人手不足はなぜ起こる?食品業界(食品製造業)の現状や原因、企業が取り組める対策を解説

多くの日本企業が抱える大きな課題のひとつが、人手不足です。少子高齢化による生産年齢人口の減少などが影響し、人手不足は深刻な問題となっています。

食品工場をはじめとした企業で慢性的に人が足りない場合、企業側にも社員側にも様々な悪影響がおよぶ可能性があります。企業のさらなる発展のためにも、早めに対策を講じることが重要です。

本記事では、人手不足の定義から日本の現状や原因、人手不足によって生じる影響などを解説します。記事の後半では、人手不足を解消するための実践的な対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。




人手不足とは?

そもそも、なぜ日本では人手不足が続いているのでしょうか。以下では、人手不足の解消に取り組む前に知っておきたい人手不足の定義や、日本で人手不足が起きている現状とその原因について解説します。


人手不足の定義

「人手不足」とは、企業の生産活動に必要な労働力が足りない状況をさします。厚生労働省によると、この判断には「有効求人倍率」と「完全失業率」が用いられます。

有効求人倍率は求人数と求職者数の比率で、倍率が1を上回ると求職者1人に対してひとつ以上の求人がある状態です。完全失業率は、働く意欲がある者のうち、仕事に就けていない者の割合を示します。


日本における人手不足の現状

現在の日本では、人手不足が深刻な課題です。

帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)」のデータによると、正社員が人手不足だと感じている企業の割合は51.6%で、半数を超えています。さらに、非正社員が不足していると感じている企業の割合は28.3%です※。

このデータからも、人手不足は多くの企業が抱える課題であることがわかります。人手不足が慢性化すると、企業がスムーズに業務を進められないなどの不都合が生じます。


【食品業界】食品製造業・飲食料品製造業の現状と課題

食品業界では、人手不足が特に深刻です。

厚生労働省によると、食料品製造業は製造業の中でも求人需要が高く、製造業全体の約2割を占めます。一方で、製造現場では人手に依存する工程が多く、こうした求人が欠員として持続的に残る状況が見られ、人材確保が難しい状況です。

食品産業事業者の99.8%が中小企業や小規模企業で、「人材・設備・資金が少ない」「企業規模が小さく余力がない」などの理由から、「労働条件の改善」や「作業工程の機械化」といった働き方改革に取り組めていない実態があります※。

さらに、全産業平均と比べて勤務時間が長く、年間休日日数が少ないことも課題です。

食品業界の課題についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品工場(食品製造業)の課題とは?解決に効果的な取り組みや改善策を紹介



なぜ人手不足になるのか?主な原因を解説

現在の日本で人手不足が起こっている原因は、ひとつではありません。人手不足には、人口減少をはじめとした以下のような幅広い要素が関係していると考えられます。

  • 少子高齢化による生産年齢人口の減少
  • 地方と都市部の格差
  • 業種による需要のギャップ

それぞれ詳しく解説します。


少子高齢化による生産年齢人口の減少

日本の人手不足の最も大きな原因は、少子高齢化による生産年齢人口(15~64歳)の減少です。

内閣府によると、生産年齢人口は1995年をピークに減少へ転じ、総人口も2008年をピークに2011年以降一貫して減少し続けています※1。

特に中小規模の食品工場では、長年現場を支えてきたベテラン作業員の高齢化が進む一方、若手人材の採用が追いつかず、現場の負担が増大しています。総務省の推計では、2021年から29.2%の減少が見られ、2050年には生産年齢人口が5,275万人まで減少する見込みです※2。

中小企業庁の調査でも、2013年以降全ての業種で人手不足感が強まり続けており、特に建設業やサービス業といった労働集約的な業種で顕著となっています※3。


地方と都市部の格差

地方では都市部以上に深刻な人手不足が続いています。内閣府の調査によると、地方では景気拡張期に女性や高齢者の労働参加が進みましたが、その多くが対人サービス業や医療・福祉に集中しました。

食品製造工場は、原材料の調達や物流効率の観点から、地方に立地しているケースが多い業界です。しかし地方では、若年層の都市部流出と高齢化が同時に進行しており、「働きたい人はいるが、工場勤務を選ばない」状況が生まれています。

現在、地方圏では高齢化と人口流出により労働供給制約が強まるなか、医療・福祉分野が恒常的に雇用を吸収しているため、飲食店などの対人サービス業における人材の確保が困難となっています。

さらに、地方圏では都市部と異なり、民間職業紹介サイトの利用環境整備が遅れており、ハローワークへの依存度が高いことも人材確保を難しくしている要因です。


業種による需要のギャップ

食品製造業の人手不足を解説する上で欠かせないのが、他業種と比較しての「選ばれにくさ」です。

現在の労働市場は、有効求人倍率が1倍を超える「売り手市場」であり、求職者は職種や業界を選べる立場にあります。その中で、「デスクワーク中心」「在宅勤務が可能」「体力負担が少ない」といった業種に人材が集中し、食品製造業は相対的に不利な立場に置かれています。

つまり、業種による需要のギャップが大きく、人気のある仕事に人材が集まることが、人手不足を加速させる要因となっています。



人手不足が企業に与える影響

人手不足の状況を解消できなければ、企業に様々な悪影響が及びます。ここからは、人手不足が企業に与える影響について解説します。


労働環境が悪化する

人手不足の状況では、1人あたりの業務量が増加し、休憩時間を取れない、有給休暇が取得できない、休日出勤が発生するなどの事態に陥りやすくなります。企業が掲げるノルマ・目標を達成するために時間外労働が増え、日々の疲労が蓄積してしまうでしょう。

この状況が続けば、従業員は心身の不調に陥って十分なパフォーマンスを発揮できなくなり、場合によっては休職者が増える可能性もあります。結果として業務をこなすのにさらに時間がかかり、他の従業員の時間外労働も増える悪循環に陥るかもしれません。

また、業務量が多く時間に余裕のない職場では、緊張感のある空気が流れて雰囲気が悪くなりやすいです。従業員同士で思いやる余裕がなくなり、コミュニケーションが取りづらくなると、誰にも相談したり質問したりできずに、仕事の効率が低下します。職場の居心地が悪くなることで、離職を考える従業員が増える要因にもなるでしょう。

食品工場の仕事がきついとされる理由についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品工場の仕事がきついと言われる理由とは?3K問題の実態や改善策を解説


さらなる離職につながる

人手不足に陥ると、働く従業員の負荷が増加します。業務過多で働きにくい職場になると、徐々に従業員の不満が増し、結果としてモチベーションの低下にもつながるでしょう。

やがてやりがいを見失い、忙しい職場で働きたくない従業員が離職し、さらなる人手不足を招くリスクがあります。

また、少ない人数で従業員の残業時間が増えると、時間外手当などの費用が増加する点も悪影響です。

加えて、採用しても早期離職のケースが続くと、常に採用活動を行う必要があり、採用コストの増加を招きます。

有効求人倍率が高い「売り手市場」では人材の確保に苦戦するため、採用活動が長期化しやすく、採用のための費用がかかり続ける悪循環に陥ります。

飲食業界で離職率が高いとされる理由についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店(飲食業界)で離職率が高い理由とは?改善に向けたポイントや施策を紹介


従業員のスキルアップや技能継承の機会が減少する

人手不足の職場では、従業員が成長するためのスキルアップの時間がなかなか取れません。現在の業務をこなすだけで精一杯になるためです。

そのままでは、数年後に振り返った時、「できることが変わっていない」という事態を招くことにつながりかねません。従業員自身の成長が実感できないと、キャリア形成もしづらくなります。

また、時間に余裕がない職場では、先輩社員の退職時にうまくスキル継承が行われないことで、若手社員に熟練の能力が伝わらず、組織能力が低下し、これまでどおりに業務が実行できない可能性があります。その結果、業務品質の低下や顧客信頼度の低下、個人の業務負担の増加など、長期的な状況の悪化を招く可能性があります。

食品工場の課題や改善策についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品工場(食品製造業)の課題とは?解決に効果的な取り組みや改善策を紹介


需要に対応できず機会損失が発生する

働く人材が足りないと、処理できる業務量も減ってしまいます。その結果、需要に対応できなくなり、依頼を断らざるを得ないケースが出てくるかもしれません。

例えば、食品製造企業の場合、指定された数量を納入できない事態が長期間続くと、別の企業に発注先を変えられる可能性があります。こうした機会損失が増えると売上を伸ばせず、企業の成長を妨げることになるでしょう。

人手不足に伴い、既存事業への対応が厳しくなると、規模縮小につながることが懸念されます。一方、既存事業への対応だけに人材を回すと、新規事業への挑戦が難しくなります。


事業縮小・倒産のリスクが高まる

人手不足が慢性化すると、企業は事業縮小や倒産のリスクに直面します。

帝国データバンクの調査では、2025年上半期の人手不足による倒産は202件発生し、2年連続で過去最多を更新しました。特に建設業や物流業、労働集約型のサービス業で増加が顕著です。

中小企業庁の白書でも、倒産件数の要因として「人手不足」に関連するものが増加していることが示されています。

人材を確保できず事業継続が困難になるケースが増えており、食品製造業や飲食サービス業でも営業縮小を余儀なくされる企業が多いのが現状です。



食品工場(食品製造業)が人手不足を解消する方法

ここまで紹介した人手不足によるリスクを避けるためにも、人手不足は早急に解消すべき課題です。ここからは、人手不足の状況を打破するために企業が取り組むべき方法を紹介します。


人事制度の見直しを行う

「入社したい」「長く働きたい」と思われる職場を作るためには、待遇の見直しが有効です。賃金が高く、福利厚生が充実している企業であれば、多少大変なことがあっても「続けたい」と思う理由になります。

また、従業員それぞれの事情を考慮して、働きやすい環境を作ることも大切です。具体的には、産後に復帰しやすい仕組みを作る、介護手当を設ける、などの対策が挙げられます。

様々な事情を抱えた従業員が勤務しやすい仕組みを整えれば、離職を減らすことにつながるだけでなく、新しい従業員が入社する理由にもなるでしょう。

従業員の教育についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:スタッフ教育を成功させるコツ・ポイントとは?課題解決や効率化の方法を紹介


採用の間口を広げる

人手を確保する方法として、採用の間口を広げるのもひとつの手段です。例として、以下の人材の雇用の検討などが挙げられます。

  • 定年退職した方を再雇用する
  • 外国人人材を雇用する
  • シニア人材を雇用する

定年を迎えた年齢でも、まだまだ働く意欲がある方は多くいます。定年後の再雇用を促進すれば、育成の手間がかからずスキルも高いため、即戦力として活躍してくれるでしょう。

また、外国人人材の雇用に積極的に取り組む企業も多数あります。日本で働く外国人労働者の数は年々増え続けています。日本で働く意欲のある外国人労働者を採用すれば、職場全体の活性化にもつながるかもしれません。

シニア人材の採用では、人手不足の解消だけでなく、若手社員のサポートとして活躍することが期待できます。専門知識が必要な業界であれば、スキルを持ったシニア人材は即戦力として業務を行い、若手社員の育成を担うことも可能です。


業務の自動化・効率化に取り組む

人手不足を解消する手段は、人材を集めるだけではありません。機械による自動化を推進し、作業工程の無駄を削減して人員を減らす「省人化」を実現する考え方もあります。

例えば、業務を効率化できるシステムや、配膳・梱包などを担うロボットを導入すれば、従業員はコアな業務に注力できます。

また、長期的な視点では、デジタルツールを用いたDXの推進も有効です。DXとは、ITを活用して業務を効率化するなど、変革を進める取り組みです。

例として、紙とペンで行っていた集計作業などを、パソコンのソフトを使った自動処理に変更すれば、作業時間が減り生産性の向上につながります。

食品製造業の自動化についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:食品製造業のDXとは?重要性や業界の課題・企業の導入事例を紹介



食品工場の自動化・DXで人手不足を解消するなら「食品工場Week(フードテックWeek)」へ

食品工場を含む食品業界の企業の方で、人手不足を解消するために自動化やDXに関する情報を集めたいなら、「食品工場Week(フードテックWeek)」へご来場ください。食品工場Week(フードテックWeek)は、食品工場の課題を解決するための最新技術・サービス・情報が一堂に集まる展示会です。

展示会のひとつである「食品工場の自動化・DX展(フードテックジャパン)」では、食品工場の人手不足解消や省力化・生産効率化につながる自動化・DXソリューションが出展する他、関連セミナーも併催されます。人手不足解消につながる具体的な事例を知ることができるため、情報収集を行う絶好の機会です。

なお、展示会は事前登録を行えば、無料でご入場いただけます。

また、関連サービスや製品を扱う企業であれば、出展側でのご参加も可能です。自社製品の認知度向上の場として活用できるだけでなく、食品メーカーの工場関係者と直接つながる機会として活用できます。

具体的な商談の実現やリード案件獲得につながる可能性も高いため、ぜひ出展もご検討ください。

■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催

■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催



食品業界(食品製造業)は人手不足が深刻化!早めに対策をはじめよう

人手不足の解消は、多くの企業が悩む深刻な問題です。人手不足が解消できなければ、職場の雰囲気が悪化したり、従業員に無理を強いたりする原因になります。

環境などの悪化は従業員の離職にもつながるため、人手不足に悩んでいるなら、早めに対策に取り組みましょう。

人手不足を解消するには、人事制度の見直しや採用の間口を広げることが有効です。加えて、DXを進めて業務の自動化・効率化に取り組む方法もあります。

業務の自動化・DXにより人手不足解消を目指すなら、多くの食品関連企業が集まる展示会に参加するのも効果的です。

「食品工場Week(フードテックWeek)」および「食品工場の自動化・DX展(フードテックジャパン)」は、人手不足解消のヒントとなる最新技術やサービスを知る絶好の機会です。

ぜひご来場いただき、職場環境改善の推進に役立ててください。

■第5回 食品工場 Week(フードテック Week)大阪
2026年9月30日(水)~10月2日(金)開催

■第7回 食品工場 Week(フードテック Week)東京
2026年11月18日(水)~20日(金)開催



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント

出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリア トスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。 昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を超え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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