ゴーストレストランとは?メリット・デメリットや開業までの流れを解説

ゴーストレストランの出店が流行っていると聞いて、どのような仕組みか、通常のレストランとの違いは何か気になっている方もいるのではないでしょうか。また、ご自身で開業してみたいと検討している方もいるかもしれません。

本記事では、今話題のゴーストレストランはどのようなビジネスか、なぜ流行っているのかを解説します。

開業のメリット・デメリットやはじめ方、必要な資格もまとめているので、出店を検討中の方はぜひご覧ください。



ゴーストレストランとは?

ゴーストレストランは、実店舗を持たず、主にデリバリー(宅配サービス)で販売を行うレストランです。店内に客席がないのが特徴で、実店舗や調理設備が存在しない実態から「ゴースト」という名前がついています。

一部の店舗ではテイクアウトの販売にも対応しており、デリバリー料金がかからない分、安く料理を提供しています。


ゴーストレストランの仕組み

ゴーストレストランは実店舗がないため、デリバリーサービスを活用しています。フードデリバリーサービスなどのプラットフォームでオーダーを受注し、集客を行うのが特徴です。

フードデリバリーサービスを介して注文を受けてから調理をはじめ、完成した料理は自社もしくはデリバリー事業者の配達員が注文者に届けます。注文の受注をデリバリーサービスに依頼する分、売上の一部を支払っています。


ゴーストレストランとクラウドキッチン・シェアキッチンの違い

ゴーストレストランと混同しやすい言葉に、「クラウドキッチン」や「シェアキッチン」があります。

ゴーストレストランは「飲食店の経営形態」をさしますが、クラウドキッチンやシェアキッチンは「飲食店の施設形態」をさします。

クラウドキッチンとシェアキッチンの特徴は以下のとおりです。

それぞれ、クラウドキッチンの運営会社やシェアキッチンの保有者がキッチン設備を用意して管理・運用します。

飲食店の経営者がクラウドキッチンやシェアキッチンを利用するメリットは、キッチン設備の購入費用や管理の手間がかからないことです。

また、シェアキッチンではひとつのキッチンを複数の飲食店が共有するため、クラウドキッチンに比べると賃料などの固定費を下げられるのがメリットです。一方で、在庫スペースの確保や管理が難しいというデメリットもあります。




ゴーストレストランが普及した理由

ゴーストレストランの市場見込みは、2023年で約500億円といわれています。2019年は約10億円だったため、急速に市場が拡大していることがわかります。

ゴーストレストランが流行した理由のひとつは、新型コロナウイルス感染症によるライフスタイルの変化です。テレワークや飲食店の時短営業により在宅時間が増えたことで一気に市場が拡大しました。

新型コロナウイルス感染症の流行以降も、共働き世帯の増加やテレワークの浸透などの影響を受け、ゴーストレストランには安定した需要があります。デリバリーサービスが定着した影響で、今後も需要は続くと予想されています。



ゴーストレストランを開業するメリット

通常のレストランと比較して、ゴーストレストランを開業するメリットは多くあります。代表的なものは、以下のとおりです。

  • 少ない初期投資ではじめられる
  • 人件費をおさえられる
  • 失敗時のリスクが低い

それぞれ、具体的な理由を含めて解説します。


少ない初期投資ではじめられる

通常、レストランを立ち上げるには数百万円から1千万円以上の出資が必要です。一方、ゴーストレストランは内装費や利用スペースを抑えられるため、より少ない自己投資ではじめられます。

提供メニューや立地にもよりますが、安いと数十万円で開業できる場合もあるため、初期投資を抑えて事業をはじめたい方に向いています。


人件費をおさえられる

ゴーストレストランは人件費を抑えられる点もメリットです。

店内には飲食できるスペースがなく接客スタッフが不要のため、1〜2名の調理スタッフがいれば運用できます。人員が少ない分、シフト管理の手間が省けるので、オフィス業務も削減できます。

オーナー自ら調理を担当すれば、スタッフ採用や人の管理をする必要もありません。


失敗時のリスクが低い

ゴーストレストランは初期投資や人件費が少ない分、通常のレストラン経営と比較してリスクが低い傾向にあります。投資回収がしやすく、失敗した場合もより赤字が少なくすむ点は魅力でしょう。

さらに、想定より顧客が集まらなかった場合に、コンセプトやメニューを変更しやすい点もリスクの低減につながります。店舗の内装外装の変更は不要で、メニュー作成と仕入れ、写真撮影ができれば柔軟に変更しながら再挑戦できます。



ゴーストレストランを開業するデメリット

ゴーストレストランの開業には知っておきたいデメリットもあります。

  • 集客が難しい
  • 手数料がかかる

開業してから後悔しないために、ぜひこちらもご覧ください。


集客が難しい

ゴーストレストランは店舗がない分、集客の難易度が上がります。

口コミが広がりにくく、道端を通りかかった人から認知を広げられないため、プラットフォームへの依存度が高いのが特徴です。また、接客がない分、ユーザーの生の声を聞けないため、改善点の洗い出しが難しかったり、リピーターを作りにくかったりする傾向があります。

ゴーストレストランで集客を成功させるには、SNSの活用や、商品にチラシを入れるなどの工夫が必要です。

飲食店の集客について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:飲食店の集客方法を紹介!失敗しないポイントや事例、注意点まで徹底解説


手数料がかかる

プラットフォームを活用する場合は、プラットフォームの利用手数料が高いのもデメリットとなりえます。商品代金の約30〜40%が手数料になる場合もあるため、利益率が低くなります。

利益を確保するためには商品価格を上げなければならないため、高価格でも注文したくなる商品づくりが重要です。

プラットフォーム内で店舗比較できることにより、同一商圏の競合に比べて割高だと注文が入らなくなる懸念があるため、慎重に価格設定をする必要があります。



ゴーストレストランの開業に必要な資格

必要な資格を保有していればゴーストレストランの開業は誰でも挑戦できるため、専門学校などに通う必要はありません。

開業する前には以下の資格を取得しましょう。

  • 食品衛生責任者
  • 防火管理者
  • 飲食店営業許可

食品衛生責任者になるには、都道府県が行う講習会の受講が必要です。ただし、栄養士、調理師、食品衛生管理者などの資格を持っていれば講習会の受講は免除されます。

防火管理者の資格は、講習を受講すると取得可能です。防火管理者には「甲種」と「乙種」があり、店舗の延べ床面積によってどちらが必要か変わります。規模次第では資格が必要ない場合もあるので、契約するキッチンの条件を確認してみてください。

飲食店営業許可は、食品衛生責任者の資格を持つと申請できます。申請するには、申請書の提出の他、営業施設の図面などが必要です。



ゴーストレストランのはじめ方

ここからは、ゴーストレストランのはじめ方を解説します。開業までの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 店舗、キッチンをレンタルする
  2. 許認可の申請をする
  3. プラットフォームと契約する

店舗、キッチンをレンタルする

まずは、調理を行うキッチンを確保します。調理場所により防火管理者の資格が必要か変わるため、早めに目星をつけましょう。

物件を選ぶ時は、清潔さはもちろん、調理器具や保管場所、動線も確認してください。キッチンの拠点によって商圏が変わるため、需要の確認も必要です。

飲食店の施設基準を満たせば、自宅でもゴーストレストランをはじめられます。しかし、リフォームが必要になる可能性が高いため、あまりおすすめしません。

営業目的での利用を禁止されている賃貸もあるため、基本的にはクラウドキッチンやシェアキッチンのレンタルを検討しましょう。


許認可の申請をする

場所を確保したら、必要な認可、資格を取得し、開業への準備を進めます。営業許可を得るためには、保健所への事前相談が必須です。相談後に申請し、検査を受けると許可証が交付されます。

すでに営業許可が降りているキッチンであれば、飲食店営業許可がいらない場合もあります。クラウドキッチンは防火管理者を取らなくていいなど、使用するキッチンの状況によって変わる場合もあるため、保健所に相談しましょう。


プラットフォームと契約する

営業許可証が交付されたら、デリバリーサービスのプラットフォームと契約しましょう。

デリバリープラットフォームは登録完了までに2週間から2ヶ月程かかります。契約後から開業までには時間がかかるため、契約後すぐに材料を調達しないよう注意してください。

登録完了するまでの間に、料理の撮影やSNSの投稿など、できる準備を進めておきましょう。



ゴーストレストラン経営の注意点

ゴーストレストランを営業する場合は、店舗選びに気をつけましょう。居抜き物件の場合、そのままだと営業許可を受けられないことがあります。その他、インターネット接続が悪いと注文に気づかず、営業に支障がでるため、契約前に確認することをおすすめします。

また、ゴーストレストランを経営するならメニューにこだわるのも大切です。エリアによって利用者は変わるので、そのエリアに合った年代の人が好むメニューを研究しましょう。

注文先に届くまでのスピードもオーダーされるかどうかに影響するため、調理の時間がかからず、速くデリバリーできるメニューを作るのも重要です。



ゴーストレストランの経営を考えている方は「レストランマネジメントEXPO」へ

ゴーストレストランの場合、店舗がないからこそメニューやコンセプトに加えて集客の仕方が重要です。はじめての経営で集客できるか不安な場合は、「レストランマネジメントEXPO」に足を運んでみてはいかがでしょうか。

レストランマネジメントEXPOは、飲食店の経営や店舗管理の課題を解決する展示会です。会場は、「集客支援ゾーン」「バックオフィス支援ゾーン」「リスクマネジメントゾーン」の3つに分かれています。

集客支援ゾーンでは、WEB/SNSマーケティングやECサイト支援などに関する情報を得られるため、ゴーストレストランでも活用できる手段を見つけられるのがメリットです。

会場のブースでは、運営しているレストランの相談も可能です。集客の方法を学びつつ、出店している企業を比較できるため、ぜひご参加ください。

なお、来場だけでなく出展者側として参加するメリットもあります。課題を抱える企業とつながり、自社の製品を大いにアピールできる他、導入を前向きに考えている企業と商談でき、案件の獲得につながります。

レストランマネジメント EXPOの詳細は以下のとおりです。



特徴を理解してゴーストレストランの開業・経営を検討しよう

ゴーストレストランは、実店舗を持たず、主にデリバリー(宅配サービス)で販売を行うレストランです。通常の飲食店と比べると必要な初期投資や人件費が低く、はじめての経営でも比較的挑戦しやすいのが特徴です。

講習会に参加して資格を取り、認可を取れば、誰でもゴーストレストランの開業に挑戦できます。

ゴーストレストランの市場は拡大し、安定した需要があるため、興味がある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

ただし、ゴーストレストランは集客が難しいというデメリットもあります。プラットフォームに依存する部分が大きいため、人気店になるには工夫しなければいけません。

ゴーストレストランで実践できる集客方法を探している方は、展示会などで情報を得ることをおすすめします。



▶監修:泉 明美(いずみ あけみ)

「これからの時代の飲食店マネジメント協会」コンサルタント
飲食チェーン2社の店舗開発(加盟者開発、物件開発)にて加盟者面談から新規出店までの業務全般を担当。FC店スーパーバイザー業務(12店舗)及び、直営店での店舗運営業務に携わる。その後、M&A仲介企業にて飲食店の店舗事業譲渡、店舗造作設備譲渡のアドバイザリー業務など行い、現在、既存、新規商業施設へのテナントリーシング、店舗、企業などのPR業務等に取り組む。



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