
環境負荷の増加も課題のひとつです。運輸部門(車・船舶など)のCO2排出量は年々減少傾向にあるものの、トラックを含めた車のCO2排出は依然として社会問題となっています。
積載効率やルートの見直しを行い、さらなる環境負荷の低減が求められます。
ロジスティクスを最適化する手段
ここからは、ロジスティクスの課題解決に役立つ主な手段を4つ紹介します。
- IoTの活用
- AIの導入
- ロボットによる自動化
- トレーサビリティシステムの導入と情報連携
それぞれ詳しく見ていきましょう。
IoTの活用
IoTを導入して受発注や生産を管理する基幹系システムと連携すると、ロジスティクスに関わる全体の状況をリアルタイムに可視化できます。
IoTとはInternet of Thingsの略で、あらゆるモノをインターネットに接続する技術のことです。IoTの活用により、生産状況や在庫数、輸送状況の全体が見えるため、より効率的に管理できます。また、情報の連携が取りやすくなり、作業を効率化できる点もメリットのひとつです。
例えば、IoTを活用したモニターやラベル、インジケーターなどを使うと、適切な在庫管理を容易に行えます。
商品の保管場所と数量を把握できる他、温度や湿度をリアルタイムで把握することも可能なため、食品の品質に関わる鮮度や衛生面も効率的に管理できるでしょう。人手に頼らずに済むため、ヒューマンエラーの軽減や運用コストの削減にもつながります。
AIの導入
AIを導入することで、迅速で的確な意思決定をアシストします。AIは、Artificial Intelligenceの略で人工知能をさし、人間の知能を再現したコンピューターの技術です。
現在AIは、ルートの最適化や需要予測、生産計画の最適化などで活用されています。
ロボットによる自動化
ロボットによる自動化も、ロジスティクスの課題を解決する手段です。製造工程や物流管理にロボットを導入し、自動化すると工数を削減できます。
人為的ミスを減らせるのも、ロボットを導入する強みです。
自動化についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
トレーサビリティシステムの導入と情報連携
ロジスティクスの最適化には、トレーサビリティを明確にすることも重要です。
トレーサビリティとは、原材料や商品がいつ・どこで・誰によって製造されたのか、顧客に消費されるまで(あるいは廃棄されるまで)の道筋を記録することです。
トレーサビリティシステムを確立すれば、ロジスティクスの各工程が追跡可能になるため、食品の賞味期限・消費期限や品質の適正な管理に役立ちます。
具体的には、原材料や商品に紐づいたロット番号から、原材料の入荷や商品の製造、賞味期限や消費期限、出荷の履歴などを把握することが可能です。
万が一、商品の配送でトラブルが起こっても、トレーサビリティシステムを導入しておけば迅速に原因を究明し、然るべき対応を取ることができます。
トレーサビリティについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
食品業界でロジスティクス革新を目指すなら「食品工場Week(フードテックWeek)」へ
ここまで解説してきたとおり、ロジスティクスの課題解決には、システムやロボットの導入など、技術の活用が重要です。しかし、ロジスティクスの実現を考えた時、「何から取り組むべきか」、「自社にあった課題解決方法は何か」と悩む企業も多いのではないでしょうか。
自社に役立つ情報を集めたいなら、「食品工場Week(フードテックWeek)」へご来場ください。食品工場Week(フードテックWeek)は、食品工場の課題を解決するための最新技術・サービス・情報が一堂に集まる展示会です。
展示会では、「食品工場の安全対策・環境改善フェア」や「食の資源循環フェア」など現場環境の改善を支援するエリアの他、新たに「食品のコールドチェーンフェア」を開催します。今後の食品業界になくてはならないコールドチェーンの最新情報や技術を知ることができる絶好の機会となるはずです。
なお、展示会は事前登録を行えば、無料でご入場いただけます。
また、関連サービスや製品を扱う企業であれば、出展側でのご参加も可能です。自社製品の認知度向上の場として活用できるだけでなく、食品メーカーの工場関係者と直接つながる機会として活用できます。
具体的な商談の実現やリード案件獲得につながる可能性も高いため、ぜひ出展もご検討ください。
■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催
■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催
■食品工場 Weekを構成する展示会/フェア
ロジスティクスを改善して企業課題を解決しよう
ロジスティクスは、コスト削減や過剰在庫の軽減、営業支援など多岐に渡って影響を与えるため、確立すれば経営課題の解決につながります。現在課題を抱えている企業では、ロジスティクスの見直しがおすすめです。
ロジスティクスの改善には、IoTの活用の他、AIの活用やロボットの導入などの手段があります。技術の活用による業務効率化を目指すなら、最新情報を得ることが課題解決の第一歩となります。在庫管理や物流などに課題を感じている方は、まず展示会などに参加して情報収集からはじめるといいでしょう。
自社に合った改善方法や最新の取り組み事例を知るには、展示会の活用も効果的です。「食品工場Week(フードテックWeek)」および「食品のコールドチェーンフェア」では、現場改善のヒントとなる最新技術やサービスを知ることができます。
ぜひご来場いただき、職場環境改善の推進に役立ててください。
■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催
■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催
■食品工場 Weekを構成する展示会/フェア
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリア トスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。 昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を超え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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