飲食店のフードロス問題に取り組む、俺の株式会社×TABETEのプロジェクト

<左>
(株)コークッキング
代表取締役 CEO
川越 一磨 様

<右>
俺の(株)
営業本部 専務執行役員
神木 亮 様

12月7日から幕張メッセで開催される「スマートレストランEXPO 」にてご講演いただく、俺の(株)営業本部 専務執行役員 神木 亮さんと、(株)コークッキング 代表取締役 CEO 川越 一磨さんに、講演に先がけてお話をうかがいました。

講演
飲食店経営におけるフードロス対策
【日時】 2022年12月09日(金)14:00~15:00 【会場】幕張メッセ
【登壇者】 俺の(株)営業本部 専務執行役員 神木 亮 (株)コークッキング 代表取締役 CEO 川越 一磨

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俺の株式会社とTABETEの、フードロス対策を通じた出会い

事務局:早速ですが、お二人はどのようなきっかけでお付き合いが始まったのですか?

神木様:私は、俺のフレンチで8年間勤める中、新型コロナウィルスの感染拡大によって、お客様がわざわざレストランに足を運ぶことが難しくなってしまったことをきっかけに、テイクアウトやデリバリーをコンセプトにしたお店をつくろうと、3年前に銀座の「俺のGrandMarket 銀座歌舞伎座前」をオープンさせました。

飲食業の中でも、テイクアウトやデリバリー事業はロスが出やすく、むしろロスが出て当たり前だという考えすら浸透しているようですが、料理人が朝早くから想いを込めて作った料理を破棄ことにすごく抵抗を感じていたので、何かいいロス対策はないかと探していたところ、新聞でTABETEというアプリの記事を見つけました。これはぜひ新しいプロジェクトの一環として取り組みたいと思い、川越さんの会社に連絡したのが、出会いのきっかけですね。

事務局:そこからプロジェクトがはじまったわけですね。

神木様:プロジェクトというと大掛かりに聞こえますが、TABETEという素晴らしいシステムを導入することで、店舗スタッフのマインドや、お客様のフードロスに対する意識をある意味啓蒙しつつ進めているといったところですね。今も、まだまだ成長過程です。

事務局:川越さんは、神木さんから初めてご連絡いただいたときのことを覚えていらっしゃいますか。

川越様:僕が店頭に立っていたわけではないのですが、やはり「俺の」グループさんというと、飲食業界の中でも、尖鋭的なことをされているイメージが強かったので、どういう活動の仕方がよいかなど、我々も探り探りという感じでした。そうこうしているうちに、グランマーケットをオープンされて、飲食店を経営していく中でどうしても出てしまうフードロスのコントロールに、うまく活用していただけるような未来がお互い見えてきたところで、弊社のサービスを導入いただきました。

日本の飲食店におけるフードロス対策と、フードシェアリングサービスの現状

事務局:以前に比べて、フードロスに対する関心はさらに広まってきていますが、やはり「俺の」グループさんでも重要度は上がってきているのでしょうか。

神木様:フードロスはかなり重要なテーマです。我々も全店で意識を一つにして、会社としての取り組みを強化してきました。
SDG’sが言われ始めた頃から、いろいろな試行錯誤をしてきましたが、コストが上がったり、管理が難しかったりで、現場のモチベーションがなかなか長続きしなかったんですね。でも、TABETEのシステムは、買い手側が同じ意識でフードロスにとり組んでくれるので、現場スタッフのモチベーションにも繋がり、無理なく、長く続けられている気がします。

事務局:励みにもなるでしょうね。

神木様:そうですね。ユーザーさんが「今日も助けに来たよ。」という意識で一緒に取り組んでくださっているのを感じられるのが、すごくいいところだと思います。

事務局:フードロスというと、「もったいないから捨てないようにしようよ。」というのが第一義的ですが、社内をまとめていく、社内の文化をつくっていくという意味合いも強いと思います。「俺の」グループさんでも、そういったことを意識されていますか?

神木様:そうですね、店舗の損益に直結してくる問題ですし、何より料理人が心を込めて作ったものに対して、「まあ今日も残っちゃったけど、許容範囲内だから捨てちゃっていいよね」というように簡単に捨ててしまえる、そういう意識の根付き方が一番怖いなと思いますね。やはり、生産者の想いまでくみとったうえで、しっかりお客様に届けたいということは、社内全体で強く意識を持っています。

「俺の」グループが店頭値引きをやめて、TABETEに変えた理由

神木様:実はTABETE導入前、現場の支配人は導入を嫌がっていたんです。ただでさえ様々な端末やシステムがいろんなところにあるのに、さらに一つ増やすなんて管理しきれないという理由からでした。でも導入すると、初日からすぐ連絡があり、「このTABETEってめちゃめちゃいいですね。」ってなりました。確かその時も、お弁当が5個くらいあまりそうだったんですが、TABETEに掲載したら、ものの10分くらいで全部レスキューされました。

事務局:一番説得力があるのは、ものの10分ですぐ売れて、フードロスがゼロになったというその事実でしょうね。

川越様:どの店舗も、やはり成功体験というのがすごく重要ですね。我々のサービスは現在、54万6千人のユーザーに対して、約2400店舗登録されているので、圧倒的にユーザー過多という状況です。だからユーザーさんにしてみたら、自分の地域にお店が増えたら「行ってみよう!」ってなりますね。しかも我々は広告宣伝をしていないので、完全に自然流入で集まったユーザーさんたちというのも大きいですね。

事務局:確かに。私も近所のレストランが出てきたら、「行ってみよう」となりそうです。

川越様:我々の競合は店頭値引きです。店頭値引きをしている店舗は、楽だからそれで済ませてしまうのですが、それだと値引き待ちの人が現れてしまい、実はお店側に一切いいことがないんですよ。

神木様:実はグランマーケットでも、夜8時以降安くなりますという店頭値引きをしていた時期がありましたが、お客様に認知されればされるほど、8時以降に人が集まってきてしまうという現象がおきていました。

川越様:お店側としては、捨てることによる精神的・肉体的負担を減らしたいという思いから値引きをしているのに、お客様としては、閉店間際で悪くなってきているから安くするんだと勘違いしてしまう。ここのギャップを埋めて行かないことには、根本的な解決は難しいですよね。

神木様
:本当におっしゃる通りです。
また同時に店舗側も、例えば、レスキューさんがくるから残ってもいいという考え方ではなく、適正な量を用意して、それでもロスになってしまうなら、想いの繋がったユーザーさんに届けようという感覚でやらなければいけないと思います。そこを忘れてしまうと、この取り組みの根幹がくずれてしまうと思っています。

川越様:間違いなく形骸化してしまいますよね。
ビジネスモデル上仕方がないところとの線引きが難しいんですよね。ケーキ屋さんなんかでは、5~10%が目標ロス率になっていて、これを下回るとチャンスロスしていることになってしまうという‥。だからもう、100%ロスが出る構造になっているんですね。そういうモデルなだけに、できることって限られています。それが従来は店頭値引きだったのですが、弊害も多い。だからこそ、個数も決めて、価格もある程度決めて、ユーザーさんにアプリ上で販売して、店頭ではこの人がいくらで買ってるかわからないという、我々みたいなソリューションが必要になってくると思います。

売り上げは上がり、ロス率は下がる店舗を増やしていくことが大事

事務局:今、社会的にもフードロスの対策を進めようという意識になってきていると思いますが、ユーザーの意識を変えるのが先か、経営者の意識を変えるのが先か、どちらだと思いますか。

川越様:サービスサイドから見ている感覚だと、やはり事業者側が先に変わらないとユーザーは変わりようがないと思います。一個人としては、フードロスに興味がある人、ない人がいて当然だと思いますが、それが組織になると、組織の意思決定としての考え方にみんな従うようになるんですね。だから個人がいくら頑張っても事業者側が変わらないと、社会そのものは変わっていかないと思います。チャンスロスが減ったから売り上げは上がったけど、大量に作ったのでロス率は変わらない、というのでは意味がないので、売り上げは上がって、ロス率が下がるという店舗を増やすことができないと、ユーザー側にも届かないですよね。

事務局
:なるほど。

川越様:ロス率を下げるために定量的な目標を立てるのは、すごく難しいんですね。でも会社全体で1年間でマイナス10%ロスを減らしましょうという目標を立ててしまえば、売り上げを上げると同時にロス率も下げる努力もするようになりますよね。だから受発注のコントロールをしながら、余ってしまったものはなるべく減らすという感覚を養うことができると思います。

事務局:フードロスという言葉だけを理解して根底にある哲学や本当の狙いを理解されていない方々が、まだまだたくさんいらっしゃるんでしょうね。

川越様:まだまだたくさんいますね。
中食に関しては、閉店がある以上ロスをゼロにするのは難しいのですが、閉店後に売れるような仕組みを作るということは、今後考えていかなくてはいけないところです。ただ今の段階では、営業時間内にロスを最小限まで持っていき、売り上げの最大化に貢献するインフラとしての役割を、我々は担わなくてはいけないと思っています。

神木様:弊社内でいうと、販売スタッフと製造スタッフの信頼関係に重きをおいているので、TABETEで完売したときに、一番先に店長が伝えに行くのが料理長です。料理長も「じゃあこれでフードロスゼロだよね!」という非常に関心を持ってくれています。やはり、販売スタッフだけでなく、製造側もフードロスに対してしっかりと意識を持つことが大事だと思います。

スマートレストランEXPOでのセミナー内容について

事務局:ちなみに今回のセミナーでは、お二人それぞれにお話しいただいた後に、聴講者からの質疑応答も含めてディスカッションをしていただく予定ですが、現時点でディスカッションの内容は、どのようなことをイメージされていますか。

川越様:基本的にいただいた質問ベースでディスカッションができればと思っています。
当日は、「食品ロスとは?」というところにも少し触れつつ、TABETEのサービス内容や、時間が許せば具体的にこんな形で活用していただいているなどの事例紹介と、社内調整をどのように進めたかなどにも触れられればと思っています。

神木様:私は、導入前と導入後の現場の変化を、なぜ導入したのかも踏まえてお話しさせていただこうと思っています。Q&Aでは、聞いてくださっている方が少しでも興味の持ったことを気軽に質問にしてくだされば、我々も話し甲斐がありますよね。

川越様:そうですね。

事務局:ありがとうございます。いまお話をお聞きしただけでも、フードロスという言葉への理解が深まりました。スマートレストランEXPOでのセミナーも楽しみにしております。


スマートレストランEXPO

【会期】
2022年12月7日(水)~9日(金)
【会場】幕張メッセ
【主催】RX Japan株式会社

講演
飲食店経営におけるフードロス対策
【日時】 2022年12月09日(金)14:00~15:00
【登壇者】
俺の(株)営業本部 専務執行役員 神木 亮 
(株)コークッキング 代表取締役 CEO 川越 一磨

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