食品製造工場におけるフードロスを、AIで解決する未来へ

12月に開催が迫る「第3回フードテックジャパン」。
今回は、同時開催セミナーにご登壇いただく(株)ニチレイフーズ技術戦略部 装置開発グループ マネージャー 吾郷 友亮氏のインタビューをお届けします。食品製造における、フードロス削減と自動化の両立についてや、その革新的な技術開発における背景や経緯など興味深いお話しをたくさんお聴きしました。みなさん、ぜひご一読ください。

特別講演
まさに今、取り組むべき食品工場のフードロス対策
AI を用いた自動化と食品ロス削減の両立 ~ニチレイフーズの取組み事例~

 
【日時】2022年12月08日(木)12:00~13:00
【会場】幕張メッセ
【登壇社】(株)ニチレイフーズ技術戦略部 装置開発グループ マネージャー 吾郷 友亮氏

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■プロジェクト発足のきっかけ

-さっそくですが、ニチレイフーズさんが、AIを用いたフードロス削減の技術開発をはじめられた経緯について教えていただけますか。

吾郷  もともと検品の自動化については以前から話を進めていましたが、食品と言う複雑かつ不定形な物体を機械で検品することは技術的に難しく、今でもその多くを人手に頼っておこなっています。しかし今後、労働人口が減少していく中、検品作業を自動化していくことは、喫緊の課題になっているというのが現状です。 ディープラーニングをはじめとしたAI技術が世間でフィーチャーされはじめていた当時に、これなら人に近いような検査ができるのではないかと考え、開発をはじめました。


-吾郷さんが装置開発グループに所属されて、すぐにこのAI開発に取り組まれたのですか。


吾郷  私の所属する装置開発グループ自体は、カメラによる検査装置の研究を以前からすすめていました。2014年頃からLEDの技術的進歩に着目して、LEDを用いた検査装置の開発を進めようと開発チームが立ち上がりました。私自身は2016年に、生産工場からそのチームに異動になり、当年度末頃からAI開発に着手しました。
当初は、近畿大学さんと共同で開発を進めていました。そこから年々、AIの技術開発が世界的にも進んでいき、幅広い業界で浸透していきました。現在も、最新の技術を取り入れながら、より高性能なAIアルゴリズムを使った開発を進めているところです。開発当初から比べるとAIの精度自体は着々と向上していて、以前にあったような誤検知というのは少なくなってきています。

■AIが自動化と食品ロス対策を一度に解決する

-今回のセミナーでは、AIを用いた検出の自動化という技術開発が、フードロスの削減につながっていくというお話だと思うんですが、その2つはどう関わっていくんでしょうか。

吾郷  もともとこの2つの両立は難しいです。人手による検品であれば異常部を見つけた後の除去作業など細かいところまで対応できのですが、カメラ検査の場合は、異常や夾雑物を検知しても、周辺の製品すべてをライン外に落下させて排除するなど、そこからのアクションが大きくなってしまい、排除したもの全てを廃棄するとフードロスが増大してしまいます。その為、結局排除した製品をもう一度人で検品する必要がありました。しかし、人よりもさらにピンポイントで夾雑物を除去できる技術を開発したことによって、フードロス対策との両立ができるようになってきました。

■製造業におけるフードロスの現状と今後の課題

-今ニチレイフーズさんを含めさまざまな会社でフードロスに取り組まれていると思うんですが、食品工場におけるいわゆるフードロスの現状については、みなさんどのような課題を持って、どのような取り組みをおこなっていらっしゃるんですか。

吾郷  ニチレイフーズの場合だと、工場で発生した製品にならなかったものを肥料や飼料として再利用するなど、フードロスの取り組みというのは以前からおこなっていましたので、99%は肥料・飼料化という形で食品リサイクルすることができています。しかし今後は、SDGsの観点からも、食品リサイクルにまわす量を減らし、いかに可食部を増やすかという発想が重要になってきます。今回講演させていただきますとおり、AI技術を活用して取り組みを進めています。

-これからますます開発を進めていかれると思うんですが、今後5年、10年と長い目で考えた時に、どういった方向性に進んでいくと思われますか。

吾郷  今回ご報告させていただく事例のように、自動化は確実に進んできています。そこからさらに進めて、AIの精度がさらに上がり、人の手が使われている部分を一つ一つ省人化し、逆に人の手が入らないからこそフードロスも減っていくという方向へもっていければと考えています。

-最終的には無人化も視野に入れた開発になっていくということですか。


吾郷  そうですね。

-今世界中でもフードロスは大きな問題になっていますが、例えば御社が開発した技術を海外に向けて提供していかれる可能性というのはあるんでしょうか。

吾郷  あるとは思います。たとえば賃金の少ない国ですと、自動化はあまり進んでおらず、人で処理していることも多いと思います。人が処理をすることで、基準が曖昧になりその分フードロスが多く発生している可能性があるということなので、そこを自動化することでロスを抑えていけるのではないかと考えています。


ーなるほど。

■セミナーを通して伝えたいこと

-今回のセミナーを、どういった方々に聴いていただきたいですか。

吾郷  やはり同じ食品メーカーのみなさんに、ぜひ聴いていただきたいです。もちろん競合する面もあるとは思うんですが、各社さんと一緒に取り組むことで、業界が盛り上がっていき、ゆくゆくは日本の食産業を守っていくことにつながるのではないかと思っているので、今回のセミナーがその一助になればと考えています。

-ありがとうございます。また、展示会をご覧になってどのような感想をもたれましたか?


吾郷  「フードテックジャパン」は、食品機械がテーマではありますがロボットなどのテックの部分にフォーカスしているので、私は大変興味深く見学させていただきました。また同じような課題に向かって手を動かしているインテグレーターの方の動向を知ることができて大変刺激にもなりましたし、新しい協業パートナーも見つけられたらなと感じました。

-本日は、大変興味深いお話をありがとうございました。セミナーも楽しみにしております。


スマートレストランEXPO

【会期】
2022年12月7日(水)~9日(金)
【会場】幕張メッセ
【主催】RX Japan株式会社

特別講演
まさに今、取り組むべき食品工場のフードロス対策
AI を用いた自動化と食品ロス削減の両立 ~ニチレイフーズの取組み事例~

 
【日時】2022年12月08日(木)12:00~13:00
【会場】幕張メッセ
【登壇社】(株)ニチレイフーズ技術戦略部 装置開発グループ マネージャー 吾郷 友亮氏

講演の詳細はこちらから >>