食品業界が抱える人手不足の原因とは?日本の現状と企業が取り組める対策を解説

多くの日本企業が抱える大きな課題のひとつが、人手不足です。少子高齢化による労働人口の減少などが影響し、人手不足は深刻な問題となっています。

企業で慢性的に人が足りない場合、企業側にも社員側にも様々な悪影響がおよぶ可能性があるため、企業のさらなる発展のためにも、早めに対策を講じることが重要です。

本記事では、日本の人手不足の現状と原因、人手不足によって生じる影響などを解説します。記事の後半では、人手不足を解消するための実践的な対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。



なぜ日本では人手不足が起こっているのか?

そもそも、なぜ日本では人手不足が続くのでしょうか。以下では、人手不足の解消に取り組む前に知っておきたい、日本で人手不足が起こっている現状と原因を解説します。


人手不足の現状

「人手不足」とは、企業で働く人数が足りない状況をさします。現在の日本では、人手不足が深刻な課題です。

帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」のデータによると、正社員が人手不足だと感じる企業の割合は51.4%と、半数を超えています。さらに、非正社員が不足していると感じる企業の割合は30.7%です※。

このデータからも、人手不足は多くの企業が抱える課題であることがわかるでしょう。人手不足が慢性化すると、企業がスムーズに業務を進められないなどの不都合が生じます。

※出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)


人手不足の原因

現在の日本で人手不足が起こっている原因は、ひとつではありません。人手不足には、人口減少をはじめとした以下のような幅広い要素が関係していると考えられます。

  • 生産年齢人口の減少
  • 地方格差
  • 業種による需要のギャップ

近年の日本では、少子高齢化による人口減少が加速しています。将来的には、社会の生産活動を担う中心となる「生産年齢人口」も大幅に減少する見通しです。

人口減少による生産年齢人口の減少が人手不足を引き起こしており、今後はますます労働の需要に対して生産年齢人口が足りない状態となることが懸念されています。加えて、人材は都市部に集中する傾向にあるため、地方の人手不足はより深刻です。

また、業種による需要のギャップが大きく、人気がある仕事に人材が集まるのも、人手不足を加速させる原因です。

有効求人倍率(仕事を求める人材1人あたりの求人数を示す値)は、現状1倍を上回る状況です。いわば「求職者が企業を選べる」状態であり、一部の業種に人材が集まる一方、求人を行ってもなかなか人が集まらない業種も少なくありません。



近年は食品産業の人手不足が深刻化

業種によって求職者との需要にギャップがあるのは前述のとおりですが、特に人手不足に悩む産業のひとつが食品業界です。

富士電機株式会社が行った調査によれば、人手不足を感じる食品製造企業は75%を超えます。さらに、飲食店の人手不足も深刻であり、先に参考とした帝国データバンクの資料では、非正社員の人手不足を感じる業界1位は「飲食店(85.2%)」でした※。

食品業界の人手不足が慢性的に続くのは、アルバイトなどの非正規雇用が多いことが理由に挙げられます。非正規雇用者は短期間で離職するケースも多く、採用した人材が企業に根付かない点が課題です。

加えて、賃金が比較的低く廃業率が高い傾向のため、業界を避ける求職者も多いと考えられます。

飲食店の人手不足について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店が人手不足になる理由とは?7つの原因ともたらす影響や解決策を解説

※出典:富士電機株式会社「食品製造業における人手不足の実態調査



人手不足が企業に与える影響

人手不足の状況を解消できなければ、企業に様々な悪影響がおよびます。ここからは、人手不足が企業に与える影響について解説します。


さらなる離職につながる

人手不足に陥ると、働く従業員の負荷が増加します。業務過多で働きにくい職場になると、徐々に従業員の不満が増し、結果としてモチベーションの低下にもつながるでしょう。

やがてやりがいを見失い、忙しい職場で働きたくない従業員が離職し、さらなる人手不足につながるリスクがあります。

また、企業側からすると、少ない人数で従業員の残業時間が増え、それに伴い時間外手当などの費用が増加する点も、人手不足による悪影響といえるでしょう。


需要に対応できず機会損失が発生する

働く人材が足りないと、処理できる業務量も減ってしまいます。その結果、需要に対応できなくなり、依頼を断らざるを得ないケースが出てくるかもしれません。

例えば、食品製造企業の場合、指定された数量を納入できない事態が長期間続くと、別の企業に発注先を変えられる可能性があります。こうした機会損失が増えると売上が伸ばせず、企業の成長を妨げることになるでしょう。

人手不足に伴い、既存事業への対応が厳しくなると規模縮小につながることが懸念されます。一方、既存事業への対応だけに人材を回すと、新規事業への挑戦が難しくなります。


採用コストが増す

企業で人手不足を感じる場合、人材をいち早く採用したいと考えるでしょう。しかし、採用しても早期離職のケースが続くと、常に採用活動を行うこととなり、採用コストの増加を招きます。

有効求人倍率が高い状態での採用は「売り手市場」であり、人材の確保に苦戦するため、採用活動が長期化しやすい点も課題です。

人手不足が慢性化すると、長期間採用の広告を出したり、採用活動を継続したりする必要があるため、採用のための費用がかかり続けます。



人手不足が社員に与える影響

人手不足を解消できない場合、企業だけでなく従業員にも悪影響がおよびます。ここでは、働く社員側におよぶ影響に関して具体的に説明します。


時間外労働が増える

人手不足の状況では、以下のような状況に陥る可能性があります。

  • 休憩時間を取れない
  • 有給休暇が取得できない
  • 休日出勤が発生する

1人の業務量が増加するため、企業が掲げるノルマ・目標を達成するために、時間外労働が増える懸念があります。時には、休日出勤をして対応しなければいけないケースもあるでしょう。

また、時間外労働が増えると日々の疲労が蓄積します。この状況が続けば、心身の不調に陥り十分なパフォーマンスを発揮できなくなり、場合によっては休職者が増えるかもしれません。

結果として、これまで以上に業務をこなすのに時間がかかり、他の従業員の時間外労働もさらに増える、といった悪循環に陥る可能性があります。


職場の雰囲気が悪くなり働きづらくなる

業務量が多く時間に余裕のない職場では、緊張感のある空気が流れて雰囲気が悪くなりやすいです。自分のことで精一杯になると、従業員同士で思いやる余裕がなくなり、お互いのことを知る会話も少なくなります。

こうして周囲とコミュニケーションが取りづらくなると、誰にも相談したり質問したりできずに、仕事の効率が低下します。職場の居心地が悪くなると、離職を考える従業員が増えることにもつながるでしょう。


スキルアップの時間が取れなくなる

人手不足の職場では、自分が成長するためのスキルアップの時間がなかなか取れません。今できる業務をこなすだけで精一杯になるためです。

そのままでは、数年後に振り返った時、「できることが変わっていない」事態を招くことにつながりかねません。自分自身の成長が実感できないと、キャリア形成もしづらくなります。

また、時間に余裕がない職場では、先輩社員の退職時に上手くスキル伝承が行われないことで、若手社員に熟練の能力が伝わらず、組織能力が低下し、これまでどおりに業務が実行できない可能性があります。その結果、業務品質の低下や顧客信頼度の低下、個人の業務負担の増加など、長期的な状況の悪化を招く可能性があります。



企業の人手不足を解消する方法

ここまで紹介した人手不足によるリスクを避けるためにも、人手不足は早急に解消したい問題です。ここからは、人手不足の状況を断ち切るために企業が取り組める方法を紹介します。


人事制度の見直しを行う

「入社したい」「長く働きたい」と思われる職場を作るためには、待遇の見直しが有効です。賃金が高く福利厚生が充実している企業であれば、多少大変なことがあっても「続けたい」と思う理由になります。

また、従業員それぞれの事情を考慮して、働きやすい環境を作ることも大切です。具体的には、産後に戻りやすい仕組みを作る、介護手当を設ける、テレワークを推進するなどの対策が挙げられます。

様々な事情を抱えた従業員が勤務しやすい仕組みを整えれば、離職を減らすことにつながるだけでなく、新しい従業員が入社する理由にもなるでしょう。


採用の間口を広げる

人手を確保する方法として、採用の間口を広げるのもひとつの手段です。例として、以下の人材の雇用の検討などが挙げられます。

  • 定年した方を再雇用する
  • 外国人人材を雇用する
  • シニア人材を雇用する

定年を迎えた年齢でも、まだまだ働く意欲がある方は多くいます。定年後の再雇用を促進すれば、育成の手間がかからずスキルも高いため、即戦力として活躍してくれるでしょう。

また、外国人人材の雇用に積極的に取り組む企業も多数あります。日本で働く外国人労働者の数は年々増え続けています。日本で働く意欲ある外国人労働者を採用すれば、職場全体の活性化にもつながるかもしれません。

シニア人材の採用では、人手不足の解消だけでなく、若手社員のサポートとして活躍する期待ができます。専門知識が必要な業界であれば、スキルを持ったシニア人材は、即戦力として業務を行い、若手社員の育成を担うことも可能です。

 

業務の自動化・効率化に取り組む

人手不足を解消する手段は、人材を集めるだけではありません。機械による自動化を推進し、作業工程の無駄を削減して人員を減らす「省人化」を実現する考え方もあります。

例えば、業務を効率化できるシステムを導入したり、配膳・梱包などを担うロボットを取り入れたりすれば、従業員はコアな業務に注力できます。

また、長期的な視点では、デジタルツールを用いたDXの推進も有効です。DXとは、ITを活用して業務を効率化するなど、変革を進める取り組みです。

例として、紙とペンで行っていた会計業務をパソコンのソフトを使った自動処理に変更すれば、作業時間が減って生産性の向上につながります。



食品工場の自動化・DXで人手不足を解消するなら「フードテックジャパン」へ

人手不足を直近の課題として抱えており、すぐにでも解消したいと考える企業は多いと思います。

特に食品業界では、人手不足が深刻化しています。人手不足の解消を目指す食品業界の企業の場合、先端テクノロジーを活用することで、業務の効率化が図れて人手不足の解消につながります。

自動化・DX推進に向けたヒントがほしいなら、ぜひ「フードテックジャパン」に来場してはいかがでしょうか。フードテックジャパンは、食品製造に関する最新設備やソリューションが一堂に出展する展示会です。

フードテックジャパンには、食品製造に関係する企業が新製品などを出展しています。最新技術の比較をしたり、最新設備を実際に目で見て確認したりできるため、様々な新発見があるでしょう。

なかにはAIを活用したITソリューションの出展もあり、デモを見ることも可能なため、DXを進めるきっかけの一歩となるかもしれません。

また、大手食品メーカーによるセミナー・講演も多数開催予定で、他社の成功事例から学べるのもメリットです。

WEBの来場予約を行えば、無料で入場可能です。

なお、フードテックジャパンには出展者側として参加する選択肢もあります。食品関連企業が多数集まる場で、自社の製品を直接アピールできる他、導入を前向きに考えている企業との商談も行えます。

過去の参加者からは「会期後すぐに受注を獲得できた」などの声もいただきました。幅広い企業との関係性を築くきっかけとなり、案件の獲得につながる期待もできます。

来場者側と出展者側、それぞれ詳細は以下よりご確認いただけます。

フードテック ジャパン 東京
2024年11月20日(水)~22日(金)開催

フードテック ジャパン 大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)開催



人手不足の悪影響は大きい!早めに対策をはじめよう

人手不足の解消は、多くの企業が悩む深刻な問題です。人手不足が解消できなければ、職場の雰囲気が悪化したり、従業員に無理を強いたりする原因になります。

環境などの悪化は従業員の離職にもつながるため、人手不足に悩んでいるなら、早めに対策に取り組みましょう。

人手不足を解消するには、人事制度の見直しや採用の間口を広げることが有効です。加えて、DXを進めて業務の自動化・効率化に取り組む方法もあります。

業務の自動化・DXにより人手不足解消を目指すなら、多くの食品関連企業が集まる展示会に参加するのも選択肢のひとつです。

フードテックジャパンの詳細は以下のとおりです。



▶監修:門脇 一彦(かどわき かずひこ)

岡山商科大学経営学部特任教授、キャリアセンター長、國學院大學経済学部兼任講師
1959年大阪市生まれ。神戸大学経営学研究科博士後期課程、博士(経営学)。大手空調企業で機器開発及び業務改革を実践後、ITコンサルタントを担い現在に至る。2021年より現職。経営戦略、技術管理、IT活用、医療サービスマネジメントなどを研究。



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